『ケーキの切れない非行少年たち コミックス1巻』を読んで
はじめに
「ケーキの切れない非行少年たち」という言葉を、聞いたことがあるでしょうか。
メディアによく取りあげられていたのか、有名な本であるため、聞いたことがあるな、と思われた方も多いと思います。
某OFFの古本屋に行けば、必ずと言っていいほどよく見かけるのですが、実際に読んでみたことはありませんでした。
今回は、本来の新書版ではなく、コミックスを紹介するのは、kindleで無料配信されていたためでもありますが、コミックスで読んだ方が、手軽に内容に触れることができるので、お試しに読むのにちょうどいいんですね。
「ケーキの切れない非行少年たちの内容を知りたいな、呼んだことないな」と思った方は、10分あればなんとなくの内容はつかめるので、是非読んでみてください。
本書はこちら
ちなみに、コミックスは1~6巻まであります!
(新書の場合ですと、1~2巻があります。)
1.知能に難があり、苦労する少年少女を描く
まず、この本のストーリーの主人公は、少年院に務める精神科医である六麦という男性医師です。彼は、非行を行い入院してきた少年たちの精神的にフォローする役目を果たします。
精神科医の業務の一環として、入院した子たちに知能テストを行うシーンがあります。
そのなかで、子どもたちになげかける問題の1つに、かの有名な「ケーキを3等分に切ってください」という問題があります。
この問題の答えは、「丸いホールケーキの中心点から3等分になるように3本の直線を引く」てす。こうすると、ベンツマークのように線を引けます。
この問題を解こうとする、入院してくる少年のほとんどが、この問題を解くことができないんです。
しかし、このような問題を解くことができない子は、学校に通う子の中にも、多くいます。
実際に答えを知る前に解くと、「あれ、どうやって切るんだっけ?」と悩む人も多いでしょう。
本書ではこれについて、「問題なのはこういった認知機能の力に問題のある少年たちが凶悪犯罪を行っている場合があるということ」と、語っています。
知的なハンディキャップをもった人の方が、社会に適応することが難しい。そんな社会構造の問題を、本書を読むことで考えさせられます。
2.著者が目指したこと
本書の最後に、コラムとして本書の目的が述べられています。
本書の目的
世間にこういった少年たちの存在を知ってもらい、犯罪に至った人たちに対して、憎しみ以外の観点でも見てほしいこと。
小中校生で、障害に気づいていない子供たちを、早期に見つけてほしいこと。そして、非行に走らせないために、助力してほしいこと。
これを読んで、少年院で働く教官や医師のイメージを得てもらい、少年院という矯正施設で働いてみたい、と思う人が少しでも増えてほしいこと。
どんな方が読むかによって、本書の目的の感じ方は異なると思うが、通読していくと、3つの目的が込められた本であることに納得いくだろう。
本書を読むメリット
メリットはずばり、そんな存在がいると知ることができる点にあると思います。
実際に読んでみて感じたのは、犯罪に手を染めてしまった人は、気づかぬ間に犯罪に片足を突っ込んでしまっているケースや、不良や搾取しようとする人々の標的になるケースがあると感じました。
また「本当に素直でいい子」であるはずなのに、周囲でおきる事柄の善悪にの判断がつかない、判断基準をもたずに自分にできることを最大限やろうとして失敗してしまう。そんな失敗が犯罪と扱われてしまう。そんな悲しい現実があることを感じます。
かわいそうな話ですが、自分には何もできない歯がゆさを感じたり、あるいは「こんな風に生まれてこなくて良かったな」と自分に安堵する方もいらっしゃるかと思います。
このような少年たちを救えるのは、社会だけだと思います。「社会的弱者をやさしく包み込む」そういった制度を確保すれば、本書の著者やイラストレーターの努力も、報われるのではないでしょうか。
・引用はこちら