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サステナブルだからリメイクするんじゃなくて「それが素敵だから」と思ってもらえるように。

最近ではサステナブルやエシカル、SDGsの観点から、お洋服のリメイクやお直しのことが少しずつ注目され始めています。

環境省には「サステナブルファッション」のページができていて、そこでも「リペア」という書き方をされていますが、洋服のお直しのことが取り上げられています。

ウェディングドレスのリメイクという仕事

わたしはウェディングドレスのリメイクを多く手がけているドレスの仕立て屋です。最近、ヴィンテージドレスや、お母さまのウェディングドレスのリメイクのご依頼をいただくことが多くなってきました。

⭐︎リメイクの仕事について、#未来のためにできること コンテストのために1000字でまとめたものがこちら。

花嫁さまがリメイクドレスを選んだ理由

では、ウェディングドレスのリメイクを依頼された花嫁さまたちは、「環境に配慮しているから」「エシカルだから」「SDGsだから」ウエディングドレスをリメイクすることをお選びになったのでしょうか。

わたしはそれはすこし違うのではないかと考えています。そうではなくて、(もちろんそれもちょっとあるかもしれないけれど)ご家族の思い出を大切につないでいきたいから、そしてそのことが素敵だから、選んでくださったのではないかと思っているのです。

そうなった場合にわたしにできること、しなければいけないことは何なのか。そのことを、週末に行われた結婚式のドレスを振り返りながら、語ってみたいと思います。

お母さまのウェディングドレスのリメイク

ドレスをつくらせてもらった花嫁さまの結婚式が週末に行われました。こちらも、お母さまのウェディングドレスからのリメイクです。

でもえっと、以前この記事で書いたのとは別の花嫁さまのリメイクです。ややこしいですね。リメイクたくさんご依頼いただいているんです。またオーダーをいただけるようになって、ありがたいことです。一時期(コロナの時)は、ほんとうにどうなることかと…うっうっ。


さて、最近「リメイク」「ヴィンテージドレスのお直し」のご依頼が増えてきているということを書きましたが、わたしがそのなかでも特に大切にしているのが、「お母さまのウェディングドレスのリメイク」です。

しかも今回はなんと、洋裁のお仕事をしておられたおばあさまが作られたドレスなんです。船舶の乗組員さんの制服のお仕立てや、お直しをしておられたんですって。階級によって制服のラインの本数が違うのだとか。なんだか素敵。(すごく素敵なんだけど、ちょっとプレッシャーも…)

30年ほど前のドレスでしょうか。オーガンジーのふわふわのお袖がかわいい。リボンとバラの飾りもとてもかわいらしいのですが、花嫁さまはもう少しシンプルなスタイルがお好みのようでした。

before
before

そこでまずは、リボンとバラを外してみることにしました。

リボンとバラを外した状態

ウエストはV字の切り替えです。この当時、流行していたのでしょうね。この切り替え、縦のラインを強調してほっそり見えるという効果があるのですが、小柄な方が着るとウエスト位置が下がってしまったように見えたり、胴が長く見えてしまうということがあります。

花嫁さまは小柄で華奢な方なので、このまま着てみていただくと、ドレスが下がってぶかぶかに見えてしまいました。ウエスト位置、ウエストライン、さらにはバストトップ位置も修正した方がよさそうです。

ただ、ボリュームのあるお袖。こちらは最近のファッションやドレスでもリバイバルして人気の出ているデザインなので、そこはうまく残したいところ。

しかしいくらリバイバルしているといっても、現在のドレスのデザインとはどこかちがいますね。どこがちがうかおわかりになりますか?

before バックスタイル

それは背中ですね。

背中をあけてあげると、すっきりと軽やかな現代のデザインになります。ウエスト位置も変えています。リメイク後はこんな感じです。

after 

スッキリと、軽やかな印象になりました。

スカートの裾はオーバースカートとアンダースカートを糸ループを編んで留め、ふわっと広がるように。

前は、おばあさまが「ここはうまくできた」と気に入ってらっしゃるというネックライン(衿ぐり)には手をつけず、そのまま残しています。

before
after

ネックライン(衿ぐり)は変えていませんが、ウエスト位置とバストトップ位置、ウエストのラインが変わっているのがおわかりいただけるでしょうか。

写真ではあまりわからないかもしれませんが、じつはおばあさまお気に入りのネックラインに関係する前身頃と前身返し以外は、ほとんどまっ平らな「布」の状態までほどいているんです。(地道な作業だ)

こんな感じに。

ほとんど平らな布、というところまでほどく

ここから花嫁さまのサイズで裁断し、またなにごともなかったようにもとに戻しているのです。ふんわりした袖も、スカートも一度ぜんぶ外してもう一度付け直しています。サイズを変えるところ以外は、基本的に元のつくりかたと同じ方法で、できるだけ同じ針穴に針を落として縫います。書いているとなんて地味な作業なんだ! (でもそれが楽しいんだけど♡)

袖もスカートも一度ぜんぶ外して付け直しています

地道な作業のかいあって、とても喜んでいただけました。

実際の結婚式のようすはInstagramで紹介しています。よろしければ。

そして、花嫁さまからこんなに素敵なメッセージが届いたのでご紹介します。

「おばあちゃんのドレス、みんなに可愛い可愛いって褒めてもらいました。おばあちゃんも、忘れられない思い出になりましたって言ってくれました。タケチさんのおかげでこのドレスを着ることができて、本当に幸せでした。ありがとうございます」

はああ、ほんとうにうれしいです。花嫁さまが可愛いって褒めてもらえて(わたしの仕事はそのためにある)おばあちゃんに思い出になるって言ってもらえて、こんなにうれしいことはありません。

そうです。

これでしょう! リメイクをする理由は。

これなんです。

  • 花嫁さまが可愛い、美しいと褒められる

  • ご本人やご家族に喜んでもらえる

  • ご家族の思い出(物語)になる

以上!


ってかんじです。そしてそれが結果的に、服を大切に長く着ること、ものを大切にすること、ひいては「環境に配慮したもの」につながる。それがいちばんなんだと思います。

エシカルだから環境に配慮しているから、ではなく、服やドレスを長く大切に使うほうが素敵だから、かわいいから、美しいからそうする。

そして、その時にわたしがしないといけないことは、特に若いひとに「リメイクが素敵」だと思ってもらえるように取り組んでいくこと。

写真や文章を含め、人から「服を長く大切にすることは素敵」と思ってもらえることが、わたしにできること、やるべきことだと思うのです。

そして、いくらいいことを言っても、結果的に出来上がったものが美しくないと意味がないので、そこは覚悟して取り組みたいと思っています。

つまり、美しいものをつくることこそが、わたしの「 #SDGsへの向き合い方 」なのです。




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だれにたのまれたわけでもないのに、日本各地の布をめぐる研究の旅をしています。 いただいたサポートは、旅先のごはんやおやつ代にしてエッセイに書きます!