最近の若者が”弱い”のはなぜか。
「最近の若い奴らは、どうしてこんなにも子供っぽいんだろうね」
隣のテーブルから、老人の嘆きが聞こえてきた。若い奴ら。僕のことだろうか。確かに自分の未熟さは毎日のように実感している。でも、それは今も昔も変わらないんじゃないか。そんなことを考えていると、老人は続けた。
「俺なんてね、16の時には稼ぎに出てたんだよ。それに、20過ぎた頃には結婚もしてた」
昔の若者は、今よりはるかに社会性を持っている。僕の考えは間違いだった。
「最近の70代ってほんとに元気だよねー」
反対側の隣のテーブルから、今度は中年女性の声が聞こえてきた。今は70代でも働く時代だ。当たり前のように思っていたけれど、最近の高齢者は確かに元気だ。あれ、これって。僕は急にひとつの仮説を思いついた。僕らは社会的な役割を演じているだけなんじゃないか。
人生100年時代とよく言われる。もともと80年くらいだった人生が20年も延長され、街には高齢者があふれている。そして、今の100歳は昔の80歳くらいの感覚になっているのだ。これは単純に高齢者が増えただけではない。社会全体の年齢のバランスが変わったのかもしれない。
ライフステージごとに人生を区切るという考え方がある。僕が最近観た『ミッドサマー』という映画では、こんな区切り方をしていた。人生は春夏秋冬。18歳までの子供時代が春、36歳までの夏は巡礼の旅。そして54歳までの秋が労働の季節で、冬は人々の師となり、72歳で命のサイクルを終える。
この映画では、72歳になると無条件で命を断つことになるのだが、現実世界はそうじゃない。当然100歳まで生きる人が現れる。そうなった時、冬の時代だけ長くするのか。おそらく、そうはならない。
72歳から100歳まで28年、寿命が伸びたとして、春夏秋冬それぞれ7年ずつ延長してみる。子供時代は25歳まで。こうしてみると、最近の若者が子供っぽい理由も、最近の高齢者が若い理由も見えてくる。僕らは全体の中の立ち位置を無意識に読み取り、それを体現しているのだ。寿命が200歳までになれば、50歳までが子供時代になるかもしれないし、60歳までになったら、15歳までが子供時代になるかもしれない。
これはあくまで仮説の話でしかないし、『ミッドサマー』の春夏秋冬の考え方が正しいのかも分からない。ただ、こうやって見てみるとなんか面白いよねっていう想像をするのが楽しい。これを読んでもらって、ちょっとでも面白い考えだと思ってもらえたら、さらに嬉しい。
最後に注意をしておくと、映画『ミッドサマー』はかなり観る人を選ぶ映画だと思う。精神的に安定してる時に観ることをおすすめする。