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メモ 冷戦期のNATOにとってノルウェーが戦略的に重要だった理由は?

軍事的脅威を分析するときに必ず考慮に入れるべき事項の一つが海上交通路です。ヨーロッパ地域でロシアの脅威を考える場合、バルト海とバレンツ海から伸びる海上交通路は潜水艦の航路となる恐れがあるため、特に注意を払う必要があります。冷戦期のアメリカは、この海上交通路を通じて大西洋にソ連の脅威が及ぶことを防ぐために、ノルウェーに強い関心を持っていました。

ノルウェーの国土は高緯度に位置しているのですが、大西洋を北上してノルウェー海に到達するメキシコ湾流の影響があるため、不凍港に恵まれているという特異な性質があります。例えばハンメルフェスト(トロムス・オ・フィンマルク県)などが世界最北に位置する不凍港の一つとして知られています。ノルウェーは第二次世界大戦でドイツ軍の侵攻を受け、軍事占領を受けた歴史もあります。侵略的意図を持つ国家が、再び自国の港湾を確保しようとするリスクがあることは理解していました。ノルウェーは1949年から北大西洋条約機構(NATO)の加盟国になっています。ただし、平時にノルウェー国内で軍事基地を設置することを拒否することで、ソ連を過剰に刺激することも避けようとしてきました。

このノルウェーの外交政策はアメリカの立場から見ると望ましいものではありませんでした。特に1970年代にソ連海軍の増強が活発になってから、その脅威はますます深刻なものになっていました。John Lund(1989)の議論は当時のアメリカの考え方をよく示しています。彼はアメリカの対ソ戦略においてノルウェーの中部と南部に軍事基地を開設することが極めて重要な課題であると主張していますが、それはソ連海軍の活動をノルウェー海の内部で封じ込め、大西洋に進出することを防げなければ、アメリカの本土から西ヨーロッパに通じる海上交通路の安全を確保することが困難になると懸念していたためです。

ソ連海軍が北大西洋進出を図る場合、グリーランド―アイスランド―イギリス線を突破するか、あるいは北海を南下してイギリス海峡を通過する必要がありますが、いずれの経路を使用するとしてもノルウェーの沖合に位置するノルウェー海は必ず通過することになります。したがって、ノルウェーに基地を設定できれば、ソ連に対して大きな優位を占めることに繋がると考えられていたのです。

ソ連海軍の北海艦隊が保有する戦力の3分の2がノルウェー国境にほど近いコラ半島付近の海軍基地群に配備されていたので、ノルウェーがソ連に軍事占領された場合、大西洋の航路を維持するため、アメリカ海軍は長大な阻止線を構成する必要がありました。このような視点から眺めると、ノルウェーが西ヨーロッパの防衛する上でいかに重要な国家であるのかが、よく理解できると思います。

参考文献

Lund, John. 1989. Don't Rock the Boat: Reinforcing Norway in Crisis and War, Santa Monica: RAND.(レポートへの外部リンク)

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