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私は、私の不要不急でできている。

週末、三鷹の森ジブリ美術館に行った。

世間では3度目の緊急事態宣言が叫ばれる中、きっと聞こえのいい話ではないのだろう。
けれどもう、私の根底を支え続けているアートに対して、不要不急という不遜なラベルを貼り続けることは耐えられないと思った。

そして1冊の目録を買った。
美術館ができるまでの試行錯誤、そしてできてからの展示・イベントの企画書をまとめた「宮崎駿とジブリ美術館」。
B2程度、おおよそ5キロはあるだろうかという大型サイズのそれを、文字通り1時間ほど担いで帰宅した。

600ページ弱あるその巨大な印刷紙はほとんど落書き以上デザイン以下のデッサン、通称「イメージボード」で埋め尽くされている。
宮崎駿とそのグループはこのイメージボードを通じ、自分が何を作りたくて、何を作りたくないか、というプレゼンテーションをひたすら絵で伝え合っている。

一言だけ添えられた殴り書きの文字とは対照にデッサンの線に迷いは少なく、初期段階であろうものから緻密なデザインの指示や色指定が施されている。
ただし全てを理屈っぽく説明するのではなく、初めて触れる人にどんな思いを、声をあげてもらいたいかを第一に。

文字ではなく、絵で。
理屈ではなく、感情を。

そんな仕事の進め方を初めて、かなり具体的に触れることができて、きっと私の仕事の進め方も大きく影響されていくだろう。

正直言って、私は特別ジブリファンではないと思う。

テレビや電車で受動的に新作を知り、散々批評された残り香のようなタイミングで映画館に駆け込むか、もしくは金曜ロードショーで初めましても厭わないタイプ。
この壮大な目録の読者の中でかなりの異端児だと思う、なんてったってお値段見事27,500円。

使い慣れたライトの下、家計簿アプリを開いた後では少しだけ「冷静になっても良かったかも」と反省することもゼロではないけれど、全体的にはとても満足している。

なぜならこの出会いが、私の仕事ぶりに影響し、新しい価値を付け加えてくれることだろうから。
いわば必要経費といってもいいかもしれないくらい、今までの凝り固まった理屈っぽい話し方とは別の、言葉少なにチームをワクワクさせる方法を知ることができたから。

さてここまで振り返ってみて、果たしてこのショートトリップは不要不急の部類に入るのだろうか。
明日の糧を得るためのインプット(仕入れ業務)を、不要で電子化可能と言われるのは強い違和感を覚えている。
あらゆるデジタル化を進める職にいるからこそ、電子の粒では溢れてしまう時間や出会いがあることを知っている。

過去分析のレコメンドからは、予定調和な未来しか弾き出せない。
ジャケ買い、日替わり、オープニングアクト。
私は、私の不要不急でできている。

この目録はとってもおすすめなんですがきっと気軽に買えるものではないので…
同じジャンルの体験ができる書籍をご紹介したいです。
特に会社勤めの皆様には共感いただけるのでは。私もその1人です。

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