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一を聞いてすべてを悟る #禅の言葉

世の中には、特異な人はいるものだ。あるときに見た景色を、一瞬で記憶して、そのままに絵にしてしまう人もいる。一を聞いて、すべてを悟り切る人もいるのである。

一聞千悟(いちもんせんご)、一解千従(いちげせんじゅう)  一つを聞きすべてを悟る。一つを見れば一辺で埒(らち)が明く。別の言い方として、「上士(じょうし)は一決(いっけつ)して一切了ず」(優れた人は、一度決着すればすべてを理解する)というのがある。禅の究極のところも、そこにあるのだろう。

それに対して普通の人は、多聞なれどもほとんどのことを信じきれない。世の中には、特異な人がいるのだと知るべきだ。

一に関係する言葉として、「倶胝(ぐてい)指頭(しとう)禅」(倶胝和尚は、何を聞かれてもただ一指を立てた)というのがある。全てが、この「一」に集約されているではないか、ということを示している。「一」によって施説(せせつ、施しとか答えること)をしたが、一生涯に「一」を使いきれなかったという。このことを、「所得甚(はな)はだ簡に施設いよいよ寛(ひろ)し」(倶胝が悟り切って得たものは、はなはだ簡単そうだが、施すところは豊かで広いものだ)と言う。

大千刹海(せっかい)毛端(もうたん)に飲む  三千大世界が毛端のような小さなところ(「一」)に収まる。逆に言えば、指一本で大物を釣り上げることができるというものだ。

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