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【神門レポート】僕の地元、札幌市の20年後の図書館はどうなっているのだろうか。

◯ 導入

僕は読書が大好きで、家にはおそらく300~400冊ほどの本があるはずです。ちなみに、購入して付箋やメモを書いていきたいのであまり図書館では本を借りません。借りるときは、市場に出回っていない郷土資料や気になった書籍の試し読み程度です。

小学生の頃から近所の図書館に頻繁ではないですが通っていました。もう10年ほど経過しますが、利用者は新聞を読みに暇つぶしをしている高齢者の方々がほとんどでした。

蔵書も小学校・中学校のラインナップよりも少し高価な本が多かったり、歴史漫画が充実していたりと、そんなに変わらないといった印象でした。だから、わざわざそこにいく必要性を感じなかったのです。

中学生・高校生になると、読書や本を借りに行くといった目的よりも、 テスト勉強の自習という目的に移り変わっていきました。本を借りるという目的でまた行くようになったのは、札幌・北海道の歴史を勉強するようになってからです。

自ら進んで行く図書館は、札幌市では創世スクエアにある「図書情報館」くらいです。館内はおしゃれで、一般的な市民図書館にはあまりないような蔵書が揃っています。ちゃんと、「そこに行く目的」があるのです。でも、市内を見渡すとこんな図書館は稀有です。もう一つは中央図書館くらいでしょうか。

最近、とある本を読みました。

この書籍の刊行は2003年と約20年前の本で、内容はニューヨーク公共図書館の先進的な取り組みを紹介するもの。この20年前の図書館の状況と現在の札幌市内の図書館を比較すると、20年前のニューヨーク公共図書館の方が利便性が高いのではないかと思わざるを得ません。つまり、札幌市の図書館は20年以上遅れているということです。

もちろん、世界的な都市であるニューヨークと比べることはどうなんだ、という指摘も考えられますが、おそらく20年以上市内の図書館は大きく変わっていないでしょう。唯一変わった点といえば、「電子図書館」サービスの拡充でしょうか。とは言っても、未だ蔵書数は9000冊ほどでリアル図書館の蔵書数(平均8.5万冊)には遠く及びません。

ニューヨーク公共図書館では、2003年当時でも、一度図書カードを作ってしまえば数万冊の書籍に、エリアフリーで接続でき読むことができるシステムが既にあると、本書では述べられています。

図書館は、変わらないといけない。

僕はそう考えているので、この記事では20年後の図書館の姿、特に地元白石区の図書館の将来の姿を妄想してみたいと思います。


◯ 札幌市の図書館の現状まとめ

まず、札幌市の図書館事情を把握していきます。

札幌市の図書館は大きく分けて中央館(1+2)、地区図書館(9)、区民センター等図書室(8)、地区センター等図書室(21)、図書コーナー等(4)、以上5つに分類され、図書貸出機能をもつ図書館はその他(2)を合わせて全部で45館(+電子図書館1)が存在します。

中央館(中央図書館・電子図書館・大通カウンター)がトップの図書館に位置し、中央区以外の各9区に地区図書館が設置されています(大通カウンターは返却のみ、電子図書館は仮想図書館のため上記の図書館数には含めていません)。

蔵書数は中央図書館が88.5万冊で、地区図書館は平均8.5万冊ほどです。地区図書館の蔵書の内訳は70%が一般書、27%が児童書、残り3%が参考資料や郷土資料という構成です。区民センター等図書室はもっと少なくなり、蔵書数は平均2.5万冊で構成比はほとんど地区図書館と変わりません。

しかし、地区センター等図書室は蔵書数が平均3.3万冊、構成比は一般書が65%で児童書が35%と、地元住民と距離が近い性格なため児童書の割合が多くなっています。図書コーナー及びその他はここでは無視します。

札幌市の図書館はそれぞれこのような特徴をもっています。

出典:札幌市「札幌市の図書館2021」


◯ 白石区の図書館事情

では、ここからは白石区に絞って見ていきます。

白石区には全部で6館の図書館が存在しており、これは行政区10区中で北区と並んで最も多い数になっています。この6館中、蔵書数が最も多いのは、僕の地元である白石区東札幌にある、地区図書館「東札幌図書館」の8.5万冊で、6800冊という郷土資料数が地区図書館の中で最も多いことが特徴的です。

白石区はもともとJR白石駅周辺が中心地(昔は、白石区ではなく白石村であったため。役場は現在の白石小あたりにあった)でしたが、地下鉄駅の設置や、定山渓鉄道の廃線に伴う沿線の宅地開発(じょうてつの分譲マンションなど)が行われ、それが地下鉄駅に近かったため、白石駅・東札幌駅へ経済的重心が徐々に移動していきました。

そのため、交通が不便であった白石区役所が、2016年に地下鉄白石駅横に移転したことで駅と直結し、複合庁舎として白石区民センター等図書室も一緒に移転し、利便性が向上しました。またえほん図書館という蔵書数の95%が児童書という特化型図書館が新しく開館したことで、極めて近い距離(半径1km)に図書館が3つも存在するという構造になっています。

地区センター等図書室に分類される、白石東地区センター、菊水本町地区センター、北白石地区センターは、それぞれ白石区の中でも昔からの住宅地として機能していた場所に位置しています。

◯ 20年後の白石区の図書館を想像してみた

では、20年後の白石区の図書館の姿を想像してみたいと思います。

図書館は地元住民の生活と密接な関係をもちます。年少人口が多ければ、児童書を多くして読み聞かせ会などを多く開催するなどして、親子が揃って図書館を利用しやすくすることが地域教育としても機能するでしょう。その一環として、白石複合庁舎内にえほん図書館を新設したのだと考えられます。

しかし、人口構成を見ると総人口こそ2030年まで増加傾向が予測されていますが、年少人口は1985年以降ずっと減少しており、1985年には6万人の年少人口は2020年には2.2万人に減少しました。2050年には1.8万人の推測で、人口の10%に満たなくなってしまします。また、生産年齢人口も18.6万人(1985年)から13.5万人(2020年)に減少しており、10.8万人(2045年)にまで減少する予測です。反対に、老年人口は1.3万人(1985年)から2000年には年少人口よりも多くなり、5.3万人(2020年)、7.4万人(2045年)へと一貫して増加していきます。

引用;RESAS
引用;RESAS

つまり、20年後の図書館の主な利用者は日中暇な高齢者が多くを占め、ほとんど老人ホームと化してしまうかもしれないという予想がつきます。

また、高齢者が多くなるということは医療・介護の需要が高まることも意味します。地域医療情報システムの「医療介護需要予測指数(2020年実績=100)」によると、2020年には医療・介護ともに102だった指数が、2025年には医療:109、介護:123へと介護は5年で20%増加し、2045年までずっと増加し続け、医療:119、介護:155と全国平均よりも格段に医療・介護の需要が高まります。

出典:地域医療情報システム、https://jmap.jp/cities/detail/city/1104

このような将来推計の中で、図書館が果たすべき役割は医療・介護に関する学問や知識に医療・介護従事者が接しやすい環境を作ることで医療・介護サービスの向上に寄与したり、利用者が増加すると推測される高齢者自身が健康増進のための知識を得られるような、医療・介護という特別目的図書館を設立することが求められると思います。

ただ、これからは人口減少社会なので、新たな図書館の建設は避けるべきです。既存の図書館6館のどれかを特別目的図書館に変えることが現実的かと思います。

立地的には、白石区民センター等図書室が最適です。なぜなら、この区民センターを中心としたときに、半径3km以内に白石区のほとんどの医療機関が入るからです。

区民センター隣接のビルがあり、道路を1本挟んで立地する地上9階建のメディカルビルは庁舎移転前から存在し、元来白石区の医療中心地でした。また、地下鉄白石駅は地下鉄東西線のターミナル駅だったということもありバスセンター機能も備えており交通手段も発達しています。

メディカル機能の集積図書館の集積などの条件も考慮すると、白石区民センター等図書館は医療従事者(特に看護師。医者よりも大学などで学べる機会が少ないため)が十分に学べる環境設備をととのえ、利用する高齢者が自身の健康に関して学べるようにも整備するべきだと考えます。

これらの機能が有効に働くと、この場は医療従事者と患者(高齢者)の日常的距離が最も近い場となるので、図書館と医療機関の連携を図ることもできるかと思います。

人口構成の変化は図書館利用者の変化に直結します。20年先を見据えて、人口というマクロな動きをとらえた上で、地域に寄与する図書館の在り方を考えていかなくてはいけないと思います。


*注記*
アイキャッチ画像は、2020年11月中旬に東大図書館で撮影したものです。
ケインズ全集の「雇用・利子および貨幣の一般理論」がボロボロになっているのを目撃し、興奮したことを覚えています笑。

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