まだまだ巣篭もり図書室(2):「断片的なものの社会学」
ナンバーワンよりオンリーワン、みたいな考え方(?)ってありますよね。また、あなたは、自分の人生の主人公なんだから…という言い方も意外と聴く話です。この手のはなし、基本的には、誰かに対してよかれと思って発言されているとは思うのですが、ちょっとした違和感を感じることがあります。
生きていく上で、目にするもの聞くものすべてが、自分を通してしか理解できないし、自分を主として考えるのは無理もないと思うんです。ただ、「オンリーワン」でなくてもいいだろうし、「主人公」でもなくてもいいんじゃないかと思うんです。そんなにハイライトがあたることにこだわらなくてもいいんじゃないかと。
最近よく「シンパシー」も大事だが、「エンパシー」が大事だと聞くことがあります。細かなニュアンスは専門の方にお任せするにして、僕の理解だと、「全く理念や考え方が合わない人の考えでも、その考えていることを想像すること」みたいなことだと。
以前、ライターで保育士のブレイディみかこさんの息子さんが、エンパシーとはなにかと言われて答えたのが「他人の靴を履いてみること」というのを読んだことがあります。また、劇作家の平田オリザさんが演劇を学ぶことはエンパシーを鍛えることになるって言っていたのも覚えています。でも、なかなか感情移入できない人の考えををどうしたら想像できるようになるのだろう?
社会学者の岸 政彦さんがフィールドワークを通して出会った人たちの話を交えて書かれたこの本を読むと、普通であることに目を向けることの尊さ、みたいなことを感じます。さまざまな背景を持つ人たちと直接あって話を聞く。その一時的な接点の中からうまれた、様々な人生の断片の話。人は色々な人と出会って、一瞬だけ重なることがあるけどそれで終わる。そういう無数の重なりがこの社会なんだなと思うと、他者の考えを想像するための入り口なんて、それこそどこにでもあるはずなんだって思える、いい本です。
(ソーシャル一年生いき)
断片的なものの社会学
岸 政彦(朝日出版社)
https://www.asahipress.com/bookdetail_digital/9784255008516/
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