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noteを週一回以上必ず更新しようと思い立って一年が経った。2020年6月から1000文字以上というルールを決めて、毎月8本〜10本の記事を書いている。今日までかろうじてそれは続いている。

いい文章が書けるようになりたいし、おもしろい小説が書けるようになりたい。僕は物書きになりたいからそれを始めた。

そうやってnoteを1年間更新し続けたこと、そして、最近、田中泰延さん『読みたいことを、書けばいい』を読んだことで、気づいたことがある。それは、闇雲にやるだけでは駄目だということだ。

一度立ち止まって、目を向けるべきものについて整理し、戦略を立て直そう、と思った。僕はいい文章が書けるようになりたいし、おもしろい小説が書けるようになりたいし、物書きになりたい。

僕はずっと小説が読めなかった。小学生の時に、母が買ってくれた夏目漱石『坊っちゃん』や宮沢賢治『銀河鉄道の夜』は、最初の3ページくらいで、挫折してしまった。

僕は本を置き、同じ本棚にあった古谷実『行け!稲中卓球部』を手に取り、読み始めた。僕にとっては、小説を読むより、漫画、音楽、バスケット、釣りの方が断然楽しかった。

その時、僕は文章を読むのが苦手なんだろうと思った。だから『坊っちゃん』と『銀河鉄道の夜』に挫折したのだと。以降、国語は苦手教科で、センター試験の現代文は半分取れたら良い方だった。

一方で、音楽雑誌や釣り雑誌、映画やサブカル系の雑誌を読むのは好きだった。

当時、大好きだったGOING STEADYやハイロウズ、ブランキー・ジェット・シティの記事を読み、彼らが文学に影響を受けていると知り、僕は文学に憧れた。

でも、中学生の頃に挫折して以来、小説を読める自信がまったくなかったので、本を手に取ることはなく、文学を知ることもなかった。高校の授業で芥川龍之介『羅生門』を勉強したが、ほとんど覚えていない。

そんな感じで僕は高校を卒業した。

福岡市内の大学に入学し、学校の近くにある本屋でレッド・ホット・チリ・ペッパーズのインタビュー集を立ち読みしていた時、ボーカルのアンソニー・キーディスがブコウスキーという小説家について話をしていた。

ブコウスキーは最高だ。俺は彼にとても影響を受けている。彼は小説の中で、ロサンゼルスのリアルを描いている。彼はオールドパンクなんだよ。そんなことが書かれてあった。

それで、僕はすぐにアメリカ文学の棚に向かい、チャールズ・ブコウスキーの小説を探した。『町でいちばんの美女』というタイトルの短編集を見つけた。

レッチリの本は3000円くらいしたので棚に戻し、僕は500円くらいのその短編集をレジに持っていった。

家に帰って、その本を開き、最初に書かれてある短編を読み始めると、10ページくらいの短編が1つ読めた。おもしろいと思った。

僕はその時、生まれて初めて、自分で読もうと思って、1編の短編を読むことができ、その短編をおもしろいと感じることができたことに驚いた。ひとり暮らしを始めたばかりの部屋で一人、僕にも本が読めるのだと、えらく感心した。

それから、僕はその短編集に収録されてある全ての短編を読み終えることができた。

初めて1冊読み終えたことで、自信をつけた僕は、他にも本が読めるかもしれないと博多駅の近くにあったブックオフに行った。

僕はゴイステやハイロウズが影響を受けた日本文学を読みたいと思った。日本文学の棚に行き、知っている名前から順に本を取り、開いて、数行読み、というのを繰り返していた時、ふと手に取った太宰治の『斜陽』の冒頭を読んで、僕は驚いた。

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 朝、食堂でスウプを一さじ、すっと吸ってお母さまが、

「あ」

 と幽かすかな叫び声をお挙げになった。

「髪の毛?」

 スウプに何か、イヤなものでも入っていたのかしら、と思った。

「いいえ」

 お母さまは、何事も無かったように、またひらりと一さじ、スウプをお口に流し込み、すましてお顔を横に向け、お勝手の窓の、満開の山桜に視線を送り、そうしてお顔を横に向けたまま、またひらりと一さじ、スウプを小さなお唇のあいだに滑り込ませた。ヒラリ、という形容は、お母さまの場合、決して誇張では無い。婦人雑誌などに出ているお食事のいただき方などとは、てんでまるで、違っていらっしゃる。弟の直治なおじがいつか、お酒を飲みながら、姉の私に向ってこう言った事がある。

(太宰治『斜陽』より)

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その時、僕は初めて文章を「美しい」と感じた。言葉は物語を語るためだけのものではなく、それ自体が美しいのだと思った。僕はその本を買って帰り、数日のうちに『斜陽』を読んでしまい、100円で買える太宰の本を買い漁った。

僕は、いつの日か、おもしろいものを書けるようになりたいと思った。それ以降、mixiで文章を書き始めた。mixiが終わってからは、インスタやFacebookで文章書き、その後、noteに移行し、今に至っている。

一度立ち止まって、目を向けるべきものを整理し、戦略を立て直す。僕はいい文章が書けるようになりたいし、おもしろい小説が書けるようになりたい。僕は物書きになりたい。

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