読書204 『かたばみ』
木内昇著
小金井の国民学校への代用教員として赴任が決まった悌子は、学校近くにある惣菜屋の2階を下宿先に決めた。
惣菜屋を営む朝子の夫は出兵し、姑のケイと二人の子どもと一緒に暮らしている。
そこへ、朝子の母の富枝と兄の権蔵も2階に住むことに。
戦時中から戦後しばらくの時代の物語。
徴兵調査で丙種だったことで、徴兵されず、定職にもついていなかった権蔵は、嫌味ばかり言うケイが苦手。
悌子は、元槍投げの選手で、岐阜の幼馴染と一緒になると、ずっと思っている。
国民学校でのやりきれない思いと、生徒たちの事情。
食料の調達が厳しくなってきた惣菜屋のやりくり。
終戦後の目まぐるしく変わる世の中。納得のいかない決まりごとに、子どもたちの世界でも諍いが起こります。心ない言葉をぶつけられたり、暴力で返したり。
気になったのは「父ちゃんが言ってた」という言葉でした。子どもの前で言ってはいけないことは、そのまま子どもの世界に影響するということ。
でも、その経緯を誰かが大人に伝えて、聞いた大人は怒鳴り込みにいく勢いなのを、落ち着かせて「どうすることがいいか」を話しあう。という場面がいくつもありました。
ちょっと笑うところとちょっと涙するところと、腹が立つところが入り乱れ、最後の方はズルズルと涙が止まりませんでした。
みんなが一生懸命で、それぞれのいい味を出していて、少しずつ気づくことが積み重なります。
タイトルの「かたばみ」の意味もよかったです。
これまで読んだ本の中でも、何本かの指に入るくらい、大切にしたい好きな作品になりました。
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