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【教員のメンタルヘルス①】悪影響なのは「多忙感」か?「負担感」か?
今回は教員のメンタルヘルスについての論文を紹介します。
磯和 壮太朗・今井田 貴裕(2022). 学校教員の職務多忙感・負担感がバーンアウトと専門性向上意識に及ぼす効果の検討 ─ 職務領域別の多忙感・負担感に着目して ─名古屋芸術大学研究紀要 Bulletin of Nagoya University of Arts, 43, 179-196.
この研究では学校教員の職務の多忙感と負担感に着目して、バーンアウトや専門性向上意識への影響を検討しています。
バーンアウトとは?
バーンアウトは燃え尽き症候群とも言われ、対人援助の過程で起こるメンタルヘルスの悪化のことです。
具体的には、
・感情的な資源の枯渇(情緒的消耗感)
・他者に対する冷淡な認識(脱人格化)
・自分自身に対する否定的評価を特徴とする症候群(個人的達成感の低下)
を特徴とする概念です。
「多忙感」と「負担感」
先行研究で多忙を「多忙感」と「負担感」に分けていることから今回の研究でもこの2つに着目しています。
この研究では職務を
・職務全般
・授業・教材研究
・校務分掌・事務作業
・児童生徒対応
・保護者対応
・地域住民対応
という6つに分類していて、
「学校の職務全般について、多忙を感じている」・・・多忙感
「学校の職務全般について、負担を感じている」・・・負担感
のような項目で回答を求めています。
多忙感と負担感、バーンアウトを促進するのは?
この研究ではさまざまな分析を行っているため、詳細はぜひ元論文をご覧いただきたいのですが、
結果から、バーンアウトを促進するのは負担感であり、職務領域に関係なくバーンアウトを促進する可能性が示唆されました。
一方で、多忙感はバーンアウトとの関連がなく、むしろバーンアウトの個人的達成感の低下を抑制し、専門性向上意識を促す可能性が示唆されました。
ただし児童生徒対応については多忙感もバーンアウトを促す可能性が示唆されました。
(元論文Table7より)
まとめ
今回の研究ではバーンアウトを促すのは多忙感よりも負担感が影響している可能性が示唆されていました。
教員の長時間労働の是正はもちろん急務ですが、多忙感を減らすだけでなく、各教員の負担感を減らす方法を考えていく必要がありそうです。