東京芸人逃避行 ネオネッシーファンクラブと、川副Tシャツデザイン解説
2024年1月12日に世田谷ネッシーファンクラブというトークライブを行ったのだが、
その際勝手に物販でTシャツを作った。
約4万2千円ほどかけたそれは客の目に触れた瞬間に川副にぶん投げられ、
最終的に一枚1000円という破格で人の手に渡った。
その時にはなぜこのTシャツを作ったのか、どういう意図でこのデザインにしたとかは全くと言って良いほど触れず、
後日川副さんと遊んだ際に「あのTシャツは云々」と言うと
「タケイ君、それは絶対伝えた方が良いよ!どうしてあの時言わなかったの!それなら3000円取れたよ!何やってんだよ!」
と言われた。
誰のせいで1000円で投げ売りしたと思っているのか。
と言うわけでここに記す。
買った人は実物を手元に楽しんでほしい。
持っておらず、いずれ欲しいと言う人も想いを馳せ読んでほしい。
ここからは完全に趣味の話である。
まずフロントのデザインについて。
フロントには大きく川副さんの写真がプリントされている。
これは2023年の6月2日に中目黒のワルツというカセットテープ屋に行った際に撮った写真である。
中目黒は強風であった。
川副さんは全身真っ黒の服に身を包み、
僕は最近手に入れたハイスコアガールのTシャツを着てうつつを抜かしていた。
少し早めに着いた僕らはコンビニで缶チューハイを買い、それを飲み飲みワルツに向かう。
残った缶チューハイで店には入れず、飲み終わるまで暫し歩道の角で飲もうでは無いかと缶を啜った。
「タケイ君!もうこんな公衆電話なんて見ないよね!中にいる俺を撮ってくれよ!」
と言う川副さんを撮った。
そのまま僕らはワルツで思い思いのカセットやレコードを買って店を出た。
「近くに公園がある」とトイレがてら広い公園に向かった。
トイレを終え出ると川副さんは風の音を録音していた。
サンプリングでもするのだろうか。
地面に落ちた紫の葉はとても美しかった。
「スピッツの新譜が素晴らしいんだ!聴いておくれよ!」
と言い聴かせてもらったそれはとても良かった。
腹を空かせた僕はサイゼリヤに行こうと提案。
しかしここから記憶がない。
目を開けるとそこはカラオケ。
目の前にはなぜか伊藤さんがいた。
伊藤さん?なんで?
ここで記憶は途絶え、いつの間にか僕はもう家のベッドで寝ていた。
東京は台風が接近しており、風で大きく揺れる草木や花々は大変に多く葉を散らした。
地面に落ちたそれはとても美しく我々はそこで記念撮影をした。
そのうちの一枚がとても美しくそれをプリントしたのだ。
フォトT自体は別に珍しくもなんともないよくあるお土産、
スーベニアTシャツで芸人以外もバンドやアパレル、様々なアーティストたちが使われている普遍的なデザインである。
写真をただプリントするだけで手間もかからず、そういったものは写真自体に力があるからシンプルで良い。
僕がフォトTを欲しがるのは余計なことをしていないその人の作品だからであるが、
コピーライト、いわゆるいつ誰が何の為に作ったのかという記載がないものがよくある。
絶対に記載しないといけないというものではない。
ビンテージのTシャツでもあるものとないものはあるし、
それがあるかないかが真贋方法ですとも言えない。
しかし僕はこのコピーライトというものはとても全体的なデザインの引き締めになると思っている。
だから特に僕のような素人が作る場合、これがあると無いとではファッションとして作ったのか、それとも思い出としてクラスT感覚で作ったのかかなり別れると思っている。
その為フォトTを作る際はマストで入れることを決めた。
ちなみに自分のコンビのTシャツもフォトTで、
そちらもコピーライトを入れているのはそういった理由からである。
そしてこの写真は元々左側にバス停とクレーンが写っていた。
懇意にしてくれるデザイナーに写真を渡しコピーライトの挿入をお願いした際「横のバス停とビルなんかは消しますか?」と返信が来た。
僕はそれがあると無いとでどの程度の違いがあるか分からず
「面倒ですが一度あるのと無いのとで下さい」
とお願いした。
上がった写真を見ると消した物の方が格段良かった。
そこにあるクレーンは赤く、それがあると目がそちらにも散ってしまうが無くなった途端下から上空に向かって爆発するような花の赤が真っ黒な服装の川副さんと地面の茶色、そして背景の灰色と緑が完璧に調和した。
さすがプロだと思った。上からの言い方になってしまうがこの人に頼んでよかったと思った。
次に背面のデザインについて。
このTシャツを作る際に決めていたのは絶対に「ZOE」の文字を入れることであった。
僕の中にずっと引っかかっていたことがある。
それはまだランジャタイの伊藤さんが主催するライブ「こうちゃんライブ」を行っていた5年ほど前、僕が川副さんと話すようになって間も無い頃のことだ。
そのライブは毎回高円寺の集会所を使い行っていたのだが、その日ライブ前に立ち寄ったリサイクルショップで「ZOE」とプリントされたTシャツが売っていた(もちろん僕がデザインしたものとは全く違うデザインである)。
僕はそれをまだ仲良くなって間もない川副さんに買って行くということはせず、
ライブ終わりか始まる前か、
川副さんにそんな服を見付けたから買ってプレゼントしようか悩みやめた旨を話すと川副さんは
「え〜欲しかったなぁ」
と残念がった。
おそらく川副さんは覚えていないことだと思う。
なんて事のないちょっとした思い出である。
僕はそれがずっと引っかかっていて、小さくずっと買っておけば良かったと後悔していた。
今回「ZOE」をプリントで入れたのはその後悔を供養するためでもある。
いつか「ZOE」のみをフロントに入れたTシャツを作っても良いとは思っていたがそんなの誰でも作れるしな、と思っていたからこれで良かった。供養も出来た。
今回のこのTシャツを作る際とても気にしたのは「普段着やすい」という事である。
フォトTは上にも書いたが一つ間違えれば「クラスT」である。
「こういうことあったよね、思い出だよね」でただ持ってて欲しくないという僕のエゴであるが、あくまで服として扱ってほしい、着て欲しいと言う思いが強い。
ではどうしたら良いか、と考えた結果バックプリントを入れる事だった。
そのバックプリントも単色ではなくカラーが良い。
そして入れるのであればユニセックスで着こなせれるようなデザインを考えた時に思い付いたのはレトロな喫茶店に使われてるネオン管であった。
昨今の昭和リバイバルで見ることが多くなったそれは色んなグッズが展開されている。
どこか店に入ればキーホルダーなど見かけたことはあるのではなかろうか。
僕の考え方としてバックプリントはあくまで「オマケ」である。
プリントは基本自分から見えるフロントに位置しててほしい。
でもバックプリントあると嬉しいよね、と言う感覚である。
勿論バックプリントがメインのTシャツは持っている。しかしやはり自分から見えると言うのが第一条件である。僕の今の気分は、である。
だから背面に大きくプリントを入れることはしなかった。
しかし小さく入れるのもなんだか嫌だった。
と言うのもやはりデザイン的にこのくらいの大きさが可愛いと思ったからだ。
位置する部分は肩甲骨の上あたり。
たったそれだけの注文でTシャツのプリント屋さんは良い位置に配置してプリントしてくれた。ありがとうございます。
このデザインを発注する際にお願いしたのは「昔のパルコの文字」。
何度かやりとりをしこれが上がってきた時はとてもテンションが上がった。
めちゃくちゃ可愛らしい。
細かく「もう少しネオン感が欲しい」など「色を増やしてほしい」などわがままを言った。
嫌な顔ひとつせず忙しい中合間を縫ってデザインを上げてくれた。本当にありがとうございます。
そして一応今回のライブ「世田谷ネッシーファンクラブ」なのでロゴは「SNC」や世田谷から取って「STGY」にしようかとも考えた。
しかし「ZOE」にしたのは、文字から想像できないものにしたかった。
これを知ってる人はZOEが川副さんを指しているのは分かると思うが、
知らない人はこのZOEは何かの略語なのではないかと思うだろう。
しかし実際はただの人物名。
コピーライトから読み取ってもそれがなんなのかは分からない。
この正体不明感を演出し、且つポップに仕上げたかった。
結果上手く行ったと思う。とても満足している。
最後にボディについて。
ボディはギルダンというメーカーのものを使っている。
しっかりとした生地で色んなブランド、バンド、アートなどの物販で使われているボディである。
同じような価格帯で言うとユナイテッドアスレやプリントスターと言うのもあるが、
やはりその辺が使っているしっかりと名の通ったブランドが使っている信頼性の高いボディを使いたかった。
何よりコットン100%なのも良い。
僕の一番好きなTシャツのメーカーはアンヴィルというものなのだが、それは数年前に無くなり(正確にはまだある)そこを受け継いだのがこのギルダンである。
長すぎない丈にしっかりとある身幅が今っぽくて良い。
ガンガン着倒しても毛玉にならないというのも気に入ってる点の一つである。
サイズは今回メンズのMとXLのみを作った。
男は勿論、女性が着ることを考えオーバーサイズで着れるXLと、あまりダボダボに着たくない人用のMサイズ。
ボディを白にしたのはこのプリント法はインクジェットと言って「インクを刷る」ではなく「貼る」と言った具合のものである。
その為とても精密に細かい色味も再現出来るプリントである。
これを黒のボディにしてしまうと発色を良くするため一度下地として白をプリントし、
その上からカラー物をプリントする。
そうすると着倒して洗濯を繰り返すとパリパリと剥げてくる。
しかし白のボディだとそのままプリントすることになるのでプリントがどんどん薄くなっていってボディに馴染んでくる。
そうすると自分なりの味になって新しい00年代の新しいビンテージ(ややこしいが)になっていく。
そこも楽しんで欲しいと思い白のボディにした。
こうしてああだこうだと書いたけど結局は素人がただ愛を持って作っただけのこだわりのあるTシャツってだけである。
しかしそう想いを持って作った物だということを知ってそれでも雑に着て自分なりの味を出して欲しい。
ここまで書いた文は全てエゴなのだ。
そしてここまで読んでくれた人には一つの情報として。
今Tシャツの追加注文をしている。
サイズも増えて少ない枚数ではあるがM ,L,XL各五枚ずつ発注している。
もう千円では元取れないから一枚2万にしようか悩んでいるがそれは流石にしない。
値段は後々決める。おそらく3000円くらいになると思う。
って言うか物販は全部俺に頼むべき。
芸人だけでなく色んな物販ダサいの多過ぎ。
ファングッズやお土産としてでなくかっこいいものにすべき。
ファンじゃない層も取り込むデザインにするべき。
だから俺に頼むべき。
なんて。
そんな仕事が舞い込んできたら嬉しい。
なんだかんだ言ったが、そうやって出来たのがこの「川副ちゅきちゅきTシャツ」である。
夢の一つに自分の書く文章でお金を稼げたら、 自分の書く文章がお金になったらというのがあります。