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sabinekoland
鬼子
捨てられてたから拾って来たのだった
吹きさらしの河川敷では辛かろうと
哀れに思ったのが事の発端だった
真桑瓜ほどの重さしかなかったけど
前歯が上下二本ずつ生えてたから
鬼子だろうと察しがついた刹那
既に情が移っていたのだった
揺すり集り盗みと極道の限りを尽くし
出奔したのは十年が過ぎた頃だった
もう手に負えぬと出刃を取り出し
お前を殺して私も死ぬと言った
翌朝には消えていたのだった
土間に出刃で刻まれた四文字は
”かかさま”と辛うじて読めた
哀れに思ったのが罪だった
人の心を訓んだばかりに
不幸を生んでしまった
石女は石女として生きればいいものを
羨む思いなど持たねばいいものを
人の世は何と歩み辛いものか
捨てられる為に産まれて来たのだった
人の心に好奇の目を向けたところで
鬼子は鬼子としてしか在られぬ故