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読書感想文:八犬伝の世界/高田衛
中公新書の1980年版は今ごろ(2008年)は絶版らしい。これは気紛れに中古で買った。
訂正加筆して、今は煌びやかに新しい版が出ているとか。
(当時の携帯での画像なのでとにかく写真が粗い)
ともあれ、面白かった。
先日読んだこの著者の別の著作が面白かったので買ってみたのだが、八犬伝という虚構の世界、今で言えば異世界ファンタジーをここまで読み解いて見せたのは大した力量だと思う。
単にミーハーな意味でも八犬伝は大好きなのだが、江戸時代の読者と同じだけの知識を持って同じ背景を読み取るのは難しく、物語の背後に隠された真意と寓意を読み取るのに非常に力になると思う。
ただ、実際に八犬伝を読んでいたほうが面白いのはもちろんで、この本を読んだ後にもう一度八犬伝を読んでみようかという気分になる本。
内容の要に触れるのは野暮だから、その辺は措いておく。
(2008年、これはおそらくAmazonで手に入れた本だと思う。古本屋かなあ。買ってみたとあるから、通販で求めた気もする。この著者の筆はいずれも読み応えがある。
↓ 当時、一ヶ月おかず買っていた。補遺も含め加筆があり、完本と銘打たれている。よほど好きだったと見える。)
完本 八犬伝の世界
高田 衛 著
中公文庫版「八犬伝の世界」の完本。
ちくま文庫で出ていてちょっと驚く。なんで中公じゃないのか。ちくまは好きだが、本当は筑摩書店のが好きだ。それはともかく。
膨らんだ本だ。
つまり、以前の版に比べて非常に肉付きが良い。
高田氏自身が八犬伝の長大さを語り(当時完結するまでに28年かかったという)、前半部との差異や、後半部の冗長でありながら転回し収束していく物語について思うさま語っているが、まるで八犬伝と同じことがこの本にも起きたように感じた。
八犬伝を語っているのだから、同じことが起きるのは当然だと言われるかもしれないが、高田氏は意識せず馬琴と同じ轍を踏んでいるのではないかとさえ思う。
同じ嗜好を持つ部分があるからこそ、高田氏は馬琴にこうも引かれているのだろうかとも思う。
まあ、高田氏本人の著作は他にも一作読んだことがあるが、文章としても面白い。
八犬伝が読みたくなる。
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