腹直筋(Rectus Abdominis)
今回は男のあこがれ、シックスパックで有名な腹直筋についてまとめました!
体幹屈曲筋としてのイメージが強い腹直筋ですが、実は短縮している人も多く、姿勢やスポーツ障害へのかかわりも少なくありません。
具体的な関わりがイメージしにくい方は、ぜひご覧ください!
腹直筋の起始停止
(Visible bodyから引用)
起始:恥骨、恥骨結合
停止:第5~7肋軟骨、剣状突起
支配神経:肋間神経T7~T12
作用:体幹の前屈
(基礎運動学第6版)
起始:恥骨結合と恥骨結節との間
停止:第5~7肋軟骨、剣状突起前面
支配神経:肋間神経T7~T12 、(腸骨下腹神経L1)
作用:胸郭前部の引き下げ、脊柱屈曲
(分担解剖学1総説・骨学・靱帯学・筋学)
起始:恥骨稜と隣接した結合部
停止:第5~7肋軟骨、剣状突起前面
支配神経:肋間神経T7~T12
作用:体幹屈曲、肋骨下制
(オーチスのキネシオロジー第2版)
シックスパックで有名な腹直筋ですが、腹筋が割れると言われる部分は腱画という腱組織によって筋腹が分けられていることによってできています。
腱画は横に3本あり、1つはへその高さ、1つは剣状突起の末端、もう1つはその間にあります。
そして真ん中に白線があり、実は全部で8つにわかれています。
(シックスパックじゃない笑)
胸郭と恥骨をつなぐ長い筋肉なので、短縮や筋力低下によって様々な影響を及ぼします。
また胸郭に付着することから呼吸機能に、恥骨に付着することから股関節機能にも大きな影響を与えています。
筋機能
いわゆる腹筋運動のような体幹の屈曲が腹直筋の主な作用です。
これは多くの研究でも示唆されており、筋の走行から考えても間違いないでしょう。
腱画によって筋腹が区分されていることについては様々な推測がなされています。
腱画がなければ1つの筋肉として収縮したときに大きな力を出せるようになる一方で、短縮によって膨らむため内臓を圧迫してしまいます。
そのため腱画で筋肉を区切ることで内臓を守っているのではないか、と考えられています。
さらに食後に胃が大きくなるように、内臓の内容物に合わせて体幹の屈曲や伸展を行いやすくする効果も考えられています。
剣状突起や下位の肋軟骨にも付着を持つので、下部胸郭を引き下げる作用もあります。
いわゆる肋骨が浮き上がってしまっている人などは、腹直筋を含めた腹筋群の筋力低下が疑われます。
逆に腹直筋の短縮は下部胸郭のふくらみを阻害するので、横隔膜が機能しなくなり、呼吸を浅くします。
遠位では恥骨に付着するので、骨盤のアライメントに関係します。
股関節前面の痛みであるグローインペインや膝前面痛(AKP) なども腹直筋の短縮が要因であることが少なくありません。
少し話はそれますが、妊娠中の女性の腹直筋は腹部のふくらみに耐え切れずに離開すると考えられています。
そのため、産後に腹部の収縮が入りにくくなることで産後腰痛とも関係してきます。
一般的には自然と離開した腹直筋も元に戻っていきます。
しかし、たまに戻らずに離開したままの腹直筋の方がいます。
そのような方は専門家の治療が必要となることもありますので、病院等で見てもらいましょう。
腹直筋は呼吸機能から膝の痛みまで、全身に影響を与えていることを覚えておきましょう!
筋膜連結
腹直筋は筋膜連結ではスーパーフェイシャル・フロント・ライン(SFL)に含まれる。
SFLは、
前脛骨筋⇒大腿四頭筋⇒腹直筋⇒胸骨筋⇒胸鎖乳突筋
とつながります。
腹直筋が硬くなることで膝痛が起こることもこの観点から説明できそうですね。
つまり、腹直筋の過緊張から大腿四頭筋の緊張が上がり膝蓋腱やその付着部周辺のストレスが増加する、ということです。
胸鎖乳突筋にもつながっているので頚部の痛みや肩こりにも関わってきます。
肩こりについては筋膜の観点からでも、姿勢の観点からでも整理できます。
筋膜では、腹直筋の短縮で胸鎖乳突筋の緊張が上がり、頚部屈曲頭部伸展のいわゆるヘッドフォワード姿勢となり、肩こりとなります。
姿勢の観点では、同じく腹直筋の短縮によって胸郭が引き下げられ、胸椎後弯、ヘッドフォワード姿勢となります。
経絡
胃の経絡はSFLと関連があると言われており、主に身体の前面を通ります。
胃の経絡なので、胃の不調があると硬くなりやすいです。
例えば、深夜に食事をしたり油っこいものばかり食べているといわゆる胃もたれのような症状となり、胃経の問題が起こりやすくなります。
経絡を知らなくても、胃は左の横隔膜の下にあるので、胃で炎症が起こるとその表層にある腹直筋にも何かしらの影響がありそうなのは想像できると思います。
腹直筋の硬さがとれなかったり、胃もたれを感じるようなときは、胃経のラインに沿って軽くマッサージしてみてください。
きっと違いを感じやすいはずです。
腹直筋の周辺組織
(Visible bodyから引用)
腹直筋の周辺には、腹筋群があり、その深層に腹腔内臓器がつまっています。
腹直筋が硬くてその深層の内臓に影響を与えることもあれば、内臓の疲労から腹直筋が硬くなることもあります。
このあたりは問診や施術の結果などから統合的に解釈していく必要があります。
腹直筋をゆるめたいときは、できるだけ多くの観点からアプローチできる方が良いです。
例えば、直接的なリリースや筋膜リリース、経絡、内臓へのアプローチ、食生活指導などはできた方が色々な原因に対して対応できます。
いくら腹直筋をゆるめても戻ってしまうときは内臓疲労や食生活などが影響している場合もあるので、施術だけでなく生活指導も大切になる筋肉の1つですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
腹直筋は有名な筋肉ですが、実際に治療場面で施術する人は意外と少ないのではないでしょうか。
筋肉の特徴やつながりを意識すると、アプローチすべきかどうか、そしてどのようにアプローチするかも見えてくると思います。
ぜひ臨床で役立ててくださいね!
それではまた!
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