「風花日和」
古い蔵の二階にあがってびっくり
屋根うらの棟木に墨でくろぐろと
「 明治9年4月13日 第13代 常野與兵衛 建造」
147年まえに建てられた木造二階建て土蔵造り
この土蔵は、ペリーが箱館に上陸した22年後に
松前藩と会談を行った場所近くに建てられた
建て主の常野與兵衛は
大町にひらいた茶舗を拠点に
茶業、書店などをひろく営んでいた
さらに大火事が頻発する
この地で防災に力をそそぎ
函館公園の開設、さらにコレラ予防に
上水道の計画をすすめるなど
そのころの街の顔役であった
今の市長にあたる初代区長に
開拓使より任命され
それから常野正義と名乗った
思いもかけず由緒ある建物を買った今の持ち主は
この建物の由来とその魅力にほれこみ
使える部分はできるだけ生かし
次の世代にのこせるものにしたい
との思いを強くした
再生作業を担ったのは
京都の黒木裕行さん
京都丹後・伊根浦の舟宿など
全国あちこちで古民家のリニューアルに
たずさわっている
函館では
持ち主が快適な暮らしを楽しめるよう
建築当初の完全なる復元は避けた
そこで、いったん解体して
基本的な構造の復元と
使える部材を再利用することに
当初の箱の形はのこしながら
間取りと外観をかえて
工事に3年かけて2022年
個人住宅
コーヒー屋
イベントスペースに
生まれかわった
持ち主と設計者の思いが
ぴったり合って
旧市街の街並みにふさわしい
見事な再生となった
三度の大火と150年ちかくの
時の移ろいを
のりこえた「風花日和」
風花とは「晴天にちらつく雪」
さらに日和とは「よい天気」のこと
素敵なネーミングだ
旧市街の
ランドマークとなっている