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【読書メモ】不自由の認識からキャリア論へ:『ブルデュー『ディスタンクシオン』 2020年12月 (NHK100分de名著) 』(岸政彦著)
ブルデューのハビトゥスという概念が、いかに私たちが自由と感じているものを制約しているのかについてここまで見てきました。ハビトゥスの構築が、家庭や学校で為される側面の大きさを鑑みると嫌な気持ちを抱く方もいるかもしれません。しかし、著者は、ハビトゥスに自覚的になるということは不自由を知ることであり、不自由さの認識が逆説的に自由になる条件であるとしています。どういうことなのでしょうか?
不自由の認識
自由な時間が多い時ほど不安な気持ちになるということはないでしょうか。卑近な例で恐縮ですが、一人暮らしをしていた時分に、仕事が全く忙しくない時期があり、その頃にすごく不安な気持ちになりました。できるものが多すぎると、成否や優先順位を考えすぎてしまって行動できず、行動できなかった自分に落胆する、という感じでした。
人によって減少は異なるとは思いますが、自由さがネガティヴに働くことはあるのではないでしょうか。その反対に、不自由さを認識することで前向きな自由さを感じることができるという側面に対して、ブルデューはハビトゥスを提示することが光を当てたとも解釈できると著者はしているのです。
キャリアを考える上でも役に立つ!?
ハビトゥスというものの特性を考えていくと、私の研究領域であるキャリアを考える上でも参考になるものが多いなと感じます。
ハビトゥスとは何でしょうか。それは、家庭や学校のなかでたたき込まれた性向、態度、傾向性です。つまりそれは、それまでの人生の履歴、蓄積なのです。私たちの態度や感情、そして身体には、「履歴がある」のです。それは行為のなかに蓄積された過去の履歴であり、学習と訓練によって長い時間をかけて獲得された身体の記憶です。
キャリア意識やキャリア行動に影響する先行要因として特性があります。この特性にはBig Fiveや自尊感情などが入るのですが、私たちのハビトゥスを多様な側面で描き出したものがこれらの特性のように感じられます。
ここでも、ハビトゥスを制約要因として捉えるよりも、その内容を認識することで、意識や行動へと活かす活性剤として捉えたいものです。キャリアを考える上ではライフ・ラインチャートを描くことが多く、このワークによって自身のハビトゥスに自覚的になり、前向きな一歩を踏み出すためのキャリア意識と行動へとつながると考えることもできるのではないでしょうか。