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本帯花(ショートショート)
ある図書館の裏庭には、本の帯が咲く花がある。
それは様々な色や模様をしており、ひとつの種だけで様々な姿を鑑賞することができる。
僕がそこを見学に行った時は、ちょうど花が開いている時期だった。
この花の名前は本帯花(ほんたいか・もとおびばな)という。
花が開いている時の庭は、図書館や本屋、新しい本のページをめくった時のような匂いがする。
アナログの本が好きな人にとっては結構惹かれる場所なのではないかと思われる。
時々、その色に誘われて、どこからともなくビブリオモルフォという、本の姿をした蝶が現れる。
僕が訪れたときも、数羽ひらひらと舞っていて、本帯花にとまっていた。
このビブリオモルフォの面白い習性として、本帯花の花弁を持っていくというものがある。
なぜそんな習性を持っているのかは分からないけれど、その見た目がまるで、帯を巻き終えた本が空を飛んでいるみたいで、とても面白い。
一部の専門家によると、自身が気に入った花を「あれは自分の花だ」と、他の蝶に知らせるためなのではないか、という説がある。