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「教科書経営」が会社を強くする

私が法律雑誌以外で定期購読しているものに、「日経ビジネス」があります。

先日の「日経ビジネス」(2021.12.27/2022.01.03合併号No.2122)の特集の一つは、「会社を強くする『教科書経営』」でした。

1 教科書通りの実践で誰もが経営できるのか

この特集で、特に印象に残ったのがこちらの記事です。

この記事には、

経営者のセンスに依存した経営はサステナブル(持続可能)ではないと思います。教科書を使えば、特別な努力をしなくても教科書通りに実践することで、誰もが経営できるようになります。その違いは大きいと思います。

という星野リゾート代表の言葉が紹介されていました。

確かに、logicalでない、 senseやfeelingのみに頼った経営は危ういとしか言いようがありません。ましてや、精神論すなわちwillpowerや迷信だけに頼ってはさらに危ういでしょう。

とはいえ、特別な努力をしなくても教科書通りに実践することが本当に可能なのか気になってしまうものです。

そこで、本の存在は知っていたものの、全く読んだことのなかったベストセラー、『星野リゾートの教科書』を読むことにしました。

2 教科書経営の実践例 拠り所の多くは「定石」

『星野リゾートの教科書』は、リーマンショックから1年半後の2010年4月、いまから11年以上前に出た本です。

この本には、確かに、星野リゾートが実際に直面し解決した多くの事例(ケース)が取り上げられています。

経営者が単に自らの成功体験や精神論を語るものでもなく、ケースを後付けで理論を用いて説明づけようとするものでもなく、経営者が教科書に載っている理論の通りにどのように実践をしたのかが書かれています。

出てくる拠り所は、例えば、ポーターの競争戦略、コトラーの競争地位別戦略など、今ではよく知られたごく基本的なもの、いわば「定石」が並びます。

3 教科書経営がリスク削減にも重要

そして、第I部には

何も知らないで経営するのと、定石を知って経営するのでは、おのずと正しい判断の確率に差が出る 
中沢康彦『星野リゾートの教科書』P.14
何の方法論も持たずに飛び出すのに比べて、教科書に従えばはるかにリスクは減らせる
同 P.14
教科書を経営に生かし、誤った経営判断をするリスクを減らすことは有益である
同 P.17

というように、教科書を経営に生かすことがリスクを減らすためにも重要であるとのことでした。

教科書通りの経営を行うことの重要性は、たしかにその通りだと思います。

4 実践する上での課題は市場と戦略の画定か?

とはいうものの、教科書通りの経営を行うには、自社の置かれた状況についての客観的かつ的確な分析と市場と戦略の選び方が重要であり、これが難しいとも感じます。

独占禁止法の世界でも、法律の規制対象となる行為類型を考える上で、一定の取引分野(市場)をどう画定するかが問題になります。

市場をどう捉えどう見極めるかが判断を大きく左右するのは、経営戦略の策定においても同じでしょう。

5 コモディティ化、知覚品質の向上という課題

その他、サービスや品質による差別化が難しくなるコモディティ化をどう乗り越えるか、ブランドの価値を決める要素のうち認知等広告費に比例するものではなく知覚品質をどう高めるか。

これらは、私自身の課題だと感じました。

6 コロナ禍の今だからこそ重要度を増す教科書経営

この本には、

日本の観光業はまだ勝ち組が不在の状況
同 P.161

であり

変革前夜
同 P.162

であるとの記述もあります。

この本が発売されたのは、リーマンショックから1年半後の2010年4月ですが、今の観光業はどう捉えるべきなのでしょうか。また、私の業界もそのように捉えるべきなのでしょうか。

出版から10年後にコロナ禍となりました。

観光業界は、バブル崩壊やリーマンショックのとき以上に、各々が今後どう生き残るかを必死に考えたはずです。

コロナ禍だからこそ、教科書に基づく経営は、冷静かつ的確な判断をする上で重要度を増しているのではないか。そんなことも感じました。

7 2022年は読書の年に、そしてそのために

2021年はあまり読書ができませんでしたので、2022年はnoteに読んだ本の感想を書くことを自らに課して、こつこつ本を読んでいきたいと思います。

その練習として、今年のうちに、試しにまずは1冊、挙げてみました。

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