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(9)知らぬ間に確立される"イメージ"の恐さ(2024.4改)

4月末に投票が行われる衆参両院の13の補選に、立候補予定の候補者が出揃いつつある。
日本のメディア各社、そして補選が行われる選挙区地区の地方紙が取材し、記事を書き始めている。
公示前13選挙区のうち、無所属で立候補する前大臣3名と島根2区で共栄党の推薦を受ける議員の衆院4選挙区では、野党候補者が「立候補しても無駄だ」と早々に判断して、候補者擁立を断念した。
公民権停止と辞職もしくは死去した前首相・前外相・前官房長官・前幹事長の地盤を死守するべく、与党が候補者を立てる予定らしいが、4人の勢いの前に、盤石だと言われた保守地盤はとっくに破壊された状態となっている。

賄賂や裏金などの不祥事が発覚して議員辞職した6選挙区の内、5選挙区を杜親子とバンドメンバー3人が候補を表明して、与野党含めた候補者が「討ち死に確定」「選挙資金と時間の無駄」と評される状況にある。
例えば、宮城4区の補選に立候補した岐阜県副知事でバンドリーダーでギターの由布子は、同じ岐阜副知事のバンドメンバーの2人とロックバンドらしくオープンカーで選挙区内を周り、道の駅や市民市場、主要駅を回って即興のライブパフォーマンスを見せる。
バンドの歌姫3人のハーモニーだけで、人々は足を止め聞き入ってしまう。
一応選挙なので演説もするのだが、演説はカットして演奏部の動画がアップされると、世界中で視聴されるので手に終えなくなる。
静岡の選挙区でも同じオープンカーの諸国漫遊のノリだったが、人口数の多過ぎる横浜では、街宣車というよりも開閉型のトレーラー車上での演奏となり、完全にゲリラライブ状態となっていた。

集客方法としては極めて異例な演説会だったのだが、得票率とアルバムの売り上げにもプラスの影響を及ぼすのは間違いないと評価され、他党は候補者擁立を諦めるしかなかった。

それ以外の衆院1,参院3の選挙区が「当確者の居ない選挙区」と形容され、メディアは4箇所の取材を投票日まで報じ続ける方針を掲げている。
また、4つの選挙区の特定の候補者に社会党と共栄党の「推薦」が付いた時点で、選挙戦は事実上終わるとも言われていたが、社会党と共栄党の幹部達は外交と休日で海外に居て、4選挙区に対する見解が分からずにいた。

与党も既存の野党も自党の存続が掛かっているので、4選挙区では候補者が乱立し近年まれに見る激戦区の様相を呈していた。
通常であれば「選挙の顔」として首相の責任問題が問われたりするのだが、今回の選挙に関して言えば、「9選挙区は既に大差で勝つのが確定している。誰にも覆せないレベルになっている」と見做されているのと、与党の支持率は相変わらず低迷しているが、政権に対する支持率は上昇傾向となっている。
首相が主導した北朝鮮への企業進出が始まったのと、あらゆる国内経済指数がプラスに転じ始めているのが評価されたのかもしれない。
首相が少数派閥の出身であり、与党の衰退を招いている原因が、有力だった派閥や議員の不祥事であるからだ。派閥が「悪」で、政府が「善戦中」と見做される今までに無い、歪な傾向となっている。政界の裏話めいたものでは、首相が辞任を考えているといった情報が流れたものの、最近は鳴りを潜めている。

首相周辺のチームが世情の波に迎合した策を打ち出し、評価された面もある。
中国国内の経済指数が悪化すると見た首相官邸のスタッフは、中国向けの海外投資が勢いを失うと読んで、投資を日本に向ける為に海外投資家に対して「日本経済再建策」の紹介を行った。

コロナ関連の死者が2万人に及んでも、海外に比べればコロナの被害と損失が少なかった国であり、いち早く経済活動を再開した国でもある。
コロナ関連費用として用意していた数兆円を、全ての産業支援に廻すと報じたのと、予想以上の北朝鮮進出企業の数の多さに、市場も反応して日本向けの投資が増え始めていた。

選挙で与党が全敗しても衆参の過半数は確保するし、敗れたのは社会党陣営が強すぎる為、対処出来ず仕方がなく、派閥が兎に角悪過ぎる、といった国民感情が透けて見える内閣支持率となっていた。

政府は良しとしても地方政治は最悪で、派閥政治のベースとなる地方での基盤が、共栄党旋風によって寸断され続けている。
各派閥の領袖は地方の選挙戦に出向いて、県会議員、市会議員の議席を一つでも確保しようと躍起になっているのだが、「悪の権化は来るな」「税金ドロボウ」と罵られ、議席を全て共栄党に奪われてしまう。
各県の与党支部にとっては死活問題で、政党として消滅せざるを得ないのではないかという危機感が与党内に蔓延していた。

ーーー

投資の対象となる事業・開発やプロジェクト案件には「イメージ」が何気に重要な位置を占める。

リアルに理解するには、24年の4月の時点で建設の遅れが取り沙汰され、関西ならではのお笑いの世界に突入している、大阪の万博が良いケースだろう。
まず、万国博覧会というプロジェクト自体がオワコンだという事実か有る。それを言い出すと、当時誘致に積極的に動いた自治体と国のセンスの話に及ぶので、建設中の「今」の状況を参考にして語ってみる。

まず、建設資材費の高騰や建設の為のマンパワーが足りない不幸な状況にある様だ。
「間に合わないのではないか」
「マズいのではないか」
と騒ぎ出したのは2023年の後半になってからで、先見性の無い政党と自治体に任せていては「もう無理」となり、国が動き出して居る。
動き出したと言っても、あの程度のオリンピックで自己満足し、コロナでドタバタし続けた国なので大いに心許ない。どうせ五輪と同じで、際限無くカネを注ぎ込み続けるだけで事を済まそうとするだろう。
おまけに十八番の特攻精神を発揮して、中止や延期の選択肢は全く考慮せずに「開催ありき」で突き進んでゆく。
後方を振り返るとパビリオンを出店する国はどこも及び腰で、遥か後方に陣取ってしまい、スタートラインにも立たず、走ろうとしない。

「何故、日本の特攻スピリットに付き合わねばならんのだ?」と通常の思考を持つ者なら、誰もが懐疑的になる。そう思った段階で、予算の枠内で済むように出店計画を見直す。人工島建設による自然破壊と、やはり森林伐採で全く意味の無いリングを作ってしまう万博が、どうなろうが知ったことではない。

近年まれに見るセコさが炸裂した、大成功で終わった東京オリンピックの輝かしいまでの映像は、既に世界中に流れてしまっている。
開会式も閉会式もアジア大会か?と思う程の杜撰さだったし、なんたって選手村のベッドは、ダンボールだった。各国のパビリオンではダンボールを多用するといいだろう。騙されて会場にやってきた日本人もエコだと勘違いするに違いない。

観客の居ない五輪だったから・・というのは言い訳で、海外から観客を集めようものなら、競い合う様にアラ探しをされて、日本のセコさ、ゴタゴタした雑然とした街並みが指摘され続け、キャパオーバーで破綻していただろう。無観客開催は唯一の成功だったと言っても過言ではない。  
そんなこんなで、海外の人々の「イメージ」は「今の」日本のイベントは「あの程度で十分なのだ」という意識や思い込みが働いている。
そもそも大阪の埋立地に行った処で、何があると言うのだろう?前回開催のドバイ万博とも思いっきり比較されてしまうだろう。
「ドバイに旅行に行ったら、万博やってたから、ついでに足を向けてみた」というのが海外客では大半を占めた。
では、本土の大阪に何があるというのか?
食い倒れに道頓堀では、ドバイには遠く及ばない。故に海外客はやって来ない・・おっと危ない危ない。日本人であっても万博に行こうと考える人の方が希少だというレポートまで既に出揃っているではないか。前売り券をパーティー券か国債の様に買わされる企業が可哀想でならない。

そんなレベルの"イメージ"が蔓延しているのだ。
「観客数も期待できない特定の日本人向けのちゃちなパビリオン」で良いので、参加国の威信とかはこの際どうでも良くなる。
あの程度の開会式と閉会式を首都でやってしまう国だ、カネをかける必要は無い!と判断して、チャチなパビリオンが乱立するだろう。
しかも人工島での開催で、国と自治体は万博の後はカジノにするらしいので、万博の成功や収益は大して考えていないに違いない、なのでバンバン改悪し、ペラッペラな薄い内容になる。

今の日本の首相は支持率も低くて先行きは真っ暗。GDPは満身創痍のドイツにまで抜かれて、経済は30年前の水準のままで最悪みたいだし、ポンコツ国に見栄を張る必要はないと誰もが捉えて、史上最悪で最低のイベントで終わるのは確定!となる。
そんな2024年の関西の埋立地と同じ様なネガティブな状況が、物語中の2021年の中国でも起きている。

中国国内の製造業全般・兵器産業の輸出は振るわず、国営民間を問わず全ての企業各社が一斉に下方修正となっている。国内建設業もビルマ政府から欠陥建造物、違法建築と訴えられており、それが原因となり、国内建設も軒並み止まってしまった。
その上、人権問題を軍が起こしてしまう。
ナーバスな訳有物件には、欧米の機関投資家は投資をしない。投資が急停止すると対象物件としては「不向き」となり、一斉に投資を引き上げてしまった。

***

今までの報道は事実とは異なっていたと謝罪する欧米、日本のメディアが相次いでいた。
事実関係を誤って報じた責任を取ってBBCc内では局内の人事と処分が行われる。
また、新たに取材したいと申し入れて、取材陣のタイ入りと雲南省入りを タイ政府と中国政府に求める。TV局も、活動家に騙されていたと事実を知り、名誉挽回を狙ったのだ。     

したり顔で中国政府を批判していた男の動画が、世界中に拡散中だった。男の偽りの善人ヅラが一瞬で崩壊してしまった。本人も女性達をレイプしていたというのだから、情状酌量の余地はなかった。
更なる元凶が中国・人民解放軍だったので、問題は更に根の深い大事件として扱われるようになってゆく。

日本の地方議員の座を退いて、ビルマ政府のオブザーバーとして首都バーマ(旧ネピドー)を滞在中のモリが、BBCcのインタビューに応じる。

中国の外交部と人民解放軍陸軍のナンバー3と、中国とビルマの国境の街で、事件に関して会談したという情報をBBCcは入手していたので、事件に関して中国側とどのようなやり取りがあったのか、ビルマ社会党のオフィスとなっている邸宅を訪問していた。

「中国側は被害者の皆さんに対して、然るべき謝罪と賠償を検討していると言っていました」
とモリは述べる。また、
「ビルマ社会党としても、事件の被害者全員を精神的に保護するプランを計画中です。この種のケアを中国には求められませんので。雲南省内に居る女性達の人数や、元の部族の所在情報等が判明しておりませんので、チェンマイにいる女性達全員をまずは対象に考えています。
例えば出自がラオス領内であってもです。ラオスも共産国で、人権問題を起こしているので任せられないと個人的には考えております。
今はタイ警察の捜査が行われていますので、外交ルートでタイ政府への打診を、ビルマ外務省と相談しています」と述べた。

BBCcは並行してタイ警察とタイの外務省に少数民族事件の取材の要請をし、チェンマイで被害にあった数名の女性から、顔と音声を隠す前提で話を聞くことが出来た。
また、取材に応じてくれた女性達の出身のビルマ内とラオス内の村を訪れ、女性達のビデオメッセージを家族、親族へ見せてご家族たちの不信感を払拭してからインタビューを始める。ビルマ内の村ではモリに泣いて謝意を伝えるご家族の姿が撮れたので、ビルマ社会党に報告する。
小さな村までモリの知名度が浸透している事に、取材陣は驚いたらしい。

タイに渡ってからも観光客と人権問題活動家から被害を受けていた娘の実態を知り、家族はさめざめと泣いていた。
「安全だ、心配しないで欲しい」と活動家の男を信じて見送ったタイでも騙されていたと知り、やるせなさと屈辱のこもった感情を家族は取材陣にぶつける。
何故、娘はここまで貶められなければならないのか、何故、私達少数民族が被害を受けならなければならないのかと激高する。
また、中国・雲南省には捕らわれている女性たちが居る。村人たちは村を訪れた人民解放軍の軍人の名前を上げ、何処で調べたのか、少女たちが捕われている雲南省の場所を明かし、被害者はラオス領内の女性たちも合わせて百人近くに及ぶと暴露する。 

BBCcの取材陣はそこで事件の大きさを知り、バンコクと北京の英国大使館と連絡を取り合って政治的な動きも必要ではないかと伝える。

BBCcは今までの取材内容を纏めた上で、中国外交部に取材を申し入れる。事件の被害者数の実態を知りたい、取材の許可を申請した。

そこまでをドキュメンタリーの「前編」として纏めると、世界中で放映される。
BBCcのメンツの掛かった作品はこうして生まれた。

報道された映像を見て中国側も衝撃を受ける。
早速、外交部のスポークスマンが、本事件では2度目となる謝罪会見をする。   
100人近いという被害者数を改めて確認した上で状況が判明次第報告する・・とした。

百人相当の人数の女性達の自由を奪い、私腹を肥やした軍隊と、犯罪を見抜けなかった軍と政府に投資する機関家や企業など、居るはずもない。

「イメージ作り」簡単の様に見えて、実は難しいものの一つだ。
投資をする際、相手の事業内容等の内面ばかりを捉えるだけでなく、事業を取り巻く環境全体と、周辺との差異を見据えると、投資を求める側の「穴や偽り」が見えてくる。

「事業計画書」にはサービスやソリューション、製品などが順当に市場で伸びてゆくプランが書かれる。
同時に、経営者は組織が円滑に機能し、つまらぬ箇所で躓かないように細かな箇所まで目を光らせねばならない。「規模が大きい」から、「生産数が多い」からと、伸びてゆく需要に対応可能な特徴を掲げる企業もあるだろう。しかし、人類の短い歴史を紐解くだけでも、失敗事例を数多見かける。

中世時代や戦国時代の合戦で人数が多い方が勝つとは限らない。   
己の組織と戦力、そして弱点を把握し、特徴よく理解した上で、弱点を克服し、特徴を活かすアイディアでもって、強敵を破る者が現れる。
その手の長であったり、経営者であれば投資する意欲も生まれよう。
EV車両や太陽光発電パネル、マンション建設など無闇に開発し始めた旬の事業に対して、国が無尽蔵に投資すると、やはり中国には危険な香りを感じてしまう。
需要と供給のバランスは適切なのか、共食いの様にならないかと考えてしまう。
一帯一路や中華覇権主義で拡大をし続ける前提でプランを描いているのなら、需給のバランスを見誤ってしまうだろうと思うのだ。

中国共産党と中華人民共和国にとって、人民解放軍は国作りのベースとなった組織でもあり、国民党と日本軍に打ち勝った映えある完成形態でもある。共産党に次ぐ、中国内の巨大な組織と言ってもいいだろう。      

共産党本部が一子制度の導入を決めた際に、女子の赤子が誕生しても生を得られずに短い命を終える悲しいドラマが中国全土で生まれ、男子の比率が多い人口の国となってしまった。
更に悲しいことに周辺国より金持ちとなった。その為に何が起きるのか、共産党は想像できなかったし、見誤ったのだ。   
周辺国から相手となる女性を金銭で求める様な国なのだから、一子制度は失政だと言わざるを得ない。
娘を奪われた親は、終生中国と共産党を呪うだろうし、永遠に疎まれる対象となり、しっぺ返しの将来と未来がやって来るだろう。
そして先を見通す能力が無い共産党、国内では力の有る組織ほど、簡単で安易な方向へと舵を切ってしまうのもお約束だ。

党の幹部は、最大級の信奉を寄せている組織内部の確認を怠ってしまった。軍を統括する人材を疑いもしなかったのだろう。
モリの様な人物は、どうしても考えてしまう。
人身売買と売春に手を染めていたのは雲南省だけなのか?被害者は百人では済まないのではないか?と。どうしたって、男だらけの人民解放軍を疑ってしまうのだ。

大なり小なり似通った境遇の男達が集まっている、極めてムサクルシイ組織なので。

(つづく)


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