★我楽多だらけの製哲書(62)★~「ただいま」とハイデガー("I'm home" and Heidegger)~
人間は自分との繋がりが強い場所(それは単に地理的な空間という意味ではなく、自分の存在意義にとっても不可欠な精神的な拠り所として、ハイデガーのいう「故郷」といえると考える)から離れると大きな喪失感を抱くものである。
Human beings are greatly connected to themselves (I think that it is not just a geographical space, but a spiritual base that is indispensable for the meaning of one's existence, and can be said to be Heidegger's "hometown"). It feels like a loss.
私の場合、自らの判断でシンガポールを離れたわけであるが、それでも何とも表現しがたい喪失感に悩まされた。
In my case, I left Singapore at my own discretion, but I still suffered from an indescribable sense of loss.
現在、ロシアによる武力侵攻で自分との繋がりが強い場所から離れることを余儀なくされているウクライナの人たちの喪失感は想像を絶するものだろう。一部の報道によれば、首都キーウへの再攻撃の動きが見られるとか、東部のマリウポリの港がロシアに掌握されたとロシア軍が発表したといった情報がある。ウクライナの人々が自分の「故郷(地理的な空間としても、精神的な拠り所としても)」に安心・安全に戻れる日が早く来てほしい。
The sense of loss of the Ukrainians, who are now forced to move away from places with strong ties to themselves due to the Russian armed invasion, is unimaginable. According to some reports, Russian troops have announced that there are moves to re-attack the capital, Kyiv, and that the port of Mariupol in the east has been seized by Russia. I hope the day will soon come when Ukrainians can return to their "hometown (both geographical space and spiritual base)" safely and securely.
(ここからは5年前の出来事に関する投稿である)
今日は4月14日の金曜日、私はグッドフライデーの休日を過ごしている。私は今シンガポールにいるのである。しかし、旅行として訪れているわけではない。
実は、4月からシンガポール中学校で社会科教員として勤めることになった。(新任教員の紹介が4月12日だったので、このことを公にするのはそれ以降でなければならないと考え、沈黙を保っていた)
2016年3月28日にシンガポールを離れ、その後、沖縄での生活は常に「空虚な気持ち」がつきまとっていた。昨今の言葉を借りるならば「シンガポール・ロス」だろう。
沖縄での教員生活はもちろん手を抜こうと思ったことはないし、一生懸命に取り組んだが、何か自分の中の軸が失われた感覚が払拭できなかった。
実存主義の哲学者ハイデガーは、自分自身が何であるかという「存在への問い」を忘れ、日々の生活に埋没している人間をダスマン(世人)と呼び、そのような存在の根拠を見失っている状態は「故郷の喪失」であると主張した。
私にとってシンガポールを離れた後、日々の教員生活を一生懸命に送っているだけの1年間はまさに「故郷の喪失」だったのかもしれない。
シンガポールに戻ってきて2週間ほど経つが、新しい学校の環境に早く慣れなければならないのは当然なのだが、同時に私はどんな教員でありたいのか、どんな教育を追求したいのかなど、大学・大学院で国際法を専攻し、国際平和を中心的テーマとして研究してきた自分が、多文化・多民族共存のシンガポールという地で、教員としてそのテーマを授業や学活(HR)や進路指導などにおいてどのように還元できるのかを考えようとしている貪欲さというか、活力というか、そんな「熱さ」を感じている。
この国で生まれたわけではないが、シンガポールは私のアイデンティティにとって欠かせない国となっていることを感じる。
これからも「シンガポールと私と国際平和と教育」という関係性で、思索に耽り、この「我楽多だらけの製哲書」を綴っていこうと思う。
まずはシンガポールに「ただいま」と伝えたい。
(以下でシンガポールに戻ってきてから撮影したいくつかの写真を紹介)
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