指で、唇で
あなたはいつも指で罪を犯すの
ナイフよりもずっと滑らかに
胸の奥に触れるものだから
私はまた許してしまうの
痛みよりも遥かに尊い
恍惚に心を奪われて
あなたはいつも唇で罪を犯すの
哲学者よりもずっと思慮深く
想いの底に囁くものだから
私はまた壊れてしまうの
理性の陰にそっと佇む
衝動に軆を操られて
あなたによって
囚われの身となる
無上の喜びを知った
私の自己同一性は最早
所在を失い幻影に変わる
存在自体が曖昧なものなら
お互いに何ら障りはない
与えられて受けるだけ
たとえ罪だとしても
あなたは今夜もまた罪を犯すの
そして私もまた悉に応えるの
存在自体が曖昧な幻影に
完全に包まれて
指で、唇で