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🔴いつも大安吉日275 〜新米をいただき豊かさをまた知る〜

【新米をいただき豊かさをまた知る】

そうげんが生まれてから八年
つづけてぽこぽこ全部で四人

夜はこどものペースで部屋の灯りは落ちて、暗く静かになった部屋でぼくもほぼ同時に眠りについていくことがいつもだった
むしろこどもより早いこともあった

もうそういう体のリズムになったと思った

が、ひとりになってすぐに気付いた
普通に夜でも起きていられる
当たり前だけど時間が増えた気がする

でも朝は寒くて布団にいる時間が長くなった
こどももいないし、ひとりのほんの少しの時間のためにストーブにも火はつけない
布団からそのまま作業に向かう朝が多い

いまはこんな感じで、いまがこんな感じだ
たのしくいまを過ごすことしかできない

とりあえず春に向かってどうなっていくのか
どうしていきたいのかと向き合う


🔴米のある豊かさ

今日は早朝雨が一気に降った
いまは止んだけど地面はビショビショだ
少しゆったりした気分を、覚えたてのコーヒーがさらに引き立ててくれる

「こんな朝もいいじゃないか」

米の脱穀は無事に終わり、パンパンな米袋はすべて納屋におさまった
山積みになった米の写真もしっかり撮った
やっぱりここでじわーっとくる

「豊かだ、米があるってのは実に豊かだ」

ぼくは食べるときに籾摺りをする
籾から分かれた玄米は酸化が早いからだ
籾ごと袋に入れると、パンパンに膨らんだ米袋でもひとつあたり約十五キロ
もちろんバラつきはあるし、種類ごと分けるから半端に入った袋もある
籾摺りしたときにくず米として弾かれる米もあるから、あくまでひとつの目安として
わかりやすくまとめて収量をはじき出す

米袋を全部で六十一枚使った
ひとつ十五キロだとして約九百キロ
一俵六十キロだから全部で十五俵
田んぼの広さは正確ではないけど、だいたい三反から三反半くらいだ
だから一反あたりだと五俵弱かな

特別豊作でも不作でもないくらいの収量
まあ無肥料無農薬でぼくがやってきたやり方だとこれくらいなもんだ
もちろんここもまだまだ改善は出来る
植える本数を変えてみたり、植える間隔を変えてみたり、品種でも違いはある
今年は二センチ間隔が狭かった

ちなみに慣行農業だと長野県の平均収量は全国トップレベルの、反あたり十俵弱
ぼくの倍の収量があるんだよね
やり方によっては半分の作付面積でよかったりするし、同じ面積で倍採る方法もあるんだ

ひろーい田んぼをおっきなマシーンを使って、買った肥料をいっぱい撒いて、草取りしなくていいように買った除草剤を田んぼに撒く
植えるのも刈るのも乾かすのも機械頼み
薬は自分の田んぼだけの問題じゃないからぼくは反対だけど、あとはそれぞれでいい
でもそれでキロいくらで米を卸すんだろう?
米を作るのにお金がいくらかかるんだろう?

ぼくは機械も使うけど手も使う
どっちも使えるようにしておく

いまは時代遅れになった機械でも、何人分もの仕事をこなしてくれる
そこでうまれた時間を他のたのしみに使う
そして売るほど作らない
基本は自分たちで食べる量だけ
こっそり自家用の加工をたのしむだけ

余裕があって需用があれば売ることもするけど、そのときは加工して売る
餅やポン菓子、焼きおむすびや糀などなど

そっちの方が単価は上がるし、ぼくの物語をたくさんのせることも出来て、必要なみんなにも作るぼくにもいい気がするんだ
そこでつながったみんなとそのうち米作りなんて出来たら、ぼくがいまやってることの意味もまた深く濃くなっていく

今年の反省やら流れをしっかり見直して、来年もまた自家用の米に埋もれたい


🔴豆のある豊かさ

昼間は小僧たちと最後の大豆の脱穀と、唐箕(とうみ)を使った選別作業をした
残り少なくなった大豆をうちに持ち帰り、また棒でバンバン叩いてサヤを割っていく

枯れ枝やサヤと大豆の混ざったものを、箕ですくって唐箕にかけていく

そうげんも何度か経験していて覚えてる
グルグル回して風を起こしてゴミを飛ばす
重い豆は手前から落ちてくる
一度にはきれいに分けられないから、残ったサヤを手で砕いてまた唐箕にかける
最終的にはだいたい大豆だけになってくる

でもここからが大変
冬にストーブのついた部屋でずっとやる作業
くず大豆や虫食い大豆との選別手作業
ひと粒ひと粒とりこぼしのないように
性格的に完璧にやりたくなってしまう
でもね、そっちのほうが大豆全体の質も長持ちするってのがぼくの経験上の答え
春までずっとやることになるんだ

鹿に三分の二を喰われたけどこれだけ採れた
全部スムーズにいってたら大変だったな

まだ全部終わってはいないけど、大豆も思いのほか収量があるようだ
たぶん全部で八十キロくらいは採れそうか
味噌と醤油用には困らなそうだ
あとは日々の納豆と餅つきのときのきな粉

米と豆が山積みにある
保存の出来る自分で種から蒔いて育てた安全安心のうまいものがたくさんある
「この豊かさと安心感」

来年はもっとしっかり準備ができる
やりたい人がやれる場所をつくりたい


気になる人は声かけてね
ぼくひとりじゃイメージできる範囲がまだ狭いから、さっそくいっしょにやりたいんだ
冬の間にできる準備もたくさんあるからさ

🔴農ある暮らし

夜に新米を頂いたんだ
玄米はたしかに味わって食うと甘みもあってうまいんだけど、白米で「うめえー」って言って食いたくて、食べる分だけ精米してみた
去年米を作れなかったから、久しぶりの自分で作った新米だったんだ

土鍋と薪と湧き水で炊き上げる
フタを取ると「ブワッ」と湯気があがる
「ぴっかぴかの真っ白な米だあ」

「美味すぎるっ」
おかずなんて何もなかったけど、米だけでもまったく問題なく食いまくれる
「食べ過ぎはよくないよ」なんてことは一切気にしないことにして、ぼくはおかわりも一気にきれいにたいらげてしまった

久しぶりの新米だったから米の水加減が多くなってしまったけど、それもまた問題なし
今度は玄米でじっくり味わってみるし、違う品種との食べ比べもしてみたいな

いままで籾摺りしたてなら古米でもなんら変わらず「うまいっ」て思ったけど、どうやらそれはいつの間にか頭に刷り込んだ情報だった
かえって熟成されるくらいに思ってたもん

ぜんっぜんちがった
「新米はやっぱり最高だっ」
種蒔きからのいろんな苦労や感動
田植えや稲刈りのお祭りの思い出
ひと粒ひと粒をつくりあげたのは、この大自然とぼくらのイノチを使った時間

「ありがたくって感謝しかないです」
「うまいっうまいっ」と一気に食ったけど、そこはほんとうに噛み締めてました

イノチを使って作ったものが、またぼくらのイノチになっていく巡り

「自分の食べるものをつくる農の暮らし」
これがとってもシンプルで、やっぱり間違いないことなんだよな
見える範囲で完結してるから間違いないようがどこにもないんだよね

「やっぱこれだね」

ではみなさん今日もめでたいいちにちを

五穀豊穰 子孫繁栄
大安吉日 さかいひろし

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