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甘美なものへ

今まで理解していた"喪失感"とは
いったい何だったのでしょう
埋めようのないほどの巨大な穴が
心にポッカリと空いているのです

貪るものがある内はいいけれど
もう能動的になることはないし
巨大な穴に吸い込まれていくことに
ほのかな甘美すら覚えているのです

こうなってしまったら
私を操っているものは
意思や思考ではなく
僅かに残る反射だけです

高い所から低い所へ
水が常に移動するように
人はより甘美なものへ
近づきたがるのでしょう

危険な行為だという声もあります
私は持って生まれた性質に
抗うことを好みませんから
適当に受け流すようにしてます

喪失感ということばの意味について
ぼんやりと考えたりもしたけれど
特にいいことがあるわけでもないし
面倒だからもうやめにしました

それほどまでに大切なものを
たぶん失ってしまったのでしょう
それほどまでに甘美なものへ
心が移ってしまったのでしょう








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