広報初心者がnoteプロデューサーの徳力さんからnote運用のコツを教わった話。
7月23日にnote四ツ谷オフィスで行われた「法人note勉強会」に参加してきました。noteプロデューサーの徳力さん(tokuriki)から、noteに関する基本的な考え方や、企業として運用していくコツをたっぷりと教えていただきましたので、こちらの記事ではその内容をシェアさせていただきます。
※徳力さんからご了承をいただき、記事内では当日投影されたスライドを引用しております。
企業が運用するnoteは誰に向けて発信されるべきなのか
企業noteの担当者はまず「誰に」向けて情報発信するべきなのでしょうか。私自身はメインで採用業務を担当しており、有効応募者数の増加を目指して広報も担当することなったという経緯があります。(自社のnoteは7月より運用開始)
お恥ずかしながらnoteの運用方針については「誰もが共通で興味を持ってくれるであろう会社の基本的な情報を発信して、やがては採用候補者向けに特化した内容にしていこう」という程度の認識でした。
そんな状態で参加した今回の勉強会。まず最初に徳力さんから教わったことは「企業の情報発信はコアファンに向ける」「新規顧客(採用に置き換えると自社に全く興味のない採用候補者)に情報は届かない」の2点です。
意識すべきなのは顧客の視点に立つこと。自分のSNSで企業アカウントの投稿を見るときに「全く知らない企業」のアカウントは一瞬目に入ることはあっても投稿内容を詳しく読むことはほとんどないと思います。
※新規顧客に対してはOwned(自社)メディアではなく、Paid(広告枠)メディアを使ってアプローチをします。
そこでふと疑問に思うのは「自分で書いてきた記事はコアファンに向いていたのか?」ということです。以降は「どうしてコアファンへのアプローチが必要なのか」「どのようにnoteを用いて情報発信をしていくか」を勉強会で学んだテーマに沿ってお伝えしていきます。
コアファン形成とアプローチ
① 売上の80%を支えるファンの重要性
勉強会では「パレートの法則」が紹介されました。
業界やビジネスモデルによって「パレートの法則」の適用されるかどうかは異なってきますが、ファンやコアファンの存在が売上にとって、いかに重要であるかが理解できると思います。
② 主流プラットフォームの役割
それではコアファンを形成していくためにどのような情報発信をしていくべきなのでしょうか。noteの役割を現在の主流プラットフォームである「X(Twitter)」「Instagram」と一緒に確認しましょう。
気軽に情報発信できるからこそ、曖昧になりがちな本来のプラットフォームの役割(得意分野)について意識することが大切だなと感じました。
noteはノイズ(広告やランキング)がなく、長い文章が読まれやすい環境であり、じっくりと企業のストーリーや想いを伝えていくことができるので、コアファンの形成と相性が良いという特徴があります。
いちnoteユーザーとしても、note特有の没入感や世界観は他のプラットフォームとは一線を画しており、読むことや書くことの充実感に繋がっていると感じます。文章を書くのが好きな方は、ぜひ発信者側になっていただきたいなと思います。
③ どのようにしてコアファンを形成していくのか(法人活用のトレンド)
ここまでの内容で「コアファンの大切さ」や「noteとコアファン形成の相性の良さ」を理解いただけたかと思います。法人のnote活用のトレンドは大きく「採用広報」「BtoCブランディング」「BtoBブランディング」の3つとなります。
いずれの活用方法においても共通する重要なポイントとして徳力さんがおっしゃっていたことは「お客さんとのコミュニケーションとして使う」ということです。
※オウンド(Owned)メディア共通の考え方でもあります。
「企業の情報発信はコアファンに向ける」「新規顧客に情報は届かない」の2点が情報発信をしていくときに意識するポイントであるとお伝えしましたが、活用トレンドごとのあり方が「採用広報=採用候補者」「BtoCブランディング=店頭のお客さま」「BtoBブランディング=営業先の担当者」となっているように、まず「イメージできる誰か」を発信のターゲットにしましょう。
徳力さん流 企業の情報発信の実践ステップ
ここからは徳力さんに紹介いただいた「企業の情報発信の実践ステップ」についてお伝えしていきたいと思います。まずは「トリプルメディア」について見ていきましょう。
① トリプルメディアについて
トリプルメディアはOwnedメディア・Paidメディア・Earnedメディアの総称となります。
Ownedメディア
企業HPや公式ブログなどインターネットにまつわるものをイメージされる方が多いですが、本来の意味では商品パッケージやお店の看板、商品メニューなど顧客の目に触れるもの全てを指しています。インターネットの登場により、無料で利用できるサービスが増えましたが、それだけにライバルの多い媒体でもあります。
Paidメディア
皆さんがイメージする広告を指します。宣伝広告費がかかるものの、インターネット登場以前は唯一無二のメディアでした。先述しましたが、Ownedメディアがコアファンに向けであるのに対して、Paidメディアは新規顧客向けの媒体となります。
Earnedメディア
インターネット登場以降の媒体となります。クチコミやPR露出においてユーザー全員をメディア化しました。企業側がEarnedメディアをコントロールすることはできませんが、商品の大ヒットなど爆発力の起点となる存在でもあります。
また、Earnedメディアそのものとは話題がズレますが、「顧客はみんなSNSをやっており、企業側も従業員全員が情報発信をしていかなければ取り残されてしまう」という危機感を持つことも大切です。
② note活用実践ステップ
ここからは徳力さんに教えていただいた「note活用実践ステップ」について紹介していきたいと思います。noteを活用していくうえで大切なのは「いきなりメディアからはじめない」という言葉が特に印象的でした。
企業担当者であっても、最初のステップは「個人で練習」となっています。
ステップ⓪ 個人で練習
noteをはじめるにあたって、企業アカウントで情報発信をするのではなく、まずは個人アカウントで「講演メモ・読書メモ・ニュースメモ」といった題材を取り扱ってみることを徳力さんはオススメされています。
本を読んでいて付箋を貼った箇所やニュース記事で気になったポイントなど、座談として家族や友人に話すような内容をまとめて記事として公開してみる。反響は小さいかもしれませんが、「どうせ使わないメモが誰かの役に立つことがある」ということに気が付けることが大切だそうです。
いきなりホームランを狙おうとするとしんどいですが、バットを振るだけならはじめやすいですね。個人的には、最初は球場の雰囲気を感じるだけでも良いと思います。(私自身も個人用のアカウントを半年間運用してから自社のnoteアカウントの運用をはじめるという流れを踏んでおります。)
ステップ① メール+α
次のステップは「メール+α」です。これはどういうことかというと、「取引先に対して会社を代表してメールを送るように記事を書いてみる」という意味です。
取り扱うテーマもそのようなメールに準じますので「会社(自己)紹介・商品(サービス)にかける想い・部下やチームに紹介したい仕事のノウハウ」が主な内容になります。
▼ 自己紹介
▼ 部下やチームに紹介したい仕事のノウハウ
ステップ② オープン社内報
社員が読んで意味のある記事は、社外の方にとっても読む意味のある記事であることが多いと同時に、ノウハウをためている期間であれば、「あくまで社内報なので」と社内・読者からの期待値をいい意味で下げることができる効果もあります。
徳力さん曰く「コアファンを作る中心にいるのは社員」という意識のもと、まずは社員に向けて記事を書くことが大切とのことです。
そんなオープン社内報で取り扱うのは「社内の文化や取り組み紹介・社員インタビュー 」といったテーマです。また企業によっては社員が個人アカウントを持っており、企業として外に出せると判断した記事を公開する「社員によるnoteの発信を会社のnoteに」といった取り組みをしています。
▼ 社員インタビュー
当初は顔出しをしたくない社員が多かったイシダテックさん。そこでインタビューの対象として白羽の矢が立ったのは新入社員。「家族に自慢できる」を目標に作られた記事の素晴らしさに感動し、顔出しでインタビューを受ける社員が増えていったという逸話があるそうです。「カルチャーをずらした」取り組みの事例です。
▼ 社員によるnoteの発信を会社のnoteに
マネーフォワードさんのnoteを見てみると、公式アカウントだけでなく個人のアカウントから発信された記事が非常に多いです。
ステップ③ オンライン接客
こちらのステップでは広告では伝えきれないことについて、「ひとりの顧客と接客、会話している感覚」で記事を書いていきます。
取り扱うのは「商品やサービスの開発ストーリー ・顧客インタビュー 」といったテーマです。あくまでバズることは狙わずに、「メールなどでこんな事例があるのですが…」と紹介するイメージが大切とのことです。
また、マガジンにまとめる形で「顧客によるnoteの発信を会社のnoteに 」して運用していくことも推奨されています。
▼ 顧客インタビュー
▼ 顧客によるnoteの発信を会社のnoteに
こちらはKIRINさんの紹興酒をテーマにしたマガジンですが、KIRINさん自身の記事はほとんどなく、紹興酒ファンが投稿した記事をまとめる形で運用しています。
ステップ④ 企業のメディア
最終形である企業のメディアとしての運用ができるようになるまでにはとても時間がかかるとのこと。商業メディア同様に全ての手段を組み合わせる形で、
・メルマガや公式SNSアカウントでの紹介
・検索経由のアクセス獲得を意識する
(notePROの機能が必要)
・必要な場合には広告も実施
といったアクションが必要になるそうです。
現在、自社では「ステップ② オープン社内報」の状態で運用をしていますが、まずはこのステップで一定のクオリティを維持しながら、一緒に情報発信をしてくれる仲間を増やしていくことが大切だと感じています。
また、質疑応答の時間には「複数人で記事を作る際のトンマナ(トーン&マナーの略称で、デザインやスタイル、文言などに一貫性をもたせるルールのこと)」について質問がありました。「企業にはいろんな人がいて然るべき」という理由から、徳力さんの回答は「トンマナやブランドの振れ幅については気にし過ぎないで情報発信をしていった方が良い」というものでした。
公式サイト的な情報発信の仕方にこだわると、記事を書ける人が一気に限定されてしまう大変さがあります。(運用方針に則っていれば良いですが…)社員それぞれの視点を大事にしたいですし、自分自身としても今後のキャリアにおいて「note運用に関わっていた」と語りたい人と、ぜひ一緒にnoteを運用していきたいなと個人的には考えています。
note運用において重視すべきKPI
note運用におけるKPIは次ステップで前ステップの項目を引き継ぐ形をとっています。まずは記事のストック数を増やしていくことが目標となります。月間PV数が平均ではなく累計となっているのは、何らかの形で小規模でもバズってしまうと数値が一気に伸びてしまうから。担当者のメンタルのためにも積み上げられるものの方が良いとのことでした。(徳力さん曰く「折れ線はブロガーの病」)
また裏KPIとして「いかに自身の仕事を楽にできたか」という視点があるそうです。ステップ①内の「説明や面接の効率化時間」に該当するのですが、所謂「よくある質問」を記事にして、どれだけ説明の工数が省けたかを評価するという手法です。採用だけでなく、事業側でも取り組めるテーマですね。
おわりに
徳力さんによると「日本の企業はまだまだ出している情報が少なく、商品を買う際に顧客は企業名だけでなく社長名や創業の経緯を調べることが多い」とのこと。
コアファンの形成して認知の拡大に繋げるといった大きな目標はもちろんですが、まずは情報を求めている方にしっかりと情報提供をできるようにするという意味でもnote運用をしていく必要性を感じました。
法人note勉強会に参加させていただいて1週間近く経ちましたが、今でも「どうしてあの勉強会無料だったの…?」と思い返すほど学びの多い勉強会でした。
「何となくnote運用をしている状態を変えたい」「企業note仲間を見つけたい」「noteのファンなのでオフィスに行ってみたい」きっかけは何でも良いと思うので、ぜひご興味がある方は次回の勉強会に参加してみてください!
徳力さん、勉強会に参加された皆さま、ありがとうございました!