📗「子の前に落ちている石を拾う親」は子どもをダメにする！

🚑親ならば、子どもを危険から守る

　わが子の前に石が落ちていたら「危ない！」と石を拾って、子どもを危険から守る。当たり前のことだと思うのではないだろうか。

　確かに、その石が尖っていたり、大きな石だったら退けなくてはならない。本当に大怪我をしてしまっては、元も子もないからだ。

💢いずれは、子どもは自分で危険を察知しなければならない

　しかし、落ちている石は危険だと身に染みる経験をしなければ、その子は石が危険であることを学習する機会を奪われたまま、大人になっていくのである。大げさに思うかもしれないが、塾講師を長年していると、本来自分で困難を解決しなければならない局面でも、解決する術を知らないので、「親が解決するのをじっと待っている」ような子どもにときどき出会うのだ。

🧡ある親子の中学受験

　小6受験生のある親子についてお話しする。受験勉強も天王山と呼ばれる夏休みを前にして、Ｎ君のお母さんから電話があった。電話の内容は、このようなものだった。

　「5年生から頑張って受験クラスで勉強してきたが、本人も宿題が多いと言っているし、成績もあまり伸びていない。このままでは合格できないかもしれないので、子どもの心が傷つくのを避けたい。そのくらいなら、受験を止めさせて公立中学で頑張らせたい。」

　　まず、この電話は受験をする本人の許可を得ていないことも、本来問題なのだが・・・。

📛中学受験と言う石はそれほど危険か？

　お母さんが受験という怪我をするかもしれない石を退けようとしているのだ。これを読んで、「小学生なのだから、トラウマになるような心の傷がつくくらいなら、中学受験はやめるのは悪くない選択だ。」と、考える人がいるかもしれない。

　確かに、塾講師がドクターストップをかけなければならないようなケースはある。そのような場合は、私たちの方からご相談を持ち掛ける。

　この小学生の場合、

（１）それ程危機的な状況ではなかった
（２）宿題が多いというのもたぶん愚痴のたぐいである
（３）本人は受験をやめるとは一言も言っていない
（４）受験をやめさせた方がいいのではないかという判断を親がしている

　以上の理由から、ここで受験を諦めさせるのはマイナスだと判断した。

　それに、（小さな声で言うが、）中学受験という石は、実はたいして大きな石ではないのだ。異論があるかもしれないが、経験的にはそう思える。

　少なくとも、現場にいない大人が思っている程、深い傷はつかない。子どもは、受験に落ちることでは「トラウマ」にはならない。

　この相談の回答は「途中まで頑張って、ここで受験を辞める決定をしたら、子どもは親に見限られたと思うので、受験に失敗するよりも大きな傷をつけることになります。是非、受験勉強を続けさせてください。」だ。
　本当に、私はそう思っているので、そのように伝えた。
　しかし、さすがに立場的に、「小さな石」だからとは言えなかった。💦

😂成長には失敗という経験も必要

　本来、トライして、成功や失敗を経験し、自分の心を自分でコントロールする術を見つけていくのが、成長だと思うのだ。この受験生の場合、実は合格したが、仮に失敗していたとしても、本人は大きなけがをしなかったと思っている。

　けがをしないばかりか、合否に関わらず、受験勉強を頑張る経験ができたことが、何よりの経験なのだ。

🙊親には、手を差し伸べない勇気も必要

　大怪我をするかしないかの判断は、親御さんがに任されているが、小さな石まで取らない勇気を持ってほしい。

　成長にとって最も大切な「経験」を奪い続ければ、親の手が届かなくなった場所で、初めての経験をすることになる。その初めての経験は大人になるほど傷が深く大きくなる傾向にある。

　当たり前だが、子はいずれは親の元を去っていく。その時のために、親には覚悟が必要なのだ。つまり、「小さな怪我をするかもしれない石を拾わない覚悟」だ。

　私も簡単そうに言っていますが、親にはこれがなかなかできないことは、よくわかっているつもりだ。しかし、しなければならない。

　親御さんの中には、「その石は危険であることを言って聞かせています。」とおっしゃる方も多いのだが、経験もしていない危険を理解できるような子どもに、私はあまりであったことがない。分かったように振舞える子どもは多いのだが・・・。

🦉以上

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