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もういちど読む 山川世界史 PLUS

今年の初めに発売された『もういちど読む 山川世界史 PLUS』。

山川出版社の高校生向けの分厚い参考書『詳説世界史研究』を、いわゆる西洋史と東洋史に分けて、一般向けに再構成したもので、西洋史に当たるのがヨーロッパ・アメリカ編です。

ウクライナ侵攻の真っ只中ということで、先に19世紀末以降の部分を読んで西洋近現代史を振り返り、その後、最初のギリシャ文明から読み進めています。

1656年の東欧での動乱に西側は介入しませんでした。相互の勢力圏に介入せず全面戦争を避けるのが、核時代の米ソの基本的な発想でした。(『もういちど読む 山川世界史 PLUS ヨーロッパ・アメリカ編』p.286)

とありますが、NATOの東方拡大といった冷戦終結後の勢力圏の変化は別にして、米露の基本的な発想は変わらないでしょう。

ナチスドイツによるチェコスロバキアのズデーテン地方の割譲に対する英仏の宥和政策とナチスドイツのエスカレーションについての記述を読んでいると、ロシアによるよるジョージア紛争、クリミア併合、そしてウクライナ侵攻への流れとの類似性を感じます。

そしてこの感覚は、専門家にもあるようです。

今月より井上寿一学習院大教授の連載が毎日新聞で始まりました。

井上教授は連載の一回目、「露のウクライナ侵攻 民族自決に優先する国際秩序」(4月16日付毎日新聞)において、

ヒトラーのドイツは民族自決原則(被抑圧民族の自立の権利)を領土拡張の正当化に逆用した。プーチン大統領のロシアもこの原則をロシア系住民が多く居住するウクライナ東部への侵攻の正当化に逆用した。

とナチスドイツとロシアの類似性を指摘しつつ、歴史の教訓として、民族自決原則について、

国際秩序の形成は民族自決原則よりも優先する。
この原則の無前提な適用は国際秩序の不安定化につながる。

としています。

学び直しやリスキリングが声高に叫ばれる御時世ではありますが、『もういちど読む 山川世界史 PLUS ヨーロッパ・アメリカ編』は、学び直しには勿論のこと、ウクライナ侵攻の背景にある歴史的文脈を読み解くきっかけに使うにも、よい一冊だと思います。

その他、ウクライナ侵攻をきっかけに、こちらも読み進めています。

こちらについても、後日詳しく紹介できればと思います。



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