麗澤大学特別講義「SDGsとWell-being」の概要一講義科目「SDGsと道徳」
11月16日に麗澤大学で「SDGsと道徳」という300名を超える学生が受講している講義科目の特別講義を「SDGsとウェルビーイング」というテーマで行うが、そのパワーポイント資料の概要は以下の通りである。
1 SDGsの二つの起源
⑴ 地球環境に関する「持続可能な開発」という考え方
⑵ 途上国の開発の為に作られた「ミレニアム開発目標」(2001)
2 SDGsに欠けているもの
⑴ SDGsの最大の課題は、分野別、項目別の優先順位が不明であること
⑵ 「開発」は経済優先で、政治的な「平和」、社会的文化的要素が欠落
⑶ 「開発」の暴走が地球環境を破壊。伝統文化のブレーキが必要
⑷ SDGsの根本思想は「ネガティブをゼロに」して「負の遺産」を遺さな
いことに主眼➡「正の遺産」を繋ぎ「プラスを増やす」ウェルビーイ
ングが時代の要請
3 自国の利益を超えた「地球倫理」とGNH・GDWの新たな指標
<図> MDGs(2000)➡SDGs(2015)➡Well-being(SWGs)(2030)➡国
連誕生100年(戦後100年、2045)
4 SDGsからSWGsへの動向
⑴ SDGsは2015年~2030年の目標なので、2030年には終わる
⑵ 2045年までの新たな国際指標はSWGs(Sustainable Well-being Goals)
⑶ Global Wellbeing Initiativeの設立
⑷ 日本版Well-being Initiativeの設立
➡日本版ウェルビーイングの国際指標づくりを推進
➡日本発の幸福度指標の国際発信
➡「人類全体が幸せにならなければ個人の幸せはない」という宮沢賢治
のメッセージの国際発信
➡廣池千九郎博士の「人類の安心・平和・幸福」の国際発信
5 「文化的幸福」「集団的幸福」の日本モデル
6 SDGsからWell-being、「地球倫理」へ
⑴ GDP(経済指標)からGDW(幸福指標)へ
⑵ 日本語の「幸せ」の語源=「仕合わせ」(相手のために仕え合う)
➡坂村真民「あとからくる者のために」=「後楽」
⑶ Well-beingはSDGsを包括する概念(前野隆司)
⑷ 調和を目指す社会「ソサイエティ5,0」への転換
⑸ 廣井良典「地球倫理」「鎮守の森・自然エネルギーコミュニティ構
想」一田中朋清石清水八幡宮権宮司も共同研究
7 Well-beingをめぐる国内の動向
⑴ 民主党が仕掛けたが「最小不幸社会」というキャッチフレーズで失敗
⑵ 自民党が「日本Well-being計画推進特命委員会」を設置し、私も有識
者として参加➡政府の「骨太の方針」「成長戦略」に明記
⑶ 2月に英オックスフォード大学のヤン教授らを招いて国際会議を開催
8 G7教育大臣会合と麗澤大学・道徳科学研究所の共同研究の動向
⑴ 麗澤大学「サステイナビリティ推進機構」
⑵ モラロジー道徳教育財団道徳科学研究所の共同研究「Well-being教育
研究会」➡東大大学院道徳感情数理工学の二教授と「道徳とWell-
beingの関係」について共同研究を開始➡自民党の特命委員会も注目
9 大阪万博のテーマ「SDGsからWell-beingへ」
10 日本型SDGs「常若」思想の国際発信
⑴ SDGsを「常若」思想で捉え直す
⑵ 「自然・共同体との和」の精神で捉え直す
⑶ 日本が提案したESDの視点を重視する
⑷「誰一人取り残さない」➡「処を得る」「志を遂げる」=日本型SDGs
⑸ 日本独自の「世界平和」の哲学の国際発信一麗澤大学国際問題研究セ
ンター
11 田中権宮司がSDGs文化推進委員長に任命された理由
12 岸本吉生氏が提唱した「常若産業甲子園」プロジェクト
13 坂村真民の詩に学ぶ
14 日本モデルのWell-beingとは
⑴ 個人的なhappinessと包括的なWell-beingの違い
⑵ 日本の「協調的幸福観」と北米の「獲得的幸福観」の違い
⑶ 日本的Well-beingは「独立性」「協調性」のバランス・調和を重視
⑷ 内田由紀子「文化的幸福」➡人との関係性、自然との調和を重視
15 協調的幸福尺度とは
⑴ 自分だけでなく、身近な周りの人も楽しい気持ちでいると思う
⑵ 大切な人を幸せにしていると思う
⑶ 周りの人に認められていると感じる
⑷ 平凡だが安定した日々を過ごしている
⑸ 大きな悩み事はない
⑹ 人に迷惑をかけずに自分のやりたいことが出来ている
16 次期教育振興基本計画の2本柱
⑴ 持続可能な社会の創り手の育成
⑵ 日本社会に根差したウェルビーイングの向上
17 新学習指導要領におけるESDの位置づけと3つの実践課題
18 生徒と教師(学校)のWell-beingとは
⑴ 主観的幸福観一現在・将来・周囲のWell-being
⑵ 自己実現と自己受容➡成長を実感
⑶ 多様なつながりと協働・向社会性➡保護者・地域との信頼関係
⑷ 安心・安全な環境
19 日本型ウェルビーイング教育とは何か
⑴ バランスと調和の協調的幸福観の導入➡「多様性のある協調性」
⑵ 日本における二つの自己認識=「協調性」と「独立性」の2階建て
⑶ 生徒・教師(学校)のウェルビーイングの構成要素
⑷ 畏怖・畏敬の感動体験➡他者を助けるようになる
⑸ 「未来を信じる気持ち」「支えてくれる仕組み」➡レジリエンス(回
復力一堂安選手「逆境大好き」)
20 まんが日本昔ばなしはウェルビーイングの宝庫
21 日本文化から学ぶウェルビーイングの教訓
22 日本語の「幸せ」の語源と原型としての万葉集・古今和歌集
23 大谷翔平を育てたWell-being教育の日本モデル
24 「幸せ4因子」と大谷翔平の「目標達成シート」を活用した授業実践
25 ネガティブな感情に向き合い、逆境から立ち直る力
26 子供のWell-beingの構成概念と「志道和幸」教育の関係
27 「常若・志道和幸」教育とは
28 ポジティブ心理学の「感謝」研究一「感謝」学術論文が急増
29 ポジティブ心理学・アドラー心理学・幸福学の共通点
30 SDGsの経済圏・社会圏の土台は「生物圏」➡中村桂子「生命誌」視点か
ら捉え直す
31 中村桂子「生命誌絵巻」から見た生命の連続性➡「生命に対する畏敬の
念」のパラダイム転換
32 脳神経倫理学が解明した道徳の神経基盤一ミラーニューロンとメンタラ
イジング
33 道徳性の3本柱一道徳的心情(ミラーニューロン)と道徳的判断力(メ
ンタライジング)➡「道徳的実践意欲と態度」にいかにつなぐかが課題
➡大阪大学大学院助教の画期的な幼児調査にそのヒントあり
34 「感知融合の道徳教育」の6つの視点(図参照)一『道徳教育学研究』
創刊記念論文の拙稿参照