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小林賢太郎さんの『僕がコントや演劇のために考えていること』を読んで

ごめんなさい。間違えてました。

僕は昨日、この記事の中で「小林さんの作品やラーメンズも、近年になりYouTubeであれこれ拝見しただけ」と書きましたが、違いました。

以前、小林賢太郎さんの著書『僕がコントや演劇のために考えていること』を読んでいたのを、すっかり失念していたのです。
この機会に改めて読んだところ、とても面白かったので、読書感想文を書いてみたいと思います。

2年前、この本との出会い

内容や感想をお話しする前に、この本との出会いについて少しだけ。
私事ですが。

僕は2年前(2018年)、演劇の脚本の作り方を学ぶ講座に通っていました。
そこで出会った同級生たちと酒の席で話していて、ラーメンズや小林さんの話になったのを覚えています。
そのとき、「この本が勉強になるよ!ぜひ読んでみて!」といった具合に、教えてもらったのでした。(ありがとう!)

当時、小林さん個人のことはあまり意識していなかったものの、どうやら劇作家という側面もあるらしく。
そこで「勉強のために」「話のネタになるし」と、課題図書のつもりで本書を読んでみることにしたのです。

読んでみると、小林さんのストイックな側面や繊細そうな人柄が見えて、(面白い人だな……)と、劇作家・小林賢太郎にうっすら興味を持ったのでした。

これが、2年前。

蛍光ペンを引きながら、改めて読んだ

イチから読み直しました。
ただただ、面白い!
そのうえ、とてもよくわかる!

細かく章立てされた本文はわかりやすく、小林さんの声が聞こえてきそうな言葉で書かれています。
2年前より細やかに読み進められました。演劇と少し距離が縮まったようで嬉しいです。

電子書籍とは便利なもので、紙の本の何倍も蛍光ペンの線(ハイライト)が引きやすい。
大切にしたい一文には、線を引きながら読んでいきました。

特に響いたポイントでは、特別な赤線も引いています。
それが以下の2箇所。

セリフですべてを書かないようにしています。観客自らが考えるためのヒントにとどめることで「察する楽しさ」を味わってもらいたいのです。

(「セリフはヒント集、答えは書かない」より引用、太字は編集)
エンターテイメントの役割は「人を幸せにする」のではなく、「幸せになろうとする人の手助けをする」ということだと僕は考えています。

(「エンターテイメントの役割は『手助け』」より引用、太字は編集)

演劇やエンターテイメントを押し付けず、何かを探して見つけるように楽しんでほしいという、小林さんの「遊び心」が素敵。
「私だけが見つけた!」みたいな感覚、ドキドキしますよね。

共感できることば、身につまされるエピソード、勉強になる戦略……
たくさん線を引いて、残していきました。

この日が来ると思って書いていたなら

12/1に進退がニュースになった時、小林さんはこのようにコメントをされていました。

実はですね、表舞台での活動は2020年で引退だなって、4、5年前から決めてたんです。
(中略)
ハードルを下げるくらいなら、やらない方がいい。

肩書きから「パフォーマー」をはずしました。 より引用)

小林さんが「僕がコントや演劇のために考えていること」を書かれたのは2016年。
本書を書きながら、2020年の「表舞台引退」を意識していたとしたなら。
読み進める中で、そんなことも考えました。

とある章に、こんな記述が。

規模や状況に関わらず、プロの小林賢太郎として絶対に面白くなくちゃいけない。
(中略)
自分が自分にあった合格ラインは明確にあって、そこを超えられていない作品を人に見られることがとても苦痛なのです。

(「完璧じゃないと気持ち悪い」より引用)

ああ、そうか。と思いました。
ご自身の中で「パフォーマー」としての合格ラインを超えられない、と判断されたのでしょう。それが先のコメントに繋がると思うと……
本書にある言葉の端々に浮かんでくる、小林さんが意識していること。
僕には想像を絶するものでした。

つくる人たちへ薦める一冊

僕はこの本を、エンターテイメントに携わる方々におすすめしたいと思います。演劇仲間には特に!

「面白い」とはなにか、発想や組み立ての方法論、自他との向き合い方、捨てるべき思い込み――
僕のような劇作家の方はもちろん、演出家や役者の方、裏方さんにも気づきのある本だと思います。
様々なセクションを見て、兼任してきた小林さんならではの視点でした。

それから「小林賢太郎ロス」の皆様、ぜひ読んでみてください。
小林さんの考えを、ご自身らしい言葉で書いた本書。とても元気が出る一冊になるはずです。

往年のファンでもなんでもない僕が、こんなことを言うのはおかしな話かもしれませんが……
僕はこの本を読み直したことで、小林賢太郎さんのことを一層面白い人だと思うようになりました。
新しいファンのひとりとして、これからの作品を楽しみに待っていようと思います。

以上が、小林賢太郎 著『僕がコントや演劇のために考えていること』の読書感想文でした。ありがとうございました。
小林さん、引用が多くなってしまったこと、どうかお許しください。

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