★我楽多だらけの製哲書(58)★~バンコクの空に張り巡らされている秩序とサン=テグジュペリ(The order in the sky of Bangkok and Saint-Exupery)~
ラオスほどではないが、バンコクの街の頭上にはたくさんの電線が張り巡らされている。電気を各地へ伝えるというのが電線の本質的な役割であり、換言すれば「質的価値」ということになる。そして、電線が地上にあると、ぶつかって事故が起こったり、強風などで切れて危なかったりする。さらに頭上にゴチャゴチャと電線があるのは邪魔なので、送電するという「質的価値」を重視した場合は、シンガポールのように地下にあった方が良いように思えてしまう。
しかし昨日の文字の質的価値と量的価値の話と同じように、電線にも「量的価値」があるのではと、最近、バンコクの街並みを撮影し、それを振り返っているときに感じている。
ラオスほど無秩序ではない電線であることが前提になるが、頭上を交差する電線は空間を整える枠組みとして機能しているように感じるのである。たくさんの電線があるため、空の様子を撮影しても空と雲だけが広がる世界を写真に収めることはできない。しかし、電線が一定の方向や奥行きを感じさせてくれる。近くの家の屋根の方向と、電線が平行に走っていることで秩序を感じる。地面の道路の直線と頭上の電線とが写真の中の世界を上下で安定させてくれているように感じる。
このように電線は絵が描かれるときの補助線のように機能して、空間を整えているのである。
「自由が放縦でないと同様、秩序は、自由の欠如ではない。」
これはフランスの作家でありパイロットであったアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの言葉である。自由というものを私たちは度々勘違いしてしまう。一切の制約がなく、何でも許される状態を自由と考えてしまっている人が少なからずいるが、それは自由とは別次元の状態で「放縦」である。放縦とは本能や欲望の赴くまま、理性の歯止めのようなものが見当たらない状態である。一方、秩序というものを窮屈なものと考えてしまう人も少なくない。しかし、どう進むべきか、一定の方向性や枠組みが存在しているからこそ、カオスな状態を回避することができるのである。それゆえ、自由が放縦に転落することなく、自由の価値を最大化してくれるものが秩序なのである。
かつてのクリミア併合も現在のウクライナ侵攻も、ロシアの判断は自由ではなく放縦と考えるのが自然であろう。国際社会は、これまでの数多くの戦争や二度にわたる大戦の反省から、国際の平和と安全を維持するための秩序を結晶化させてきたはずである。しかしその秩序を、自由を阻害する窮屈なものとして認めず、自国の利益を優先させたロシアの行動を容認することはできない。国際社会は、これまでのような戦後のパワーバランスの延長線上で秩序を考えるのではなく、現在のパワーバランスを踏まえ、どこかの国に対する忖度も譲歩もない、洗練された秩序を整え直す段階にきているといえるだろう。
In both the former annexation of Crimea and the current invasion of Ukraine, it is natural to think that Russia's judgment is not free but liberal. The international community must have crystallized the order for maintaining international peace and security from the many wars and reflections of the two great wars. However, it does not recognize the order as a cramped one that impedes freedom, and cannot tolerate Russia's actions that prioritize its own interests. The international community is not thinking about order as an extension of the postwar power balance as it used to be, but based on the current power balance, it is at the stage of reorganizing a sophisticated order with no concessions or concessions to any country. It can be said that it is coming.
国際社会が不安定になってしまわないように、秩序が大きな役割を果たすのと同じように、バンコクの街の電線は、家や木々や空といった様々な要素の認識が不安定になってしまわないように、我々が落ち着いて認識できるための方向性や枠組みを提供してくれているのである。それは電線の本質的な価値ではないが、結果的に生まれた別の価値なのである。
(以下でバンコクの電線の様子を紹介)
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