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【論文レビュー】キャリアレジリエンスとリアリティショック:児玉(2015)

新しい組織に入ったときに、事前の想定と現状とのギャップに直面して受けるショックのことをリアリティショックと言います。新卒入社して職場で働き始めたり、転職して新しい会社で働くようになった後に経験するもので、この記事を読まれている方の中にもリアリティショックを感じたことがある方もいるのではないでしょうか。

児玉真樹子. (2015). リアリティショック経験時のキャリアレジリエンスの働き―職業的アイデンティティに及ぼす影響に着目して―. In 日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第 79 回大会 (pp. 1PM-134). 公益社団法人 日本心理学会.

リアリティショックとキャリア形成

本論文では社会人1年目の正社員233名を対象とした調査を行って、リアリティショックとキャリアとの関連を考察しています。まず、リアリティショックがキャリア形成に対してネガティヴな影響を与えていることを明らかにしています。

こんなはずじゃなかった!というギャップが大きいと、その組織においてキャリア形成を行うことが難しくなる、ということです。なお、本論文ではキャリア形成を職業的アイデンティティによって測定しています。

キャリアレジリエンスによる緩和

このようなリアリティショックと職業的アイデンティティとの逆相関関係をキャリアレジリエンスが緩和することを本論文では実証しています。キャリアレジリエンスとは以下のようなものです。

キャリアレジリエンスとは,キャリア形成を脅かすリスクに直面した時,それに対処してキャリア形成を促す働きをする心理的特性であり,その下位概念としてはチャレンジ・問題解決・適応力(以下チャレンジ),ソーシャルスキル,新奇性・興味関心の多様性(以下,新奇多様性),未来志向,援助志向の5つがある(児玉, 印刷中)。

p.1118

キャリアレジリエンスとはキャリアとレジリエンスという二つの概念が組み合わさったものです。レジリエンスというリスクに直面しての対応をキャリアという文脈で捉えた概念であることが上の引用から理解できます。

こうした心理的特性を持っていることによって、リアリティショックを経験しても職業的アイデンティティの形成ができるように緩和されるということは理解できるように思えます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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