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保健室からの手紙 読書感想文

保健室からの手紙〜養護教諭という生き方〜(著:Mako、出版:クラシノオト、2023)

島根県出雲市の発酵文化研究所さんが立ち上げた出版社クラシノオトから一冊の本が届きました。

Makoさんという元養護教諭の方が書いたエッセイです。

本の題名は、『保健室からの手紙〜養護教諭という生き方〜』。

この本は、Makoさんが2023年3月に34年の養護教諭の職を辞したところから始まります。

私は保健室という場で、困ったり悩んだり立ちすくんだりしている子どもたちと共にありたいと、いつも願っていました。体の痛みだけでなく、心の痛みにも寄り添いたいと。


この「揺るぎない思い」は、養護教諭を辞めても消えないものでした。

私は動くんだ。いつでも。いつまでも。

Makoさんはこの本(note)を書くことから再スタートを切ります。

Makoさんは過去を振り返っていきます。

養護教諭になろうという決意のきっかけになった、生きる気力を失ってしまった孤独なとある女の子との出会い。初任校でのつまづき。
養護教諭の一日の紹介。
思い出の生徒・親御さん・先生たち。
そして現在……。

どれもひとつひとつ引用したいぐらいすばらしいのですが、まずある生徒さんからMakoさんが学んだということを書いてみます。それは、

子どもを理解する難しさ。  

子ども心の繊細さと誠実さ。  

子どもを信じて待つ覚悟。

子どもと通じ合う感覚。

です。
これらが重要だとMakoさんは言います。

Makoさんは養護教諭として生徒さんたちとまさしく共に生きたのです。

そしていつも生徒の表情を見ることを欠かしません。
これは「子どもは、溢れるほどの感情を上手く表現できません」というMakoさんの経験からの持論に基づくものです。

一つ、私が印象に残った、思い出の生徒さんのエピソードをちょっと引用させていただきます。

原因不明の謎の体調不良により保健室登校していた中学二年生の女の子。

何でも真面目に考え真面目に取り組み、空気を読んでまわりに合わせ、誰にも気を配り、否定的、攻撃的なことは絶対に口にしない子です。

でもMakoさんにはその出来すぎている感じが段々痛々しく見えていきました。もしかしてそれが彼女の体調不良の原因ではと。
しかし彼女は一言、
「これが私だから」
と。
そんな彼女と共に保健室での生活の日々がはじまります。保健室の一日というのは波瀾万丈。病人、ケガ人、泣く人、怒る人、叫ぶ人。
そんな中で不思議と落ち着いて暮らしていた彼女はいつのまにかヤンチャな生徒にも注意ができるぐらい症状が治りました。確実に成長していたのです。
Makoさんは言います。

私たち大人は、目に見える変容でしか物事を判断できなくなっているのかもしれません。目に見えないものに気づける感性や、小さな変化に価値を見出す柔らかさが大事です。

そして保健室登校にとって、一番大きな環境因子は養護教諭だということも痛感しました。「子どもを守る立場」であると同時に「見られる立場」「影響を与える立場」であることを肝に銘じなければならないと、あらためて思いました。

見る・見られる、聞く・聞かれるということは、子どもの前では(というか大人も含む人の前では)実は責任を持つべき重大なことだと読んでいて思いました。

最後に、Makoさんからの痛切なるメッセージをお送りします。

大人の覚悟は、必ず子どもたちにも伝わります。  

命(人)を守る組織であること。

命を大切に思う一人一人であること。  

そういう中で誰もが生きられること。  

保健室からの、切なるメッセージです。



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著者のご紹介:

Mako@元養護教諭

noteのプロフィールより。

元養護教諭(歴34年)|「まちの保健室」〜不登校などについてゆる〜く語る会〜【2023開催日】12/19 |Amazon・出版社クラシノオトから『保健室からの手紙~養護教諭という生き方』発売 https://amzn.asia/d/0emLsQt



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