野良デザイン#00|街で出会う匿名のデザイン
はじめまして、デザイナーの眞木(さなぎ)と申します。
私は日頃、設備機器や家電製品をデザインして暮らしています。いわゆるプロダクトデザイナーというお仕事です。
観察する眼
ところで、みなさんはデザイナーと聞くと、どんな仕事を想像しますか?
私は学生の頃、デザイナーは美しい造形や色彩を設計したり、時にはイラストや言葉を巧みに操ってアイディアを伝えるプロフェッショナル、そんな漠然としたイメージを持っていました。
ところがどっこい、いざデザインのお仕事をするようになると、「観察する眼」こそ、デザイナーという職能の根幹であると実感するようになりました。
例えば、旅先で手に取った陶器の魅力的な質感が何故そう感じるのかを探る、日頃のインプットの質を高める観察眼。デザインしている対象がどう使われているのか、より使いやすくなるにはどうすれば良いのか、というアウトプットに近しい観察眼など様々です。
いずれも、何気なく過ごすだけでは見落とされてしまう、ものごとの本質に焦点を合わせる解像度の高い眼が、良いデザインを生み出すために不可欠なのです。
少し話が逸れますが、大学などのデザイン課程では、入学後すぐにデッサンの授業が設けられていることが多いのですが、それは絵を上手く描くためではなく、まず対象をじっくり観察する素養を鍛えるという意図があるのではないでしょうか。
路上観察と野良デザイン
この「観察する眼」の鍛え方は人それぞれですが、私は街に溢れる匿名のデザインこそ、人の生活を知り、デザインの引き出しを豊かにしてくれる教本だと考えています。
例えば、ある日近所を散策していると、こんな光景を目にしました。
日射を防ぐために、お風呂の蓋をかぶったエアコンの室外機。よくみると、風呂蓋は穴が開けられ、窓枠から4本の細い針金で吊られています。
風呂蓋も、室外機も、きっとお互いびっくりしていることでしょう。
本来の用途を超えて使われる道具たち。
作り手の想定を超えた工夫の数々に、デザインの教則本には載らない、リナルな生活観、リアルな道具のあり方を学ぶことができるのです!
私は、こういった街に溢れる匿名の工夫の数々を「野良デザイン」として収集し、おもしろ写真からもう一歩掘り下げることで、インスピレーションの糧にしてきました。
街を歩くという遊び
仕事のために始めた野良デザインの蒐集。けれどもそれは、決してデザイナーだけのものではないと考えています。想定外との出会いや発見、その地に根付く暮らしを知ることは、散歩や街がもっと好きになる、誰もが楽しめる最高な遊びだと思うんです。
この時世、どうしても日々の行動範囲が限定されてしまう一方で、もう知り尽くしたと思っていた近所にも、掘れば掘るほど発見があることにも気づくことができました。
この記事を最後まで読んで下さった貴方のように、路上観察の楽しさを共感し合える蒐集仲間と出会うことができれば、もっとたくさんの野良デザインや、自分にない観察眼に出会える!
初めてのnote投稿になりましたが、これからも野良デザインの蒐集をテーマに、みなさんに楽しんでいただけるような発見を投稿していきたいと思います。
用途を超えた道具の使われ方、想定外な現象、作者不詳の創意工夫…
リアルな人の営みを教えてくれる野良デザインたち。
みなさんの街では、どんな野良デザインに出会えるでしょうか?
フォローいただけましたら大変励みになります!
一緒に路上観察を楽しみましょう◎
ではまた👋