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②【伊藤貫の真剣な雑談】「プラトン哲学と国家の独立」文字起こし
政治学の本とか心理学の本とか社会学の本をいくら読んでも、生きる意味とか生きる任務が何かっていうことは絶対出てこないんです。
これはやっぱり哲学と宗教から得られるものでありまして、他のいわゆる社会科学とか人文科学とかいうものをいくら勉強してみても、そういう本をいくら読んでみても何も出てこないということなんですね。
宗教と哲学がはっきりしていない国民っていうのは、価値判断の基準とか、自分たちが大切にしている価値規範は何かという議論が曖昧なまま、目先の政策議論をすることになるわけで、そういう国民はいつも腰がグラグラしていて、自分たちの立脚点で自分たちが大切にしている価値判断にしっかり足を踏まえて長期的な政策を実行するという能力を持てないわけです。
ですから、生きる意味、生きる生き甲斐ですね。それから生きるミッションをきちんと方向性を明瞭にしてくれるのが哲学と宗教で、その後に経済学とか国際政治学とか軍事学とか核戦略理論とかそういう学問レベルのパラダイムで、どのパラダイムを採用するのが一番我々にとって良い方針であるかという議論が出てきて、その後に政策議論が出てくるわけです。
正直に申しまして、過去77年間の日本の左翼の護憲主義、平和主義、人権主義、平等主義というのは、何らかの哲学や宗教に基づいたものではなかったわけですね。なんとなくムード的に平和憲法万歳と。平和が一番いいんだと。人権を大切にしましょうと。それがヒューマニズムだと。
ヒューマニズムといっても、人間の行動には必ず価値観が伴いますから、どのような価値判断が我々にとって最も良きものであって、劣等な価値判断というのはどういうものかという、そういう議論は避けてきてるわけですね。
そういう日本の左翼が、本当の哲学とか宗教観に欠けた議論をしてきたと同時に、保守派も吉田茂以来、日米基軸主義というお題目のもとにアメリカに くっついていって、米軍にずっと占領してもらって、アメリカ文明の猿真似をして、アメリカがグローバリズムをやり出すと我々もグローバリズムをやり出すと。アメリカがネオリベラリズムをやると我々もやると。
で、アメリカは、企業は全て株主の利益のために存在すると。だから従業員の給料をバンバンガンガン下げて株主に対する配当を5倍も6倍も7倍も増やせばそれでいいんだと。 ごく一部の株主が儲かれば従業員の給料は全く上がらなくても、もしくはどんどん下げていっても構わないという株主優先主義の資本主義を日本に押し付けてくると、日本の橋本政権、小泉政権、安倍政権は全部それを実行するわけですね。
過去30年間それを実行してきてどうなったかっていうと、日本の勤労者はどんどん貧しくなって、日本の株式市場は、7割が外国勢、特にアメリカに支配されていると。
日本の株式市場を支配している外国の金融機関とかヘッジファンド業者は自分たちが金儲けすることだけ考えてますから、日本の勤労者の労働コストをどんどん減らせと。 驚いたことに日本政府は、はいわかりました、やりますやりますと言って、外国の金融機関と外国の株主と投資家に都合のいい政策をやってきて、それで日本社会をどんどんどんどん、少なくとも日本の人口の半分の人を貧困化させてきて、それで日本の20~40代の2割か3割の人が、貧しいから結婚できないという状態になってきたわけですね。
で、これも保守派の日米基軸主義、要するに日米基軸なんだから、アメリカの言ってくる経済学のパラダイムでも、核戦略のパラダイムでも、国際政治のパラダイムでも全部鵜呑みにして、全部アメリカの言うままやってればいいんだと。それが最近の小泉政権と安倍政権なわけで、日本の立場は経済的にも外交的にも軍事的にもどんどん悪くなってきたわけです。
でも、自民党だけじゃなくて、外務省も財務省も経産省も防衛省も自衛隊も自分たちの価値判断、それから自分たちの長期的な国益のために何をやればいいのかっていうことを考えるよりも、アメリカ様優先で、とにかくアメリカ様が命令してくることを全部やると。それが小泉政権と安倍政権だったわけで、日本の立場は どんどんどんどん劣化していく。
僕から見ると、やっぱりこれは日本人に、哲学、価値規範と価値判断力というものが欠けている。それから国際政治学、経済学、核戦略理論、軍事学、国際政治史で、どのようなパラダイムを我々は採用すべきかという判断力が欠けている。
だから過去25年間、ずっとアメリカの言いなりになってどんどん貧しくなって、日本の立場というのは、中国と北朝鮮がどんどんどんどん水爆弾頭を増やしてますから、どんどんどんどん悪くなっていくわけですね。
で、アメリカ政府は、アメリカの核の傘があるから大丈夫だって言ってるんですけれども、中国、ロシア、北朝鮮が、日本に核恫喝(ニュークリアブラックメール)をかけてきた場合、アメリカ政府は、中国、北朝鮮、ロシアに、日本を守るための核戦争なんかもちろんやらないわけです。やらないんですよこれは。
やらないことがわかっていて、日本の外務省、防衛省、自衛隊は真正面から反論するということが全くできないんです。 本当にできないんですよあの人たちは。
それはなぜかというと、先ほど言いましたように、哲学レベルの判断力、パラダイムレベルの判断力が全くなくて、とにかくアメリカにくっついていけば大丈夫だろうと、日米基軸だと言ってるから、それで済ませてるから日本の立場はどんどん悪くなって、過去30年間、アメリカにもてあそばれてきたわけです。
これは結局、3つのレベルでものを考えてないということをやってるからこういう羽目になってきてしまったわけです。