映画メモ 10月最後の週+11月1週目

せっかく大作映画が次々に封切られたのにあまり映画を観る時間と気力が無く、配信を観た。

①Love me(Amazon Prime)←ロマンチック幽霊譚だが盛り込み過ぎて行方知れずに💛💛
②Kalinga(Amazon Prime)←俺らの村にも『KANTARA』を!💛
③ドラマ『地獄が呼んでいる』シーズン2(Netflix)←社会風刺に溢れた傑作寓話の更なる飛躍!💛💛💛💛

①Love me(インド・テルグ語、2024年):中二病ヒーローに熱視線。

あらすじ:
怖いもの知らずの青年アルジュンは、親友のプラタープと一緒に怪奇現象の嘘を暴く人気YouTuberである。幽霊が取り憑いているといういわくつきの廃墟マンションのことを知ったアルジュンは、一人廃墟を訪れて『女幽霊』との交流を試みる。一方親友のプラタープとその彼女プリヤ―は、そこで亡くなり女幽霊となって取り憑いたとされる女性、ディヴィヤヴァティの行方を調べるが…。

盛り込み過ぎて惜しいロマンス・ファンタジー
雰囲気は実によく、マラヤ―ラムの幽霊譚のような感じもする。インドの女幽霊は歌を歌って男を誘うようだというのは本作で気がついた。

幽霊と交流するハンサムでミステリアスな青年アルジュンは中二病の可能性もある。その種の若い青年特有の女性に対して紳士的な振る舞いを見せ、懐かしい90年代のライトノベルものすらほうふつとさせるいいキャラではあった。

親友と二人暮らしをしつつ、いつも外をほっつき歩いているアルジュンだが、時折親友プラタープにご飯を作ってあげる(どうもペンネパスタしか作れない??)し、プラタープにはお金の取り分のほとんどを渡してしまう無欲さ。関係がもっと発酵してくれたら別のうれしさのある映画になったと思う。

アルジュンの女の親友、ピンキーも謎めいている。色々な知識を持ち、あらゆるテクノロジーに優れており、魔女的な存在だ。彼女とアルジュンの関係もいい。

ただ、後半に明らかになって来る謎解きはちょっと無理があった。

色々と面白い要素があり、ストーリーも工夫されていたが、ちょっと詰めこみ過ぎて全てを活かしきれなかったね。

強引さで言えば20年位前の韓国映画を思わせる。インドも韓国も、女幽霊の恨み言という共通項を持っており、家中心の価値観を持つ社会なので、意外と通る道は近いのかもしれない。

でも、中二病なアルジュンの不思議キャラと、プラタープとの関係は嫌いじゃないので、是非この映画のような優しい頭脳派中二ヒーロー路線も続いてほしい。

②Kalinga(インド・テルグ語、2024年):地元信仰アドベンチャー映画という新しいジャンル

あらすじ:腕っぷしの強い青年リンガは、村の横暴な権力者に掛け合い、入った人が行方不明になり殺されるという森の所有権を手にする。森に棲む怪異に怯える村民をしり目に何かを探すリンガは遂に…。

『KANTARA』が開いたフォークロア映画
はっきりと、フォークロアファンタジー映画の傑作『KANTARA』の影響下にある作品。正直ストーリーはこっちの方が王道なのではあるまいか。しかしながら映画としてのインパクトには欠けていた。

いかに『KANTARA』の撮り方が上手かったかを印象付ける映画になってしまった。『KANTARA』がヒンドゥーというテーマにしっかり焦点を当てつつも根源的な論争にならぬよう観客を煙に巻いたことも思い出される。賢いのだ。

『Kalinga』は田舎が似合う主人公もなかなかよかったし、ほとんどを実際の森林で撮影したと思われるシーンもよかったと思うのだが、ちょっと魔法に欠けた作品だったかもしれない。

③ドラマ『地獄が呼んでいる』シーズン2(韓国・2024年):世界の秩序ははったりによって維持される

あらすじ:地獄の使者と呼ばれる謎の存在により死を宣告された者には、予告された日時きっかりに怪物が現れ、惨殺されるという事件により秩序がひっくり返ってしまった世界。カルト集団矢じりと、宗教団体の新真理会が抗争を繰り広げる中、政府高官が新真理会会長に接近、死を宣告され処刑されたが蘇った女性パク・チョンジャを利用し、再び社会に秩序を取り戻さんと画策する。
一方失踪したことになっていた新真理会の始祖チョン・ジンスもまた処刑からよみがえった。地獄の使者の幻影に苦しむジンスは巧みに人を騙し、パク・チョンジャに接近を試みる。
また、地下活動の闘士となったミン弁護士は、処刑を免れた少女を匿いながら、パク・チョンジャを救出しようとしていた。

世界秩序が大きく変わって行く中で生まれた傑作寓話
『我は神なり』で嘘つきの悪人が吐く真実と、宗教団体の嘘を正面衝突させたヨン・サンホ監督は、このシリーズにおいて更に深い洞察を示している。

矢じり集団は暴力的に振る舞うが、もはや何を信じたらよいのか分からなくなってしまった我々の本音を抉っているように思う。真理が欲しいのだ。

また、冒頭で登場する矢じりの「お日様組先生」を誰が演じていたのかが途中で分かるのだが度肝を抜かれた。彼女、すごい女優になっていた…。

対する新真理会の欺瞞性。本当は世界の真理などどうでもよく、ただただ現世利益に汲々となっていることを自覚している。そこへ付け入って来る政府高官の描く「秩序」ははったりだ。嘘に嘘を重ねる…社会や国家のような仕組みは、はったりや虚勢や嘘で作り上げるしかないときがあるということをよく物語っていると思う。

そのはったりの重みに耐えらえない「真面目さ」が、特に若い人々を矢じり集団へと駆り立てるのだろう。

一方、地獄めぐりを経てトリックスターとして帰って来るジンスのキャラクターも内面が読めなくて面白い。ジンスが一つだけ知りたかったこと、そして彼の辿る末路も衝撃的だ。

世界はどうなってしまうのだろうか。大義よりも半径数メートルの幸せを大事に生きることが人の本分と自分を騙したって結局「大きなもの」に巻き込まれてしまうことは避けようがない。

しかし本作はオススメだ。

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