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(7) チーム嘉手納による、タリバン牽制(2024.7改)

アフガニスタン暫定政権と米国の求めに、ビルマが応じる素振りを見せない報を受けて、タリバンが米国を延々と罵り続ける映像を公開する。
タリバンの目的は、敗北を認めたはずの米国が、この期に及んで調停違反に及ぼうとしている状況を国際世論へ訴える為だった。

「我が国の領土に不法介入してから、20年以上もの月日が流れた。米国はその全てのプロセスを放棄して、我が国をビルマに押し付けた上で、自分たちはさっさと逃亡しようとしている。
国民よ、このように愚かで身勝手な国に国土を委ねたのは、今の暫定政府の連中なのだ。
我々はこれ以上、怒りを堪えることが出来ない。よって本日より、暫定政府と軍の連中の粛清を始める。新たな国は米国の犬どもなど一匹たりとも必要としていない。犬狩りの模様は逐次公開するものとする。仮に犬が投降したとしても、結果は同じだ。全員斬首刑とする」
という内容だった。

アフガニスタン駐留米軍を率いるオズワルド中将は悩んでいた。狡猾なタリバンが調停のグレーゾーンを効果的に活用するかの様に、踏み込んできた。タリバン幹部の発言が攻撃的な内容になるに連れ、同国暫定政権から継続支援要請が出ているが、もし、部隊内で新たな死傷者が出ると、政府の運営に支障が出兼ねない。
兵士達の家族は撤退・帰還は確定したと喜んでいる。暫定政府の意向に与すると、何故戦地へ向かわせたと、全米各地でデモや訴訟が起きるだろう。

中将は部隊長を集め、苦悩している状況を吐露する。大半の部隊長が部下の保護を優先したいと発言し、中将は駐留地の警戒態勢を最大級とする様に指示し、「全員で帰国しよう!」と最後に締めた。

オズワルド中将からの意向を聞いたペンタゴンは、最善策だろうと中将の判断を支持する。政治家の都合で送り込み、金が勿体ないからと撤退と決めたのは前大統領だ。そんなアフガニスタンで、これ以上の無用な血を流す必要は無かった。その一方で、米国内の政治家は、政権支持率や自身の投票に影響を齎しかねない事態には即座に反応する。
「暫定政府もアフガニスタン軍も、このままでは犬死ではないか、絶対に放置できん」とビルマ駐留の大使に命令する。
「モリに直訴して、何としても助けて貰え」と。

***

昼食でビールやハイボールや芋焼酎のロックを飲み始めて、アジアビジョン社のカメラマンと照明担当はすっかり酩酊し、今は利用していない執事が居住していた平屋に、バギーとメイドのペアが2人を載せて運んで行った。

「あなた達みたいな可愛い子たちにお酌されたら、普通はああなっちゃうの。今後は気を付けた方がいいわよ」 
小此木瑠依記者がメイド達に向かって言う。

「センセイ以外の男性にお酌する機会は、そんなに無いと思います」
“私達は悪くない”と額に描かれている様な表情で、セーラが言う。
「センセイは普段はもっと飲まれます」 
サラが言うのだが、瑠依は知っていながら無関心を装っていた。

また、瑠依はネット経由で宴席に加わった、ラングーンの邸宅に居る平泉 杏と蜂須賀 翼との距離を保っていた。時折2人が論争を挑んでくるが、政治家の様にのらりくらりと躱して相手にするのを避けていた。

瑠依が取り続けるスタンスに、“大人になったなぁ”とモリは感心しながら、サシャにお代りのキリンビ○ルを頼む。
日本のキ○ンビールがミャンマー時代に工場を進出させており、ビルマでも手に入る○リン工場の存在が、この国を手中に収めた理由だったのでは?と瑠依は真剣に思っていた。

サシャが調理室に入ると、メイドの皆さんが食事中だった。客が離れに運ばれたので、仕事は終わったようなものだ。冷蔵庫からビールを2本、自分達用のキ○ンメッツ・グレープフルーツ果汁入りを取り出して、ペコリと頭を下げて出て行った。サシャが出て行ったのを見計らって、メイド達の会話が再開される。

「アヤノは中学生に見えないよね」
「でも、センセイは手を出していないんでしょ?」
「あんな美人、ほっとかないって、時間の問題だよ」
「残念でしたあ、アヤノも私達も無理なの。日本人男性は、高校生以下の女性とエッチすると逮捕されるんだよ!」
「えーっ、そんなあ!」 突然現れた大ブーメランに一同は卒倒したのだった。

同じく食事中だったメイド長のリタも顔は冷静さを保っていたが、動揺していた。
高田馬場で数週間生活していたのに、日本のビルマ人は誰も教えてくれなかった。それでは、私と妹以外は、全員ダメじゃないかと、脳内では頭を抱える。
"年齢は想定外だった・・・私の選定ミスだ、旦那様にお詫びしよう"と誓うのだった。

サシャが食堂に戻ると、席を移動したのだろう。サラとセーラが、記者と向かい合って座っている。どう見ても2人が元カノに論争を挑んでいる様にサシャには見えた。
「センセイにビール渡したら、あなたもコッチにおいで」と記者に言われる。

「どうしようかな?」と思って先生を見ても、視線を合わせてくれない。既に「"我関せずスイッチ"がON状態」になっているとサシャは判断する。

ペットボトルだけ持って、記者の隣に座る。
サシャは、小此木記者の自分の中の印象を書き換え始めていた。
「絶対いい人だ。センセイが付き合ってた人だもん」と、些か判断基準が脆弱だったが、姉役の2人は内心驚く。かわいい“妹”が敵側に付いてしまったので、サラとセーラは態度を軟化せざるを得なくなる。

「今夜は三人共泊まるといい。君の部屋の用意もしておく」とモリが言って、空き瓶を持って部屋から出て行った。

戻ってきたモリから、3人の宿泊の件を聞いたリアは、直ぐに客間を用意する様にメイド達に伝えると、モリの後を追う。そして日本の法律の話を切り出す。
「不勉強でした、人選ミスをしました、申し訳ありません」と。
「大丈夫だよ。日本の法律はビルマまで及ばない。そんなに心配しなくていい」

「ビルマは構いません。年間滞在日数が多くなるオキナワは日本ですから、法に触れます」

「そもそもの話になるんだけど、何で僕が相手をしなくてはならないんだろう?」

「シャン族の未来の為です!私達は旦那様に縋るしかないのです!」
真剣な顔になったリタが大きな声で言うと、メイドさん達が動きを止めて、2人を見る。
各位の目が、リタと同じ真剣な眼差しなので気後れする。いつの間にかアリアとリタの"仕掛け"に
ハマって居たのだとモリは悟る。
そもそも、邸宅内は全てお任せするしかない、諦めよう・・・

「ええっと、日本の法律そのものの制定理由なんだけど、大人のお金目当てに体を売る女の子が出現したり、女性に相手にされない父親が、自分の娘に手を出すっていうのが凄く増えたんだ。
僕があの子達を力づくで、どうこうするわけじゃないけど、同じ屋根の下で暮らしている人達が双方が同意して行為に及んだ場合は、外には漏れない。僕に酷い事をされた、騙されたって訴えない限り、表に出ることは無い。それは夫婦間で暴力行為があった際と同じだよ。
これも仮の話だけど、僕が沖縄の繁華街で女の子を買っているのをマスコミに目撃されたら、議員はクビ、再犯なら収監されるだろう。
もっとも、その前に君たちから袋叩きに有ってるだろうけどね。さて、これから昼寝しようと思うんだけどさ、どうかな?付き合う?」
腰を引かれて密着し、その目に射抜かれてリタは速攻で頷いた。話しているのはメイド達にも目撃されている。リアはそのまま同衾を選択した。

***

モリのシエスタ、お昼寝中にビルマ駐在の米国大使から電話が有ったが、サラが気の利いた応対をする。
「親類がお見えになっているので折り返しのご連絡が何時になるか、分かりません。それなりの量のお酒を飲んでいるものですから。ご連絡いただいたのに、申し訳ありません・・」 
サラにはシャーマン系統の血が流れているかもしれない。大使の「大至急お会いしたい」という言葉の裏に、事態はそれほど切迫していないイメージがサラの脳裏に浮かんだ。

センセイはマスターとお愉しみなの中で、電話を繋ぐのは相応しくない、サラはそう判断した。

沖縄のインターナショナルスクールにサラは仲間たちと通うのだが、20歳まで、まだ3年も有る。
今朝、マスターから告げられて、最初の相手に選ばれたと舞い上がっていたのに、年齢制限があるとは思わなかった。
なんだかなぁと、むしゃくしゃして足元のゴミ箱をキックしてゴミを散らかしてしまい、慌てて回収したのだった。

***

ゴードンとサミア夫妻の元にも駐日米国大使が再三連絡を求めてくる。
タリバンが態度を硬化させるのは、折込み済だった夫妻は、モリがAIと纏めた、シュミレーションの一つを読み返す。

「悪くない」と2人でほほ笑み会うと、ゴードンは大使館に連絡して、「安全な回線でこの番号に連絡して欲しい」と伝言を要請した。

1分も掛からずに電話が鳴った。

「頼む、一生のお願いだ」
「それ、前にも使ってましたよ?」
「いつ?」
「北朝鮮に行く行かないと言っていた頃です」「あー、そうだった。ダメかぁ・・」
「駄目じゃないです。軍にも伝えてもらいたいんですけど、貴国は自国の戦力をちゃんと把握された方がイイと思いますよ」

「そうは言ってもだね、地域ごとに問題を抱えていて、そうも行かないのだよ」       

「じゃあ、沖縄って今は問題抱えてますかね?百歩譲って、台湾はどうです?」

「おお、チーム嘉手納か!その手が有った!なんだ、探せばあるじゃないかぁ! ありがとう!このカリは必ず返す!」

「その貸しですが、一つくらい実行してくださいよ。ママカリでも、ガリガ○君でも、カリメロでもいいですから」

「後で、この録音を秘書に確認させて、君が言った商品・・だよな?、そいつを送らせる、絶対だ」
「安っす!どれも安い物です、忘れて下さい!」

「私にはどれも皆目見当もつかんが、まぁ贈り物は真面目に考えるよ。貴殿の協力に強く感謝する!よし、私は日本から離れんぞぉ~」

「別に日本に居なくっても、電話するんですよね?管轄外なのに、ビルマにも電話してますよね?」

「分かった、マンザイは後でたっぷりとしようじゃないか。取り急ぎ大統領に連絡する。ゴードン君、本当にありがとう、助かった」

会話がブツッと切れた。スピーカーモードで聞いていたサミアが笑いながら言う。
「でも、彼が大使で良かったよね?」

「ああ、僕たちとしてはね。 日本政府には気の毒な人選だろうけど」

「カリメロの商品なんて、今でも手に入るのかしら?」

「アメリカが総力を挙げて捜索するかもよ。こーんなデッカイぬいぐるみを発見するとか」
「そんなの欲しいの?」
「いや、そんな訳ないだろう・・ホントに出てきたら、共栄党の事務所に転送しよう。米国大使からの記念品だって、メモを付けて」

サミアが腹を抱えて笑っていた。

***

翌日、米軍は動く。
岩国基地から沖縄方面に向かって応援の燃料給油機が飛び立つと、嘉手納基地からも燃料給油機が飛び立った。

嘉手納基地の主力戦闘機F15FX 16機は、燃料給油機が飛び立った3時間後に、プルシアンブルー製UAV 32機を従えて、基地を飛び立った。
高い高度を飛翔して省エネ飛行しながら、南シナ海の公海上を南下。
ベトナム沖で空中給油して、上空飛行の了解を貰ったベトナム、ラオス、ビルマ、インドの領空内を飛んで、アフガニスタンに到達する。

アフガニスタンはプルシアンブルー製AIが使えないので、早期警戒機の様なアンテナを付けた、プルシアンブルー社のAIラック搭載機S2000の3機がチーム嘉手納の作戦を支える。
3機のS2000は実はビルマ空軍機なのだが、どうせ現地入りするのでご愛嬌だ。

カブールの米軍基地に着陸するチーム嘉手納の来訪に、アフガニスタン正規軍の兵士達は帽子を振り回して出迎えた。

「あれって、飛んでく時にやるもんだよな?」
最初に降下体制に入ったパイロットが、着陸待ちで上空を旋回中の僚機のパイロット達に送信する。
「まぁ、どっちでもいいさ。歓迎してくれる奴らが居る方が有り難い。うまい酒、いい女を充てがってくれればなお有難い。そうだろう?兄弟?」

副隊長機ハングリーウルフのパイロットが僚機に答えを求めると、全機がコクピットパネルを叩きだし、同意する。
基地の管制官は少々悩んでから、その通話内容を上司に伝える。
「さすがに女は用意できない・・その音声、暫定政府に転送しちまえ、大至急だ」 
基地司令が管制官に告げた。

***

F15FX16機はさておき、F15に従いながらUAVが多数飛んできたので、タリバンは慌てた。

「ガ○ダムに登場するサイコミュ兵器の様に、あさっての方角から狙われる」 
「2機がペアになって、迎撃ミサイルをものともせず、掻い潜りながら突っ込んでくる」と、あながち間違ってはいない“想像”をしているらしい。

「アフガニスタンではAIは機能しない」と中国は太鼓判を押していたが、カブール上空の飛び方を見ていると、十分脅威だった。

中国大使館員も米軍機の到着を撮影し、本国へ送信した。人民解放軍の分析チームは項垂れる。東アジアで目撃するUAVと、全く同じ動きをしていたからだ。

結局、米軍の駐留経費と予算、米軍が利用していた兵器や弾薬をそのまま残し、全て満額利用出来る条件で、モリとダフィー副大統領兼国防相は画面に映る顔は渋々と、画面に映らない机の下ではサムズアップを交わしており、内心では嬉々として受領する。

ビルマ軍が今回アフガニスタンで利用する兵器の9割がAIを搭載する無人兵器だ。
人件費が抑えられるので、計算上米軍予算の1/3以下、つまり2/3は利益となる。実に美味しい話、ボウズ丸儲け、だ。
ビルマ軍がこのように人件費を削減しながら、従来コストを得て財源として充てているのを、まだ世界は知らない・・ラングーン入りした小此木クリムトン瑠依 記者は、久方ぶりにベッドの上で得た快楽と共に、これらの極秘事項の数々を知った。                    アフガン進出により暴利を慾れると事前に分かっていたビルマ軍は、オーストラリア製の装甲車を大量に発注し、パワードバギーの開発を推進し、タリバン攻略を事前に何度もシュミレーションしながら、十二分の準備を整えていた・・という訳だ。
主たる財源は、ビルマ政府の年間予算における国防費だった。国家予算の2.5%を国防費が占めており、その巨額の軍の予算を、ビルマ軍総司令官とビルマ社会党の顧問でもあるモリに一任されている。
・・軍事費が、人件費を抑えた軍と政党の財源となっているのを小此木記者は知る。それ故に介護施設建設といった福祉施設の建立に乗り出したのだ。

また、概要すら知られていないレッドスター社だが、同社はプルシアンブルー社のAIを活用して、中国資本から手にした事業や製品を改善、改良する、“ビルマ版プルシアンブルー社”に他ならなかった。
とは言え、製造するのが銃やライフル、機関銃製造から始まり、PXやミリタリーバンクなど、軍関係の事業が主流を占めるので、AI兵器の開発・製造・販売をレッドスター社が請け負う事になる・・プルシアンブルー社が表社会を豊かにすれば、レッドスター社は軍事産業に加担する役割となるのかもしれない。

小此木記者は腕の中で寝息を立てて寝ているモリを見て呟く。
「議員ではない男が、この国で巨額資金を得て、この世界で、“何か”を成し遂げようとしている」と思いながら、自分の乳首を宛がう。不思議なもので、眠ったまま口に含んで吸いはじめる。
ヒトのDNAに備わっている本能的なモノや条件反射みたいなものだろう、と小此木は見ていた。
交際時と同じ様に乳を吸い続けるモリを見て、何も変わっていないと思いながら、頬を撫でる。
来年は母乳を飲ませてやろうと思い立ち、我ながらいいアイディアだと自賛する。

乳首を吸っているモリに、より胸を押し付けて、瑠依は独りで興奮していた。  

***

ビルマは、前のタリバン政権時にタリバン兵が破壊したバーミヤンの巨大仏教遺跡の再建を密かに模索していた。
再建プロジェクトを主導するのはプルシアンブルー社とそのグループ企業だ。

子会社のセメント会社の建築用特殊コンクリートを利用して、巨大な立身石仏を復活させる計画は実現可能と見做されると、ズーチー最高顧問が、会見に応じて言及する・・予定でいる。

AIが作成したバーミヤン遺跡の完成予想動画を世界に公表すると、同遺跡を躊躇なく破壊したタリバンに対する非難の声が自ずと高まり、タリバン掃討が容認の方向へ傾く世論形成のキッカケとなる・・かもしれない。
異教徒を一切認めず、世界遺産であろうが容赦なく破壊してしまうイスラム過激派は、排除されて然るべき、といった国際世論に人々を導き、武力制圧の容認を促すのが狙いでもある。     

「もし、タリバンが再度政権を握れば、アフガニスタンは今以上に混沌とした時間軸の中で埋没し続けるだろう」
と、嘗てのノーベル平和賞受賞者であるズーチー女史が用意された台本を見ながら、言及する・・そんな段取りを計画している最中だった。

ビルマの隣国である仏教国のタイとラオスの人々にとっても、バーミヤン遺跡の再建は大歓迎となるはずだ。タリバンと懇意の中国には、金の使い方と世論が善悪をどちらと判断するかを知らしめる一見となる。タリバンを政権の座に据えるという判断が、単なる対米批判が元となった発想に過ぎず、如何に愚かなものかよくよく考えろ、という話だ。
自国の言いなりになると、ポルポト政権を支持・支援し、カンボジアをキリングフィールドに陥れ、南シナ海の権益を確保する為に、歴史的なフィリピン・マレーシア・ベトナムの漁民の漁場を奪い、各国の漁業従事者の生活を脅かす。ベトナム戦争でインドシナを荒廃させ、中南米やフィリピンでバナナプランテーションを強要して、農民の未来を奪った米国と、一体何が違うのか?という話だ。

アフガニスタン政府に日韓比の様に負の政治を植え付けた米国も酷いが、タリバンを対抗馬に立てる中国も大同小異だ。アフガニスタンの民衆を全く視野に入れずに物事を捉えて、自分に都合の良い手段を取っているのは米中に共通している。
所詮は似たもの同士、同じ穴のムジナなのだ。 

ビルマの国際社会への進出という想定外の事態に、中国が戸惑っている内に矢継ぎ早やに策を打ち出す。米国や日本が仕掛けると、中国も例の如く、ギャーギャー騒ぎ出すのだろう。
「ビルマ」という伏兵以下の存在に過ぎなかった国が海外派兵に応じたり、バーミヤン遺跡を再建すると国の最高顧問が言及すれば、面食らうかもしれない。

当初は隠密にする予定だったズーチー最高顧問の「外交」活動を敢えて世間に晒し、中国の出方を伺う方針に転じた。
少々早い気もしたが、習々近平のカウンターパートにズーチー女史を当てて、
「善悪はどちらに?」
「ノーベル賞受賞者と、経済成長の止まった共産国の代表」
「将軍の娘と、地方公務員のセガレ」
「痩せとデブ」
等といった、表向きの両者のステータスの違いを、世論間で競わせてみようとモリは考えていた。           

(つづく)


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