「心穏やかに生きる哲学」ブリジット・ディレイニー著
混沌の現代を生き抜くためのストア派の知恵
ストイックの語源で知られるストア派哲学を現代生活に適用する方法を探る一冊。著者自身のコロナ禍での失敗や成功の体験をユーモアを交えて語りながら、ストア派哲学の核心を分かりやすく解説する。
ストア派哲学の基本の部分である「本当に大切なものを見極めること」について、著者はストア派が行った「コントロールテスト」という手法を試みる。自分でコントロールできることとできないことを区別する手法だが、苦労しながらも実践することを通してその意味を理解する。
また、本書では人間にとって最もストレスフルな問題である「死」について、セネカやマルクス・アウレリウスなどのストア派哲学者たちの教えをわかりやすく解説する。死を恐れて遠ざけるのではなく、むしろ逆に「メメント・モリ(死を忘れるな)」の実践が大事だという教えである。著者は「今日が最後の日だとしたら」と自問することで、真に重要なことに集中できると説明する。
二千年以上前の古代の知恵が現代人のストレスフルな生活においていかに役立つかを示す実践的な一冊。
「心穏やかに生きる哲学」ブリジット・ディレイニー著 鶴見紀子訳 ディスカバー・トゥエンティワン
(この記事は私が業界誌に投稿した推薦図書文です)