映画メモ 11月中旬
相変わらず劇場にはいけてないんだけど、割と豊作だった。
①Bagheera Netflixで鑑賞:薄暗スーパーヒーロー映画の快作。💛💛💛💛
②Longlegs Amazon Primeで鑑賞:ホラーヒロイン、マイカ・モンローの新境地💛💛💛💛
③Bhramam Amazon Primeで鑑賞:人相の悪いPrithviraj Sukumaranの圧勝したリメイク作。💛💛💛💛
①Bagheera(2024年、インド・カンナダ語):『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』に匹敵。薄暗いスーパーヒーローが腐敗したインド社会を救う!
あらすじ:
エリート警察官のVedanth(Srii Murali。肉厚ボディと長いまつ毛の薄暗顔)は、警察署長として赴任、街のギャングを一掃しようとするが、警察上層部に止められる。業を煮やしたVedanthは顔を隠し、街のギャングを次々に始末していく。Bagheeraと呼ばれ街の人々の信頼を集め始めた彼は、臓器密売ギャングの大ボスRana、政府のエージェントGuruの両方に狙われることになる。Vedanth=Bagheeraの運命やいかに。
ありがとう、Srii Murali!
スーパーヒーロー映画ってどことなく薄暗いのが好き。
その上、本作は予告編の時点で性癖を刺激してくる感じがあった。一部顔の見える仮面をかぶったムチムチの男が主演ですよっつったら、みなさんねえ!
観たら想像を超える満足度で、これ映画館で観なかったことを後悔しましたね。
カンナダ映画らしく、ひたすらバイオレンスの連続でもあるが、人々の底なしの怒りや恨みを吸い上げたヒーローの凛々しいこと。
人々のために尽くせと諭した母の想いを胸に警察官になったのに、いざ社会に出てみれば、不正と腐敗にまみれた醜い体制を見せられて荒れるVedanth。
しかし、恨みと苦しみを抱いて死んだ少女を助けられなかったことを悔いて一念発起、だっさい黒装束に身を包み、夜の街を駆け抜けてギャングどもに復讐の裁きを下す…かっこいいじゃないですかもう…
私の人生ベスト映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』を意識しているのか、してないのか、似ているカットもあって興奮。
また、途中でハッカーやきちがい電撃少年、アル中のじじいなどを仲間に引き入れるところも美味しかった。
しかしながら、Vedanthを演じたSrii Muraliの魅力が私が本作支持する理由の8割くらいを占めている。彼は何か薄暗い空気を持っている。もうね、闇のヒーローやるために役者になったんじゃないのか。
警官でありながら、人からお金を受け取り処刑する超法規の存在であり、やはり一つの「社会悪」ではある。そこを自覚している感じのするところがまたよい。
自分は公の存在なのだから、例え好きな女がいても愛してはならない。予告編では彼女をびんたするシーンがあり、マッチョ男が女をぶつってさあ…と思ったが、お話の中では、わざとぶった彼の心が痛んでいるのが分かった。
そのどうしようもない寂しさと孤独が挟まれているのがおいしい!!!
久々のヒット映画だった。また観てもよい。
②Longlegs(2024年、アメリカ):悪魔崇拝を怖れるアメリカ人
あらすじ:
1990年代アメリカで、奇怪な惨殺事件が立て続けに起こる。FBI捜査官のリー(マイカ・モンローの新しいはまり役!)は、類似した惨殺事件の裏に、Longlegs(ニコラス・ケイジ!)という人物の存在を察知する。やがて逮捕されたLonglegsから衝撃的な事実を告げられるリーは…。
悪魔に淫した者の末路はきびしい!アメリカ本来の道への回帰
本作、すごく気に入ったんだけど、一番いいと思ったのが、70年代ホラーと同様に、悪魔に淫した者は地獄で焼かれるのだという恐怖の感覚が映画の最後の方でどっと押し寄せて来るところ。
進歩主義的なホラーでは、悪魔を利用する人間の方が悪い、とか、魔女や悪魔に淫したとされる者の汚名をそそぐような映画も出て来たし、「こんな家、滅びちゃえ!」とばかりに露悪趣味でサタニズムを讃えたアリアスター『へレディタリー』などもあるが、結局のところそれらの作品は、アメリカのホラーにおいては枝葉の方に属するのだな、と思わせる。
本作では、「平和で愛すべき核家族が内部から崩壊し破滅する」ということが、アメリカの価値観においては最も恐ろしいことなのだと言うことがわかる。実際にそんな事件も起きているが、それこそ、悪魔のせいであってほしいのだ。
また、マイカ・モンローが『イット・フォローズ』のトラウマを悪化させたようなヒロインを演じており、益々好きになった。
この人は見た目がぬぼーっとしているが、己の中の恐怖と常に戦っているかのような不安定さが顔に滲んでくるのがいい。
ニコラス・ケイジも本当に誰かわかんないレベルで変身してみせた。その出で立ちと言動により、「異様な見た目で異様な言動をする人はやっぱり悪魔崇拝者か何かで社会から排除されるべき」という、観客が持っている差別的目線を肯定してくれる。その容赦のなさがよい。
監督のオズグッド・パーキンスの父は、『サイコ』のアンソニー・パーキンスですって…もうどこをとっても怖くしかならないし、嫌な展開しか考えられないホラー。
これ今年のNo1ホラーかもしれない。一度劇場公開時に映画館で観ておいてよかった。
③Bhramam(2021年、インド・マラヤーラム語):嘘と詐欺の連鎖
あらすじ:
盲目のピアニスト、レイ(Prithviraj Sukumaran)は、あるバーでの演奏を聴いた元映画スター、Uday Kumarから「結婚記念日のサプライズとしてうちにピアノ演奏しに来てほしい」と頼まれる。そこへ行くと、妻シミ(Mamta Mohandasいいわー)が待っていた。家の中に招き入れられたレイは、床に横たわって死んでいるUdayを見つけて動揺!トイレに行くと見知らぬ男(Unni Mukundan!好演)が待ち受けている。実はレイが盲目というのはうそなのであった。
Prithviraj Sukumaranの芸達者ぶり
ヒンディー語映画『盲目のメロディ〜インド式殺人狂騒曲』のマラヤーラム語リメイク作。元の映画もショッキングで面白かったが、リメイクも非常によかった。特にPrithviraj Sukumaranの芸達者ぶり!
『盲目のメロディ』の主演アユシュマン・クラナも劇中で歌を歌うが、彼のはあくまでクリーンだ。
対するPrithviraj Sukumaranの歌には退廃と場末の空気が漂っており、それが本作の魅力に繋がっている。
この歌、前半で恋仲になっていた彼女が後年偶然彼を見つけ、その様子を見て懐かしいけどドン引きしている様子がたまらない。
ぶっとい腕に、ちょっと弛んでいるが鍛えられたお腹が色っぽい。また、ハンサムだが意地悪そうな顔立ちの彼はこの詐欺男の役にぴったり!なんかひどい目に遭ってもしょうがないよ、お前〜って思わせてしまう。
もう一人凄いなと思ったのが、シミの浮気相手の警察官を演じたUnni Mukundan。彼って主役級の人のはずなんだけど、図体ばっかり立派な情けない男の役がドンピシャだった。妻に不倫がばれたときの情けない様子とか。
ブラックコメディとして本当に面白く、リメイクの成功例ではないかと思う。
劇場では『Wicked』や『Pushpa 2』が公開されて、気にはなるものの、気力がなくて何となく映画館から遠のいている。
ちょっと落ち着いて、日本のアニメでも観ようかなと思っているところ。