ザルツブルグ散歩
ザルツブルクは、小雨模様で夏なのに肌寒い
「サウンド・オ ブ・ミュージック」で
『ドレミの歌』の舞台となったミラベル庭園を通りぬけ
カラヤンの生家そばの橋をわたり
旧市街に入った
歩き疲れてカフェで、白ワインを3〜4杯かさねる
ギャルソンおすすめのプレーンなオムレツは美味かった
ヨハン・シュトラウス の円舞曲「酒・女・歌」のごとく
いい酒・いい食事、そのうえ、いい女といけば、旅は最高となる
が、三番目はまあ難しい
クラシックが流れるカフェから
ザルツブルク城を見あげれば、
谷川俊太郎の詩が浮かんだ
ザルツブルグのこぢんまりした街並を
背後の丘のほうへ上っていったら
曲がりくねった小路が
大きな中庭みたいなところで終わった
まわりの 石造りの建物の格子のはまった窓から
女が顔をのぞかせ笑いながら大声で何か言った
まだ朝の九時なのに
なんて言うのだろうドイツ語では
女郎屋だ日本語では
案内書にはのっていない
モーツァルトも通ったのだろうか
―谷川俊太郎「ザルツブルグ散歩」
先のカフェ・トマゼリは 1703年創業
モーツァルトが生まれるよりも古い
宮廷お抱えのモーツァルトも
トマゼリに通ったのだろう
いつもどの席に座ってうさ晴らしに
騒いでいたのか
モーツァルトは、ザルツブルクの領主を兼ねる
コロレード大司教とそりが合わなかった
大司教から首を宣告されたモーツァルトは
せまくるしい故郷と決別し
25歳でウィーンへ旅立った
が、そのあと、彼に残された時間は
10年ぽっきりだった