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VRIO分析の"O"の意義 いくらいいものを持っていても、それを活かしきれるような組織でないとダメ

忙しくとも読書は進んでいますが、読書を記録するのは後回しになりがちです。今回、感想を述べるのは、有名な経営学者の「教科書」です。

経営学の教科書を読もう。そう思い立ったのは、2021年の暮れでした。

そんな中、ちょうど、2021年12月に出たのが、アメリカの著名な経営学者、バーニーの企業戦略論の新版でした。

早速、全3巻購入し、上巻から読み進め、今は下巻を読み進めています。

上巻を読み始めて感じたのは、訳文の読みやすさ。

原文をさらに噛み砕き、読みやすさを心がけて訳している印象です。

戦略について、

すなわち戦略とは、「業界内の競争がどう展開していき、それをどう利用すれば競争優位が獲得できるか」という問いに対して、企業が行う「ベスト・ベット(最善の賭け)」なのである。(ジェイ B. バーニー、ウィリアム S. ヘスタリー『新版 企業戦略論 戦略経営と競争優位 上 基本編』岡田正大訳 p.16-17)

とあります。さらに、

ミスを抑える最善の方法とは、一定の戦略経営プロセスに従い、慎重かつシステマチックに戦略を選ぶことである(同p.17)

と。

この、経営戦略プロセスとは、ミッションの策定から、目標の設定、外部環境・内部環境の分析、戦略の選択と実行を経て、競争優位の獲得に至るまでのプロセスをいいます。

先日の『「失敗の本質」と戦略思想』では、孫子やクラウゼヴィッツといった定石と現実との乖離が何をもたらしたかが明らかになっていました。

なお、『新版 企業戦略論 戦略経営と競争優位 上 基本編』では、従来の経営戦略プロセスとは異なるアプローチとして、ビジネスモデル・キャンバスも紹介されています。

ビジネスモデル・キャンバスは、こちらが詳しいです。

この本も、先日、紹介しています。

経営戦略プロセスのうち外部環境・内部環境の分析は、SWOT分析(企業の強み・弱み、企業を取り巻く機会・脅威の分析)が用いられ、とりわけ外部環境についてはそのうちのOとTを、内部環境についてはそのうちのSとWを分析することとなります。

内部環境については、VRIO分析、つまり、経済的価値、希少性、模倣困難性、組織の4つの「問い」から、企業が持つ経営資源やケイパビリティの競争上のポテンシャルを分析するフレームワークが使われます。

ケイパビリティについて、本書では、

経営資源の一種であり、自社の管理下にある他の経営資源の潜在力を最大限活用するための有形・無形の資源(同p.122)

と定義されています。

このVRIO分析の中でも、組織に関する問いに関する説明が興味深いものでした。

アップルが携帯音楽プレーヤー市場を席巻した要因の一つは、ソニーが失敗したことにあり、具体的には、コンシュマーエレクトロニクス部門と音楽部門との間で協力関係を築くのに失敗していたと分析しています。

つまり、ソニーは、

価値を有し、希少で、模倣コストの高い経営資源やケイパビリティを持っていながら、その経営資源を活かしきれるような組織体制を築かなかった場合、競争優位へのポテンシャルが部分的に失われて(同p.150)

いた、というのです。

いくらいいもの(経営資源やケイパビリティ)を持っていても、それを活かしきれるような組織でないとダメだということですが、これこそまさに、失われた20年、30年の中で日本企業の競争力が落ちた要因の一つだと感じました。

事業戦略については中巻で詳述されています。

こちらの感想も後日載せたいと思います。

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