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現状突破の一つのアイデア/中間地点を自分で作る

今目の前に川が流れていて、それは自分自身の一歩では渡りきれないものがあったとする。

どうしても向こう岸に渡りたい場合、あなたならどうするだろうか。

例えば、"助走をつけて大ジャンプ"という方法がある。ただし、毎回一か八かの大ジャンプを繰り広げるのはあまりにリスキーだ。

現実的な対応策は、"飛び石のような中間地点を作ること"だろう。これで安心安全に往来できる。

川で考えれば自然とそういった結論にいくのだが、ことビジネスにおいては時に無謀とも言える大ジャンプを繰り広げてしまう人が見受けられる。それも再起不能の大怪我に繋がりかねないレベルである。

今回は、この中間地点を使った目標達成の在り方とその作り方について少し考えてみたい。

■マイルストーンとして中間地点は必要

まず、前提として、跳びたいと思えるだけの大きな目標を持つことが重要である。

そのような大きな目標の場合、大抵は数年レベルで時間がかかることが多い。

資格等のキャリアで考えるとわかりやすいので例に出すが、たまに"税理士になるのに簿記検定は必要ですか?"との質問を受ける。

受験資格で必要な場合を除いて、簿記検定に合格していなくとも税理士試験は受けられるので、重複が多いとはいえ最短距離でいくべきという意味でノーという方もいるだろう。

その意見は理解はできるが、私の答えはイエスだ。
長距離になるのであれば、冒頭で話した中間地点を設けた方が良いと思うからである。

年一回しか行われない税理士試験は、いわば0→100への大ジャンプである。もし中間レベルの中間地点があれば、0→50、50→100というように大ジャンプを中ジャンブ×2に細分化し、リスクヘッジすることができる

また、一年間モチベーションを保つことは容易ではない。中間地点をクリア出来れば自信にもなるし、一つの実績にもなる。勢いは大切で、その手応えからさらなる飛躍が期待できる。ここは大きい。

なお、万が一の場合、中間地点から臨機応変に行き先を変更できるという利点もある。
簿記検定という中間地点さえクリアしてさえいれば、税理士試験だけでなく、例えば公認会計士試験や上場企業の経理等、外部環境の変化に応じて、積上途中からの路線変更ができるわけである。

このように、マイルストーンとして中間地点を設けることは、①リスク分散、②モチベーション加速、③目的の変更容易性の観点から、理に適った方法であると私は考える。

■ビジネスでの中間地点は自分で作る

このように、キャリアにおいては比較的中間地点が簡単に見つけられるのに対し、ビジネスにおいてはそうでない場合が多い。

理由は単純で、キャリアにおける中間地点は既に用意されていることが多いが、ビジネスにおける中間地点は見つけるものではなく、自らが作るものだからである。

先日、顧問先との打合せで、こんな話があった。

守秘義務の都合で少し歪曲するが、1点1千万円レベルの大型機械を卸売している会社がある。昨今の情勢もあり、なかなか成約に結び付かない。部品単位ではそれなりに受注はあるが、それは利幅が低い。どうしたものかという相談であった。

色々とヒアリングしている中で、中間地点を設けてみてはどうかという結論になった。

つまり、上が1000万、下が数万の価格帯なのであれば、500万円前後の価格帯の製品を取り扱ってみるのはどうかという話である。その中間の商品を通じて製品の品質を実感してもらい、上の価格帯に繋げようという狙いである。業界的にはその価格帯はあまり聞いたことがないということだったので、新たなニーズを掘り起こすべくその社長はその取り扱いをメーカーに確認すると言い帰っていった。

機械卸売業に限らず、価格が大きく顧客が慎重になりがちなビジネスは、いわば大ジャンプであることから、その中間の商品を取り扱い、そのコミュニケーションを通じて最終の商品に繋げようという試みはよくなされている。

私が知る限り一番面白いのは、リビタの住宅購入における事例だ。

大きな買い物である住宅購入。1-3年程お試しで賃貸で住んでみて、その後気に入れば購入ができるという「試住(タメ/スム)」というサービスがある。

購入を決定した場合、賃貸期間に支払った賃料の一部を購入資金に充当することも可能なのだという。これは上手い中間の商品の設定だと考えられる。

ここで重要なのは、あくまで中間地点であっても"商品"だということである。その意味で、無償でのキャンペーンとは全く異なるものだということである。無償から最終地点だと、やはり0→100の大ジャンプになってしまう。

そうではなく、0→50前後の中間地点へと一旦お客様に一歩進んで頂いた上で最終地点へ繋げることを目的とするということが重要であると私は考える。

ちなみに、価格だけに限らず、例えば量や時間等、顧客のニーズに合わせて中間地点はいくらでも設定できる。

私自身も現状に行き詰まったらよく使う考え方であるし、その視点で様々な業界を見ると面白い気付きがあったりする。ビジネスは自ら作るものだという原点にも帰ることができる。

■おわりに

私自身の過去を振り返っても、無謀とも言える大ジャンプを試みて失敗したことが何回かある。
若い頃は後先振り返らず出来る、特権みたいなものがあるので、それはそれで良いのかもしれない。

ただ、大人になるとそうも言ってられないし、毎回川に落ちてずぶ濡れになるわけにもいかない。
少しばかり頭と経験を使って、上手く向こう岸に渡ってみたいものである。

その意味では、現状突破の一つのアイデアとして、中間地点を自分で作ることは有意義だと思う。
無意識のうちに実践されている方も多いかもしれないが、改めて参考にして頂けたら幸いである。


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