セカンドハーフ通信 第104話 冷静さと寛容さ

冷静さと寛容さ

ネットの書き込みを見ていると、過激な言葉で相手を誹謗中傷する内容がときおり見られる。当事者でなくてもいい気持ちはしない。匿名という状況設定がそうさせるのかもしれないが、なぜ自分と違う意見をそれほど排除しようとするのだろうか。

民主主義の根本は多数決といわれるが、少数意見を排除することではない。むしろ成熟した民主主義とは、多様性を受け入れることだ。そのためには、客観的な事実として自分と異なる意見を聞く冷静さと、色々な意見をあえて取り上げる寛容さが必要だ。

ネットが浸透し、多様なメディアで自由な発言ができるようになったことはいいことだと思うが、その前提としてのルールは未だ浸透していない。

ヘイトスピーチが目立つようになっていることも民主主義の成熟化に逆行している流れだ。人を非難することは自己の主張をすることとは異なる。この一線を越えてしまうと物事はおかしな方向に向かう。

日本の外務大臣が隣国の大使とのやり取りで「無礼だ」という言葉を使うのも驚いた。外交において国を代表するものは、どんな状況であっても冷静さと品格を維持してほしい。客観的な第3国にもその状況は見られており、国家のイメージにも影響する。

日本には「沈黙は金」ということわざがあり、物言わぬことについて美徳とされる文化もあった。しかし社会が複雑化し、また国際化が進むと、明確に自分の意見を言うことが必要になってくる。意見を明確にできることは現代社会に生きるうえの重要なコンピテンシーである。同時に多様な意見に対して冷静でかつ寛容なスタンスを保てることが民主主義の成熟度の尺度でもある。


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