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(6)地方経済活性化策vol.3(2023.12改) 

富山県庁が掲げた「チーム富山」のコンセプトは「Buster C.19」製薬製造の話題と共に世界中に広まった。人口100万人の県が短期間で成し得たのも、金森知事のリーダーシップだけではなく、日本の中でも特筆すべき要素を兼ね備えた地域だからだ、と海外メディアがやや脚色気味に伝えていた。

小中学生の学力が日本一である理由は、深海までの深さがある富山湾内の豊富な水産資源と北アルプス水源から流れこむ膨大な量のペットボトル売りするレベルの軟水が、水道水として各家庭に供給されているのと、食料自給率が2割程度しかない日本で200%を超える生産量を誇るので、栄養学的な環境が整っていると強引に纏めていた。
環境的な面で補足すると、富山は持ち家率が日本一で、3世代・4世代が同居もしくは近所に居るので共働き夫婦の子女の面倒を見る環境にある。学力的な話をするなら、後者の要因が高いと思われる。

海外メディアは続ける。
加賀藩から分離独立した富山藩は経済的な特色を生み出すために豊富な水と食料を元手に製薬事業を始め、街道が整備され始めた日本中を薬売り商人が営業して回った。

持ち家率が高い理由は相応の金融資産が各家庭にあるからとも言える。その背景を海外メディアはこう纏めていた。
製薬事業で財を得た商人達は、資金を元手に金融事業を初め、藩内の事業に投資していった。
殿様が明君だった訳ではなく、先見の明がある商人達が集まっていた、商人が主役の藩と言ってもいいだろう。その流れが令和になっても続いており、製薬会社と大手地銀が県内経済を支えている。
更に県民一人一人が有能なので、労働力としてもプラスに作用した。
プルシアンブルー社が富山を拠点と定めた背景には確固たる理由があったと、結ばれていた。

県の広報と観光産業振興課はコロナ明け後の海外旅行者の受け入れの整備を初めてゆく。

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プルシアンブルー社は「Buster C.19」の海外扱い窓口を、シンガポール保険局に一本化した。
日本の厚労省の能力に大きな疑問を抱いていたのが全てと言える。
製薬開発の陣頭指揮に当たった厚労省特別顧問の越山教授が「衛生分野ではアジア最弱レベルにある」と厚労省を断定したのもある。

そもそも、「Go to キャンペーン」を未だに続けており、顧問の越山が中止を要請しても止めようとしない。与党の腐りきった姿勢にブチ切れた越山は、日本記者クラブで日本駐在の海外メディアを前に単独記者会見を行なった。

「旅行業界との癒着と利権に固執し、業界からのキックバックが目的なので止めようとしない。感染拡大を進めているのが政府って、全然笑えないんですけどって揶揄ってみても、中止という選択は全く用意していないんです。呆れました」
内部資料を記者達に配ってぶち撒けてしまう。

「・・・ということで、コロナ特効薬の海外分はシンガポールに、国内での取り纏めは富山県にお願いすることにしました。厚労省が介在しないのは異例ですが、国民を守るためには仕方がありません。
特別顧問の職を辞すると共に、飛ぶ鳥跡を汚しまくってきました。えっと、バスターC.19は重症者個人に提供されますので、厳しい管理下に置かれます。軽症者向けのバスターCも追って年内には生産を始めますが、これも認定病院以外には出しません。つまり、今の感染対策チームとやらの皆さんの病院には絶対に提供しませんし、与党議員の皆さんと厚労省の職員が感染しても薬の提供はしません。横流しして儲けようとするのは間違いありませんから。
未だにPCR検査はダメだ、抗原検査だって言ってる未開人の集まりなんです。それに特効薬の販売価格にも文句言うんですよ。安すぎる、リベート分のカネを乗せろって。ね?腐りきってるんですよ。
話が通じない人達を保護する理由なんか無いよねって思って、尾美のオッサンに往復ビンタかまして来ました。今取材したら、腫れた顔したジジイの顔が撮れますよ。すいません、堪えるの苦手なんです。短気なものですから」

特効薬開発者の越山教授の英語での会見は爆笑の連続となる。軽症者用のバスターCの質問に移ると、日本記者クラブ発のニュースとして世界に拡散してゆく。
同時に厚労省と大臣はコロナ禍で日本が注目されている中で、国際的な信用を失なう。当然、政府にも影響は及ぶ、最大の功労者の一人に見放され、与党には仇となって帰ってきたとも報じていた。
10月下旬となり、沖縄・札幌で感染者が増えたにも関わらず、キャンペーンの継続を国土交通省と国交大臣が発表した後だけに、世界的な笑い者集団の扱いを受けるハメになる。

その点、シンガポールは都市国家で周囲を感染源となりうる国家に囲まれているので一日の長がある。富山の製薬会社での生産数を絶えず伝えて、各国への配送数の調整を要請し、シンガポール保険局の指示で日本の外務省が請負い、世界各国の日本大使館へ発送することになった。​

各国への提供価格もG7,G20,グローバルサウス、発展途上国と4プライス制を取る形にした。​
迅速に決まったように見えるのも、最初から決定事項だった。
ところが、その価格に文句を言い始め、挙げ句の果てにコロナ対策費用から政府はビタ一文出さないと言い始めたので越山はブチ切れた。「日本は発展途上国じゃねえ!」と。
往復ビンタではなく、渾身の右ストレートを顔に叩き込み、メガネを破壊したらしい。

コロナ感染対策の尾美会長は鼻骨骨折と診断され1ヶ月以上の欠席となり、コロナを島国に易易と持ち込むキッカケを作った当事者能力ゼロの老人は、そのまま表舞台から消えていったという。

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モリ達4人が野ブタの狩りに出掛けた別荘では、美帆がPCを広げて幼児用AIで1年生の国語の授業を受けており、由真と理子は猟に行っている4人分の昼食弁当を作っていた。
弁当が出来たらドローンに積んで、運んでいってもらう。同時にメールで要請された午後の狩猟用の弾丸も届ける。

外務省の櫻田詠歌は、モリから借り受けた新型PCのセットアップを終えて、ヘッドホンを付けた。櫻田も驚いたがPCとヘッドホンには懐かしい絵柄とロゴがプリントされていた。

「蓄音機とワンちゃんって、いい組み合わせだよね」と思いながら「Voice of AsiaVison 」をクリックする。インターネットラジオ番組が25チャンネルもあり、櫻田は「J-Pop」を選択する。
自身が28歳の女性だと登録しているので、高校生・大学生の頃に聞いた曲が掛かっていた。
演奏の途中で「Like,or Unlike?」を聞いてくるので、PCにデータが蓄積され、アンライクにした曲は再生されない。使っているうちに好みの曲が選ばれて再生するらしい。

気になったのはアイドルの曲が全く掛からなかった。「AI Recommended」が「ON」になっていた。プログラムを開くと「歌唱力、演奏のレベルが低いものは選ばれず、オフにすると選ばれなかったミュージシャンばかりを取り上げる。判断しているのは全てAIなので、開発メーカーの思惑は全くないので悪しからず」
と注意書きがあった。

櫻田が個人的に嬉しかったのは25チャネルの中に「Deep Forest Channel」を発見した。この時間帯は丁度「Issei selection」のタイムテーブルで「70年代のmy best 10」を放送していた。

「あーヤバイやつだぁ、これ・・」ディープフォレスト私設ファンクラブ会長は「イイモノ」を見つけてしまった。


厚労省特別顧問の越山あかり教授の辞任で日本中が騒がしい頃、プルシアンブルー社は4日連続の新製品発表と、新たな投資の報告をシレッとホームページ上でしていた。

テレビ放映事業参入に続き「Voice of Asia Vison 」なるラジオ番組サイトを新たに立ち上げた。

東南アジアと台湾、日本、英米、欧州等カテゴリー別に音楽とニュース等の25チャンネルの無料サイトとなる。プルシアンブルー製のPC、モバイル、テレビ、オーディオで無料再生となる。
また、同社は日本のJoVC・KENWOOoDホールディングスの株式を55%取得し、PB Electronics社の子会社とすると明かした。
映像をV/ctorブランドで、音響をKENWiOODブランドで統一する。新製品のテレビ、ムービーカメラ、PC、それとPC・モバイル用の内蔵カメラ、ドローン内蔵カメラ、ドライブレコーダー内蔵カメラはVictorブランドで、新製品のカーナビ、ラジカセ、オーディオ等はKENnWOODブランドに分かれる。

社長のサミアはVブランドのスピーカーの愛好家で、前顧問のモリが初めて買ったオーディオがKENW○ODの前身のTRI○だったと明かした。「AIを搭載したテレビとオーディオの新製品を投入して、AsiaVisonと共にブランド再興の狼煙を上げる!​」と動画で述べていた。​

同社の主要な家電品は出揃った。
JoVC・KENWOOoDホールディングスは調理器具のTiger社とも提携しており、その点も投資対象として相応しかったらしい。同社の炊飯器や電気ポット等もネットスーパーの取り扱い商品に加わった。

日本最初のテレビ、ビデオレコーダー、ビデオムービーを作ったブランドの復活劇に特に高齢者は湧いた。「家電製造を志す上で、VHS規格を生み、世界を席巻した名門ブランドを再興せずにはいられない」幹部会の場で熱く語り出した男が居たらしい。「テレビはビク○ーで行くぞ!」と強引に進んだらしい。

国内のカーナビメーカーにとっては穏やかでは居られなかった。プルシアンブルー製のナビがKENWOOoDブランドになるのは衝撃だった。実際に一時的には株価は下がったが、直ぐに持ち直した。プルシアンブルー社がKENW○ODブランド搭載のチューナーボードを、国内の同業他社に限って提供してゆくと追加発表したからだ。Voice of AsiaVisonを日本国内で広める為だった。

V/ctorブランドのテレビにはTVチューナーを標準搭載しない。公共放送の受信料の支払い拒否者を一人でも多く増やすのが目的だった。実際、同社の番組サイトAsiaVisonにはNHxkは加えていない。
ビ○ターTVのシェアが伸びれば公共放送の息の根は止まる。追撃手段として、AsiaVisonに新たに教育チャネルを3つ用意する。
幼児向け、小中学生向け、高校・大学生向けのチャンネルの追加投入を用意していた。

与党ベッタリの「1,4,8」チャンネルを壊滅に追い込むのが目的だった。AsiaVisonの中の富山の民放2局は「6, 5」のキー2局だけとなっていた。

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開催中の国会では厚労省が機能不全に陥り、「顔が異様にデカいだけのホラ吹きメガネ」で知られている無能な厚労大臣が右往左往していた。相も変わらず発言がブレるので、野党は「大臣として不適格」と断定して、問責決議案を提出する。

その前が傑作だった。閣僚であるにも関わらず前田外相が質問に立ったからだ。国土交通大臣と厚生労働大臣を名指しで罵った。
「何故、Go toを止めない?何故、PCR検査はダメなのか、この場ではっきりと言え!
どうせアンタら、賄賂が欲しいだけなんだろう!このクズ共が!」
と議場で叫んで、野党席は拍手喝采していたが、議長には叱られていた。

国会で外相が騒いだ映像を流さない公共放送と民放2社にAsia Visionの国内ニュース番組では「政権に都合の悪いニュースを流さないよう、政府が放送局に圧力を掛けているからだ」と、AIキャスターがタブーだろうが何だろうが憚りもせずにコメントする。このジャブを繰り返し、相手をリングのコーナーにジワジワと追い込もうとしていた。

「厚労省に巣食ったガンを一層せねば、同じことを再び繰り返すだけ」
首相周辺と金森富山県知事が結託したプランでもある。首相は「国際世論と波長を合わせるべきだ。厚労省の判断基準は世界の感染対策と異なるし、Go toキャンペーンも感染拡大を誘引していると私も思う」と野党議員から求められた質問に応えると、後日厚労大臣を更迭して、越山教授に期限付きで厚労大臣の職を任命し、省の改革を要請する。そしてGo to キャンペーンも漸く終わる。同時に、総務省顧問としてアナウンサー出身の大学準教授を首相は招聘する。

石場政権への支援体制、と言うよりも地雷がまた一つ増える。外務省、厚労省、総務省に送り込まれた3人による「社会党の政権ジャック」と、後に呼ばれるようになる。

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米国では2回目の公開討論会が終わった。公判中の前大統領が居なくなった討論会は実に理知的なもので、国民は歓迎していた。

共和党・民主党のどちらの候補者も罵りあったり、相手を罵倒することもなく冷静な討論に徹していた。再び誇らしい国にするための想いは両陣営に共通していた。方法や手段、政策はそれぞれ異なるものの互いの政策を称賛し合う場面も見られた。

討論会終了後は握手しあって、表面上だけであっても互いの健闘を誓いあった。アメリカの人々は安堵していた。両陣営が分断が進む社会に対して明確にNoを突きつけた。その念頭にあったのが、コロナが終息するかもしれないという希望だった。

「明るい日常が戻ったあと、我々は結束すべきだ。共に手をたずさえあって協力し合わねばならない。対立し合っている場合ではない」と、似たような発言を双方がしていた。

討論会終了と同時に、モンタナ州とワイオミング州に自衛隊の慰問に訪れる。討論会の前に日本側との接触はNGと双方で協定を交わしていた。どうしても、コロナ特効薬を早期入手した手柄を争うような映像になってしまうからだ。
両党だけでなく、カナダ側に対しても討論会終了まで自粛して欲しいと要請していた。

カナダ・サチュカワン州に居るモリたちの元へ、米国と足並みを揃えていた首相と閣僚が謝意を伝えに向かった。

両国国境一帯の予報は快晴で、日中は暖かな日差しが注ぐと気象予報士が告げていた。

(つづく)


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