世界と繋がり合えるなら(羽田光夏) 読書感想文
詩集 世界と繋がり合えるなら(著:羽田光夏、読書日和、2020)
この『詩集 世界と繋がり合えるなら』は全盲の詩人でnoterさんの羽田光夏さんの詩集である。
全体的に優しい詩篇で構成されており、あたたかな包み込まれる印象を受けた。どれも日常の一篇を書かれており、親しみやすい詩集であった。
今回は詩集から七篇詩を選んで感想を書いてみたいと思う。
欠片
なんともミステリアスな詩だと思った。なかなか「僕」という人は「君」に対して天邪鬼のように思える。
しかし、
どうやら「僕」という人は人ではないのかもしれないと思った。
「僕」が震えるほどの「君が描いた物」とはなんなのか。
そして「僕」と「君」の不思議な関係性である。
一瞬私の中では「花火」が思い浮かんだが、どうもそうでもなさそうで、しかしどことなくこの詩に書かれていることはわかる気がしてくるから不思議で面白かった。
パズル
ここに書かれている二人は不器用だけどとってもいいなあと思う。思わずキュンとしてしまった。純粋(うぶ)な二人の愛というパズル。
染色
美しい性の営み(生きる上での営みという意味でもあり)の詩。
「一欠片」「満月」「DNA」という言葉たちから子を生みたいという愛の形、性の営みの詩であると思った。
それがいやらしくなく書かれていてとても素敵である。
魚
この感覚がすごいと思った。
「私」を海に喩えて「あなた」を魚にして泳がせるという魂と体の躍動がこの一節だけで見事に表現できていると思った。
ビート
「私は高校生の頃、自称Rock少女でした」と『あとがき』にあった。この詩からもRockを感じた。まるでRCサクセションの歌詞だなと思った。
いっそ
以心伝心というものを書いているように思った。そしてこれは羽田光夏さんの自叙伝なのかなと思った。
長く真っ直ぐな一本道
という箇所からはサン=テグジュペリの『星の王子さま』の中でキツネの言う台詞「ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない」を思い出した。
『長く真っ直ぐな一本道』の羽田光夏さんご本人による朗読。
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