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【読書メモ】ストーリーとしての哲学史&宗教史:『哲学と宗教全史』(出口治明著)

哲学史や宗教史の書籍を読んだことがある方であれば共感いただけると思うのですが、あまりに難しくてとても読めたものではありません(著者のみなさま、ごめんなさい。。)。一つだけでも難解なのに、両者を併せてかつ読みやすい物語として描いているとんでもない書籍が本書です。哲学史か宗教史に興味がある方は、騙されたと思ってぜひ手に取っていただきたいオススメの一冊です。

「教科書」が読みづらい理由

私自身は、研究というプロセスを好んでいるので、いわゆる「教科書」と呼ばれる書籍をよく読む人間ですし、その魅力もよくよく理解しているつもりです。しかし、その領域は自分自身が研究する領域の「教科書」に限られます。

というのも、「教科書」は対象とする学問領域を網羅的に取り上げかつ個々のテーマを深掘りすることを目的とする書籍であるため、どうしても各テーマ間のつながりが見えづらくなりがちです。その結果、「で、結局AとBは何が違うの?どう関係しているの?」といった概念どうしの「間」を理解することができず、その領域に詳しくない読者は置いてけぼりになってしまうのではないでしょうか。

研究する人間にとっては大変ありがたい書籍であるものの、圧倒的多数の普通の人にとっては決して読みやすい書籍とは言えない存在。それが「教科書」なのではないでしょうか。

ストーリーとしての歴史物

本書がすごいのは、哲学と宗教の歴史を一つのつながったストーリーとして書き切っている点です。物語にするために、大胆な省略と意訳的解説が多いので、「教科書」的な網羅感はないのでしょう。また、専門家の方々からは深掘りが足りないという批判も受けかねません。

これらの潜在的な批判を受け容れる著者の度量が本書をすごい作品にしているのではないかと思います。もちろんその前提として、著者の多様で深い教養が、それぞれの考え方を丁寧に繋ぎ、一つの物語を紡ぎ出しているのです。本書を読む際には、ぜひ小説を読むような心持ちで読み進めてみてください。


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