#15 練習
準備運動を終えランニング
その後は自分一人で出来る基礎体力作り
もう誰かの目なんていらない
見られてなくても手や気を抜かない
軽めのお昼を取り少し休憩していると夢子さんがやって来た
「おはよー!」
「おはようございます!」
ペコリ
「ちょっと亀ちゃん遅れるみたいだから私ちょっと事務仕事の方やってるからさ」
「あ、じゃあ私先にアップしてますね!」
「いやいや休んどいて」
「え?でもー」
夢子さんがジーッと私の目を見る
「焦らない!」
「え?あ、はぁ」
「ちょっとこん詰めすぎ!休みの日も自主練してんだろ?」
「ハ、ハイ」
「がんばるのはいいこと!でも休む時は休む!そのうち体も心もパンクしちゃうよ!だから休んでなさい!後で嫌になるくらいシゴくから亀ちゃん来るまで仮眠でもしてな」
「あ、ハイ、わかりました」
とぼとぼ部屋に戻る
横になり
「確かにここ1ヶ月くらい休んでないなぁー。やっぱ私、何か焦ってるのかもなぁ。でも夢子さんだっていろいろやってて休んでないだろうし、真琉狐さんも試合やイベントで休んでなさそうだしなぁ」
入門したての頃は休日はずっと寝てられるという嬉しさとやはり体の疲れで単純に動けなかったというのがあった
今はもちろん疲れはあるが体自体は練習に慣れてきている
そして少しでも強くなりたい!
早くリングに立ちたい!!
そんな想いが前に前に来ている
それに休むことなくプロレスに向き合ってる先輩が身近にいる
もしかするとその先輩たちにも負けたくなくなっているのかもしれない
何か私ってプロレスラーに向いてるのかも?
つって!
目を瞑る
少しの仮眠は集中力を高めるって言うしね
ムニャムニャムニャムニャ
ZZZ、、、
結局、夢子さんに起こされるまで寝てしまった(反省)
下に降りると亀さんが一番下の子のほのちゃんと待っていた
「遅れてすみませんでした!」
頭を下げる
「昼寝してたのー?まあ私も遅れちゃったからね。ま、やろうやろう」
亀さんはセカジョのOG
夢子さんの少し先輩
当時のリングネームは「亀松」
社長がめでたくていいだろうと付けた名前らしい
結婚とともに寿引退
今や3人のお子さんのお母さん
亀さんのお母さんはセカジョ創成期のレスラーであり社長の妹
なので社長の姪っ子でもある
(私調べ)
夢子さんと亀さんがいる時は技練習と実践練習が中心となる
打撃はエルボー、ストンピング
投げ技はボディスラム、首投げ
絞め技はヘッドロック
関節技はボストンクラブ
飛び技はドロップキック
この辺りの基本技を夢子さんと亀さんでまずは見本を見せてもらい
その後、私がかけられてどこがどう痛いのかを自身の体で技の効果を覚え
今度は私がそれらを踏まえ実践
そして何度も反復して練習をする
空手がオリンピックで型の美しさを争ったようにプロレスも技の威力だけではなくその技の美しさというのも追求しなければならないと思う
例えばドロップキック
打点は高くジャンプ時になるべく小さく体を縮めてキックを当てた時にバネの反動の様に
思い切り体を伸ばすことで技のダイナミックさや美しさも表現できる
特に私のような小柄な体型だとよりそういうところを気をつけていかなければならない
夢子さんの声が飛ぶ
「違ーう!低い!」
「当たりが弱ーい!」
「最後しっかり受け身を取る!ちょっと崩れてるぞ!」
何度も何度も飛ぶ
何度も何度も、、、
パンパンッ
夢子さんが手を叩く
「よしっ!ここまでー!10分休憩ー終わったらスパーリング!!」
「ハァハァハァ、ありがとうございました」
座礼しリングを降りて座り込む
するとほのちゃんがひょこひょこと私に近づいてくる
「たまちゃん!お水」
と、ペットボトルを渡してくれた
「ハァハァ、ほのちゃん、、ありがとう」
ほのちゃんはニコッと笑って亀さんの方にまたひょこひょこと
それを見ていた夢子さんが
「練習生なのにもうセコンドがいるのー?」
と冗談混じりに
そしてみんなで笑った
ほのちゃんの笑顔が疲れを吹き飛ばしてまたヤル気にさせてくれる
もうすでに名セコンド
流石はレスラーの血を色濃く継ぐ者だ
ペットボトルの口を開けグイッと水を流し込む
全身に沁み渡る
次はスパーリング
頭の中で関節の取り方や逃げ方、切り返し方に押さえ込み方を思い出し組み立てる
もちろん完璧な答えなんて出るはずはないがいい流れをシュミレーションするのは悪くないだろう
「ハーイ!休憩終了ー!二人ともリングに上がってー」
立ち上がりながら頬と太ももをパンパンパンッと叩き
リングに上がった