【仕立て屋の繕う日々】メンテナンスを好きになってみる
定期的にミシンのメンテナンスをする。
カバーを外してホコリを取り除き、数カ所にミシン油をさす。
メンテナンスの間隔は決まっていなくて、なんとなくそろそろしたほうがいいかな、というタイミングでしている。ひとつのドレスをつくり終えたら、必ず気持ちを切り替えるつもりでお掃除をし、油をさす。これがけっこう好きな作業なのだ。
おつかれさま、今回もがんばってくれてありがとう。次もまたいっしょにがんばろうね。
そんな気持ちでお手入れをしている。
ミシンもさっぱりしたような、そんな風に見えるんだけど、気のせいかな。
メンテナンスといえば、先日のロックミシンの不調の件。
町のミシン屋さんでワイヤーを買って、さあ、修理だ。と思ったときに、ミシン屋さんの言葉をふと思い出した。「案外、切り替えのレバーを間違えてるってこともあるからそれもやってみて」
やってみた。間違えていなかった。糸は通らない。やっぱりワイヤーでやらないといけないかな、とミシンの内部を見ているうちに、問題の箇所に一本の糸がぴよっと引っかかっていることに気がつく。ん? と思ってカバーを外し、ピンセットで糸を取り除き、ついでに機械のなかのホコリを徹底的に掃除してみた。
すると。
スッと糸が通ったのだ。思わず、「おおおお〜!」と歓声をあげてしまった。やっぱり基本が大切なんだ。中を点検し、ホコリをお掃除する。この基本のメンテナンスが重要なんだよな。
メンテナンスには「修理・点検」という意味のほかに、「維持する」という意味もある。これは機械だけじゃなくて、じぶんの身体にも使える言葉だ。
それ以来、そのことをきっかけに、いろいろな「メンテナンス」を少し意識してみるようになった。
身体のメンテナンス、家の維持管理、家族のこと、健康の維持、保険の見直しから、大学院の履修の確認まで。この年齢になると、いろいろある。なかにはついついおっくうになって、ほったからかしてしまっているものもある。面倒だけど、この際まとめて見直してみよう。
そんなことを、ここ最近はずっとやっていた。気にかけてあげるだけでも違うような気がして。
ちょっと、すっきりした。そう、面倒と思えば面倒だけど、ミシンのお掃除のように「わたしこの作業けっこう好きかも」と思ってしまえばいいのだ。思い込み大事。
だからじぶんに言い聞かせてみる。
わたし、メンテナンス、ちょっと好きかも。