講演会②工藤勇一先生「かわりゆく じだいと ともにある まなび」その1
講演会② オンライン講演会
かわりゆく じだいと ともにある まなび
日時:10月21日 9時半~11時半
場所:あけぼのパーク大会議室
講師:工藤勇一先生(横浜創英中学・高等学校 校長)
進行:多賀町立文化財センター 音田直記
進行 音田 直記:
地域のあり方創出事業の講演会2回目、本日は、地域と学校の当たり前を考えるというテーマで、横浜創英中学高等学校 校長工藤勇一先生にご講演いただきます。
最初に、多賀町まちづくりネットワーク会長の辻利樹より挨拶をさせていただきます。お願いします。
多賀町まちづくりネットワーク会長 辻利樹 挨拶
皆さん、おはようございます。多賀町まちづくりネットワーク代表しています辻と申します。多賀町では、文化財を活用した、まちづくりを、推進しておりまして、 その活動の一環として、学校教育との連携を図りたいということで、工藤先生の前に、山口先生に講演いただきまして、今日は、2回目となります。
こんなにたくさんお集まりいただけると思ってなかったので。皆さんと一緒に、工藤先生のお話を伺って、色んなこと考えていきたいと思います。よろしくお願いします。
進行:
本日は、会場とオンラインで、100人の方の参加ありがとうございます。私、工藤先生の大ファンでして、多分皆さんご存じだと思いますが、滋賀県で初めての講演会になります。
2月7日に長浜の教育センターで講演会をして、工藤先生に来ていただくということですが、私ども、学校と関係のない部署ですけれども、文化財のことをやるのにあたって、地域と学校との関係について、色々と取り組みをしていきたいという、思いが膨らみまして、本来なら、こんな所に来ていただけるような先生ではないですが、その辺のところを組んでいただきまして、本日、工藤先生に、オンラインでお願いすることになりました。
また後で、質問等を受けさせていただこうと思います。お手元にお配りしていますQRコードを読み込んでいただき、また、記入できる用紙も設けております。オンラインの方にも、同じようにご質問いただけるようにしておりますので、よろしくお願いいたします。それでは、工藤先生、よろしくお願いします。
地域と学校のあたり前を考える ~主体性と当事者意識~
工藤勇一先生:
皆さん、おはようございます。よろしくお願いします。
地域の皆さんが多いって、お話を聞いているので、地域と学校って言いますか、社会全体ですね。当たり前を、見直していきたいって思っています。キーワードとして、主体性という言葉と、当事者意識という言葉をあげさせてもらいました。お話の中で、その意味がだんだん分かっていただけと思っています。
日本の学校教育
私たちは勘違いしている
いじめ・不登校・働き方改革・・・など
すべての問題はここから
地域の皆さんと一緒に考えていきたいのは、大事なのは学校教育です。もしかすると、僕らは学校教育のあり方を、勘違いしているかもしれない。そんなテーマで今日お話をしていこうと思います。
日本全国、いじめとか不登校とか、また、教員の立場から行くと、働き方改革とか、もう教員のなり手がいないとかですね。問題が今噴き出しています。
僕は全ての問題は、勘違いから起こっていると思うんですね。この勘違いを正していくと、実は様々な問題が多分、劇的に減少していくと思っています。その仕組みについて、なぜそうなるのかということについて、お話をしていこうと思います。そのキーワードとなるのが、今日のテーマにした、主体性ですね。
進んで何かをやるっていうことだとか、また、社会の当事者として、こう生きていく、自分ごとにしていくということですね。
一番大切なものを失っている
主体性・当事者意識
もう待ったなし
これが、どうも、学校教育の中で、育てられない、育ててないってことですね。このことが、日本社会全体の問題に、繋がっている、そんな話になります。
僕のイメージから言ったら、日本社会は、もう待ったなしで、教育改革を本当は進めなきゃいけない時に来ていると思うんですね。
自己紹介・学校紹介
横花創英中高が目指す教育
Agency 生徒主体の学び・聖と主体の運営
実学教育 社会とのリアルなつながり
自己紹介をすると、今、僕がいるのは、横浜のちょっと高台にある、横浜創英中学、高等学校っていう学校です。4階ぐらいに上ると、窓からベイブリッジが見えたり、 船の汽笛が時々聞こえたり、そんな学校ですね。歴史的には84年目になります。
全校生徒は、中学、高校合わせて大体1600人ぐらいです。
主に高校が中心でずっと成り立ってきた学校なんです。多分、滋賀県も同じだと思うんですが、皆さん、県立希望ですよね。高校進学は。 大体が県立高校を志望する方が多くて、神奈川も全く同じで、うちの学校は、全校生徒はたくさんいるんですけど、基本的には、県立高校の併願校とした位置付けで、2割ぐらいの子供たちが第1希望で入ってきて、後の8割は、 残念ながら県立高校を失敗して入ってくるお子さんが大半であるとい学校像です。大体80年ぐらいそんな動きをしていました。
僕はこの学校を預かって4年目なんですけど、学校のあるべき姿をある意味では180度、真逆に転換をしています。4年前までのうちの学校の姿は、手取り足取りもう本当にいろんなサービスがあります。例えば、特別進学コースなんていうのは、毎日毎日7時間の授業があって、 時々、1時間目の前に0時間目をやるっていう。で、部活動もとても強くて、 全国レベルの部活がたくさんあります。今年もバトン部などは全国優勝しましたし。ダンス部とか、吹奏楽部も200人を超えます。サッカー部とか、ハンドボールとか、 ほんと、全国レベルの部活がたくさんあるんですね。
本当、手取り足取りちょうど、4年ぐらい前に東大の現役の合格生が出たぐらいの、そんな、進学実績も持った、学校です。
交通の便もいいってこともあって、生徒数には、困ったことがない、経営的には、とても安定している学校です。
中学については、20年前に立ち上がったんですけど、高校の姿とは、だいぶ違っていて、高校は、大体、1学年が12クラスあるんですね。でも、中学は1学年が大体2学級、本当に小規模で、 4年前までは、80人定員をまず超えることがない。ずっと、立ち上がってから全く人気のない、クラスも埋まらないような学校でした。よくて60人ですかね、80人定員のところに60人入るぐらいの学校です。
中学と高校を、教育のあるべき姿を、大転換しているんですけど、 簡単に言うと、今までのサービスみたいなものを辞めた学校です。
手取り足取りではなくて、支援の仕方を全く変えたんですね。
成績を上げるために無理やり勉強させるとか、そういう方法ではなくて、自分で勉強したくなるような仕掛けを作っていくそういう学校の姿に変えています。この春2月の受験で、まず高校は、第1希望が今50パーセント超えています。多分来年の受験はもっと超えて70パーセントぐらいまで、第一希望になるんじゃないかなと今見込んでいます。
中学については、全く人気のない学校だったんですけど、たった2クラスも埋まらなかったのに、今は4クラス募集をしています。
たった3年ぐらいですね、4クラス募集をして。これ、手前味噌なんですけど、東京、埼玉、千葉、神奈川、1都3県、大体、私立の中学だけでも300校もあるんですね。 東京に大半があるんですけど、ま、神奈川にもたくさんあるんですけど。この300校中、実はこの春の入試は、 受験倍率は300校中5番、6番でした。そのぐらい人気が上がっています。偏差値もあっという間に上がってしまって、たった2年ぐらいで偏差値が10いくつ上がって、 もう真ん中より上の学校になってしまいましたね。ですから、4年前まではもう1番の底辺校って言ったらいいんでしょうか、それが、大人気になっていると。
なんでそうなのかっていうのは、今、少しお話した通りですね。サービスの仕方を変えた。支援の仕方を変えた感じですかね。
左側に、エージェンシーってありますけど、ちょっと、エージェンシーっていう言葉は、難しいので、言い換えると、子供主体の学校運営とか、子供主体の学びに変えている。可能な限り、リアルな教育をするっていうので、企業とか、大学とか、繋がった教育をしています。
麴町中学校で話題になった取組み
・定期考査・宿題の廃止(4年目~)
・固定担任制の廃止(4年目~)
・服装・頭髪指導の廃止(1~6年目)
・数学での一斉指導全廃(5年目~)
書籍『学校のあたり前をやめた。』生徒も教師も変わる!公立名門中学校長の改革
4年前までいた、麹町中学校で校長をしました。
メディアで取り上げられるのは、宿題を全くなくしたとか、担任性を廃止して学年ごとに担任制をとるんですけど、全ての子供を、教員たちチームで、みんなで見ていくと。子供、保護者の立場から行くと、相談したい先生を自由に選べるんですね。逆指名ができる。進路相談も、どんなものでも、 必ず逆指名をする、自由に選べるってことですね。校則もほぼゼロにしました。
それから、数学の授業だけですが、教室で先生が一斉に授業をするスタイルを、3年間、全部やめちゃいました。
この辺も後でお話をしていきます。実は、この4つだけじゃなくて、 6年間で多分400項目から500項目ぐらいですかね、いろんな改善をしました。
朝の打ち合わせの仕方、職員会議の仕方、例えば、そうですね、PTAのあり方とか、もう山ほどですね。もう数、数えきれないぐらい、改善をしたんですけど、それのほぼ全てが僕のトップダウンではありません。
みんなで話し合って決めていくっていう、ます全員を当事者に巻き込んでいくっていうんですかね、 みんな考え方が違うのに、なぜ改革ができたのかってことをとても不思議がる人がいます。でも、これって地域も全く同じですよね。
地域も考え方がみんな違います。ですから、簡単に結論でないですよね。でも、結論を出す方法があるんですね。 今日はそのお話をしていこうと思います。
今日の話は大きく4つになります。
前半2つが、なんで日本中、学校改革って言っているのに全然うまくいかないのか。
この30年、40年、不登校対策、いじめ対策とか山ほどやってきているのに、どんどん悪化していると。やればやるほど、悪化している。
なんかおかしいわけですね。日本の学校教育、その教育施策も変ですよね。
それを、解決するにはどうするのか。なんでうまくいってないか。どうやって解決するのか。そういう話を前半でします。
後半は、 もし、皆さんが、子供の親っていう立場であれば、明日から、子育てに使える方法とか、 または、今日、学校の先生がいらっしゃるんであれば、学校の先生が、子どもたちに指導を変える方法とか、具体例についてお話しします。
これは、脳科学を使った方法で、お話をしていこうと思います。最後、4つ目になるのは、さっきお話をした、 なんで考え方が違う人が合意できるのか、その対話の方法です。
実は、日本の学校教育では、 これを教えることをずっとやってきていません。というか、未だに言語化されたことがないんですね。
ヨーロッパは戦後から始めたので、70年以上の歴史があるんですが、日本は実はこの対話の方法がとても下手なんです。
今日は、その対話の方法もお話をしていこうと思っています。
1 社会の変化と教育のあるべき姿
科学技術が急激に進展している
ビッグデーターインターネット・ロボテイクス・AI(人工知能)
世界は急成長している
まずは、今、日本、それから、世界が抱えている状況っていうのかな、世界の社会の状況に伴って、本当は、教育はどうあらねばいけないのか、変えなきゃいけないのか。なんで僕が待ったなしと言っているのか、 その辺のお話から行こうと思います。
言うまでもなく科学技術がものすごく進んでいます。
インターネットの普及、ロボットもそうですね。残念ながら、日本は、20年ぐらい前までは、世界のトップを走っていました。デジタル化もそうです。日本の製品が世界を制覇していた時代があります。
実はそうじゃないですよね。残念ながら全く違います。デジタル化においては先進国で今最低になっちゃいましたし、 もしかすると見方を変えればアフリカよりも遅れています。アフリカなどは銀行がないとかインフラ整備ができてないので、一気にデジタル化が進みました。
ジャングルに住んでいる方々でさえ、スマホを持ってデジタルで品物を買いますし、 お金も紙幣を使わないです。もう電子決済ですね。日本はこういうこと考えると、いつの間にか、世界の中で取り残された国になってしまったってことです。
そのせいで、いろんな企業が競争力を失っているのが現実です。さらに最近出てきたのが、AIです。
AIもずいぶん騒がれていますし、chat GPT なんかは、仕事に使っています。
AIについても、日本の研究はとても遅れていて、もし、これが本当に遅れたままになってしまうと、さらに、日本の企業は競争力を失ったことになる。そんな時代です。世界は、この30年ぐらいで急激に進化しています。中国は言うまでもないんですけど、これ、どちらの街かわかりますかね。
中国 約14億人
香港の近くにある深圳っていう町です。30年前は 深圳という町は30万人ぐらいの都市だったそうです。まあ、30万って結構大きいですよね。
でも30年経った今は、この深圳の周辺を合わせると大体1700万人の人口がいます。
30万人だった都市が、たった30年間で1700万、つまり東京をしのぐような大都市に変わっている。
どんな意味合いがある都市かというと、ITのメッカで。 皆さん、シリコンバレーって聞いたことありますよね。アメリカのIT企業が集まる場所ですね。
深圳の1週間はアメリカのシリコンバレーの1年って言われるぐらい、その進化のスピードはあのアメリカのシリコンバレーをはるかにしのぐ勢いです。世界中のIT企業がここに集まって、様々な開発をしている場所です。
インド 約14億人
今のは、中国ですけど、これはインドの姿ですね。インドも大発展をしています。世界で今最も景気のいい国じゃないでしょうか。平均年齢は29歳って言いますから、まだまだ成長します。経済大国になった中国を多分近い将来経済で抜く。もう本当に目の前に来ていると言われています。
ベトナム1億人
これはベトナムですね。 ベトナムもインドと同じように世界で最も景気のいい国のうちの1つですね。どんどん経済発展している。ベトナムの中間管理職、課長部長クラスは、日本の大企業の課長部部長クラスをしのいでいるって言われています。日本の課長部長クラスの年収が、大体1600万から1800万ぐらいだとすると、ベトナムはもう2000万超えているって言われています。ですからですからベトナムに優秀な人材が流出するなんてことも起きています。
タイ7000万人
これはタイです。タイ7000万人ですけど、 東南アジアの中心的な存在です。世界中から、タイを目がけて進出しいてる。日本もそうですね。
今、アジアを中心に見てもらったんですが、中東も、それから、アフリカも大発展をしています。
アフリカっていうと貧しくて、そこら中飢餓があってみたいな勝手なイメージを我々は持っているんですが、この30年でものすごい様変わりをしています。
このようなビル群がそこら中にあります。アフリカも今急激に成長していると。
日本は、なかなかうまくいかないですよね。
ビッグマックの価格(2023年1月時点)
1位 スイス 944円
6位 アメリカ 697円
30位 韓国 516円
31位 タイ 507円
36位 中国 460円
41位 日本 410円
43位 ベトナム 399円
54位 インドネシア 306円
*2000年の時点では日本は5位だった。賃金が上がらない
よく池上彰さんの番組で、ビッグマックの値段が取り上げられるんですけど、これはですね、今年の1月の時点でのマクドナルドのビッグマックの値段を示しているものです。
日本のビッグマックの値段は、世界54か国中41番目。値段は410円です。
本場のアメリカが約700円で、オーストラリアが665円と。その下にいろんな国をピックアップしてみたんですけど、 ブラジル、メキシコ、韓国対中国で、実は去年まではベトナムの方が上でした。日本の方が安かったんですね。
ちょっと不思議な感じしますよね。
何を言いたいかっていうと、日本はこの30年間、物価が上がらなかったんですね。ですから、ものは安い。でも、世界はどんどん変化している。
いつの間にか日本の物価が世界と比べて安くなって、そんな感じですよね。
これ何を示しているかと言うと、働く人たちの賃金が安いっていうことを示しています。
この値段っていうのは、人件費と相関関係があります。
だから、日本の人件費と世界の人件費がだいぶずれてきた。例えばスイスは944円、 スイスの1時間あたりの最低賃金が3700円だそうです。
アメリカも2000円を超えていますし、オーストラリアも当然2000円を超えています。
日本はいつの間にか、労働者の賃金が上がらない国になっていた。
株価時価総額ランキング
【1989年】
世界上位20社中の日本企業 14社
(1位NTT 2位日本興業銀行 3位住友銀行)
世界上位50社中の日本企業数 32社
(11位 トヨタ)
【2023年】
世界上位20社中の日本企業 0社
(1位アップル 2位マイクロソフト 3位サウジアラムコ)
世界上位50社中の日本企業数 1社
これは、1989年、平成元年の頃の世界の時価総額、企業の株式時価総額のランキングを示したものですけど、上の1989年、平成元年の時には、日本企業は世界50社中32社 、20社に絞ると、なんと14社って、アメリカを凌いでいたっていう時代があるわけです。それから3、4年経って、 日本は50社にようやく、トヨタが残っているだけってことですね。
そんな状態になってしまっているんですけど、いつこれが改善するんだろうかって言った時に、 我々はどうしても頭の中に入れとかなきゃいけない事実があります。
急激な人口減少(グラフ) 2004年以降急激な人口減少と高齢化
明治維新~2004年(3000万人~12784万人がピーク)(緑色で表す)
2004年~(ピンク色で表す)
日本の過去からの人口の推移を示したものなんですけど、どうもここに大きな山があって、ちょっと変ですよね。ちょっと色つけてみますね。こうやって色を付けてみるとわかりやすいと思うんですけど、日本という国は明治維新から急激に人口が増えています。
この人口の増え具合っていうのは、世界の人口爆発に匹敵するぐらいの人口の増加ですね。わずか3000万人ぐらいだった人口が、130年後、2004年の時には頂点で約1億3000万近くですね。
130年間に1億人ぐらい増えた国だってことですね。これ計算してみると、毎年70万人ずつ増えているんですね。 毎年70万増えている国が、どんな発展をしたか、もう皆さんお分かりですよね。どんどん人口が増えるわけですから。日本ってものづくり大国って言われたんですけど、世界に物を売っている大国みたいなイメージを持っている方が多いと思うんですが、ま、それはもちろん正解ですよ。でも、 実は国内消費がどんどん膨らんだ国ってことです。平均年齢もとても若くて、20代30代だった頃の、緑の時代です。
作っても作っても国内で消費されていきます。どんどん物が売れるんですね。若い人たちが増えていくってことは、物を買ってくれるっていうことです。購買力がすごく上がります。誰かが成功した仕事を真似しても、当然勝てたんですね。ちっちゃな町工場が大企業になれた時代。
これが緑の時代です。ですから、日本はとても教育が優れていたから発展したと。まあ、もちろんそれは、あの、正解ですね。
でも、実は人口が、急激に増えたっていうのが、日本が発展する大きな理由だったってことです。
今のベトナムとか、インドとか見れば、まさにそういう国だってことです。2004年を頂点として、日本の人口は急激にどんどん今減っています。今、毎年80万人、 大体山梨県と同じぐらいの人口が減っていると言われています。人口が減るだけではなくて、高齢化がこれに伴っているために、人口が減っていく。
従来のビジネスモデルが通用しない
従来の教育モデルも
つまり、消費が縮小していくわけです。ものが売れない時代です。ものは作っても作っても国内で売れなくなります。
それだけじゃなく、高齢者が多い、日本の平均年齢は49歳って言われています。もうほとんど50歳ですね。
高齢者の場合は、日本の社会福祉制度だと、どうしても、お金を貯めたがるんです。日本の国の借金は1000兆円超えているって言われていますけど、 実は日本中のお年寄りたちが持っているお金は2000兆円ぐらいあると言われています。でも、そのお金が全然市場に出てこない。
そして世界に目を向ける!
例えば、 北欧のフィンランドとかスウェーデンとか、ああいった国々って、消費税がとても高くて、25パーセントぐらい取るんだそうです。
ただし、社会福祉制度がとても成熟していて、お年寄りは基本的にお金を持たなくていいんですよ。全部国が面倒見てくれるので。その、年金のようなものを、みんなが使いまくりますね。
お年寄りはもう自分の子供たちに財産を残す必要がないので、みんなが老後を楽しむわけですね。病気になっても。つまり、お年寄りも25パーセントの消費税を払っているので、実は、経済がきちんと回るってことです。日本は、この緑の時代からピンクの時代の急転換に、 今、政治も、経済もついてってないってことです。特に政治は、緑の時代は税収がどんどん相対的に増えていく。ですから、お金も使えるし、使っても税収が増えた時代。
でも、ピンクの時代になって、税収がこれからどんどん減っていく時代ですよ。
地方に行くと人がいないので、物が売れないし、僕の、田舎なんか、山形の鶴岡ですけど、大体15万人ぐらいいるんですけど、この10数年で2万人ぐらい減っているんです。もう目抜き通りはシャッター街ですよ。
そんな状態になっているってことです。じゃあ、この時代どうしていけばいいのかってことですけど、 ヨーロッパなんかはこんなに急激に変化してないんですが、やっぱりきちんと、こう社会が対応していたんです。
どういうことかというと、この 緑の時代のビジネスモデルを今も続けようとすると、やっぱ国が成り立たない、経済が成り立たない。つまり、 誰かが成功した仕事を真似をしようとすると、その会社よりも安く売らなきゃいけないことになるので、質が良くて安いものを作ろうとする。そうすると、どうしても人件費を上げることができないために労働環境が悪化すると。
そうすると、働いている人の賃金が安いので購買力が下がる、この負のスパイラルに入りますね。ですから、地域を活性化していくってことは、 この商売ではない商売を立ち上げることがとても重要。
ヨーロッパなんかは安売り競争をしないです。 ものに価値をつけて価値があるものをみんなで買う、高いものでも買うっていうような文化です。またはもう1つ、 国内で、ものを売ろうとするんではなくて、これもヨーロッパは、もっと先にやっていますけど、初めから
世界に物を売るってことです。ですから、地方で成功しているところっていうのは、 ものを作ったものを、いきなり日本の中じゃなくて、外にものを売ってこうとする。そういうことがとても大事な時代になるわけです。
育てる人材像も変わった!
ひとつの会社に就職して定年まで勤めることなどほぼありえない時代に!
起業・転職・副業・兼業・特別な技能
教育モデルも、ものすごく変わってくるはずです。緑の時代は、ある種、学歴社会にならざるを得なかったんですね。
とても乱暴な言い方をすると、会社はみんな発展をしていったんです。
緑の時代っていうのは、 例えば、商業高校出て、工業校で出て、資格をつけて会社に入ると、その会社は基本的にずっと定年退職まで大きくなったんですね。そういう時代です。今、ピンクの時代は。どんな大企業でさえも、この変化についていけなければ、あっという間に競争力を失ってしまう時代ですから、
我々が緑の時代に言っていた、いい会社に入れて良かったねとか、いい大学入れたね、みたいなものはもう通用しないんですよ。
我々が助言した会社が、自分たちの子供にとって、本当に将来になるかは全くわからない時代ですね。
1つの会社に就職して定年まで勤めるモデル、教育モデルはもう通用しない時代だってこと。
自分の頭で考える人材が必要なのに・・・
常に自分で会社を起こしたり、転職をしたり、またはいくつも仕事を合わせ持ったり、特別な技能を身につけて、それを高く売ったりってことを考える子供たちでなければいけなかった。緑の時代は、みんなと一緒でよかったんですよ。
みんなと一緒でも、ちゃんと就職さえすればなんとかなった。挨拶ができて、協力ができて、忍耐強かったらなんとでもなった時代ですね。
このモデルがもう全く通用しない時代を今迎えていて、この時代は、もう当分終わらないってことです。
今の日本のいびつな人口モデルが、きちんと落ち着くまで、 子供たちの時代は、その時代が続くってことです。自分の頭で考えるそういう、人材が必要な時です。
ある意味で言ったら、今の子供たちはとてもチャンスがあるってことです。暗い話じゃないんですよ。
常に自分として何をするか、そのことを考えていくと、面白いビジネスが生まれていくから、 オンリーワンでいたいんですね。にもかかわらず、今の日本の若者たちの姿というのは、 残念ながらそれとは正反対に育っています。
若者の「国や社会に対する意識」日本財団「18歳意識調査」から2019・11
・自分を大人だと思う 29%
・自分は責任がある社会の一員だと思う 44.8%
・将来の夢を持っている 60.1%
・自分で国や社会を変えられると思う 18.3%
・自分の国に解決したい社会課題がある 46.4%
・社会課題について家族や友人など周りの人と積極的に議論している27.7%
日本はすべての項目で最下位
この、日本財団の調査というのは、教育界だけじゃなくて、経済界に、ものすごくショックを与えました。 これは、日本財団が調査した、世界9カ国の若者、主に高校3年生、18歳意識調査ってありますけど、17歳から19歳の若者を対象にして調査したものです。
質問項目は6つあります。対象国は、日本、インド、インドネシア、韓国、ベトナム、中国で、アジアとイギリス、アメリカ、ドイツですね。
まず1つ目、日本、自分を大人だと思いますか。って、質問に対して、日本は29.1。
比較的似ている教育をしていると言われている韓国と比べても低いですね。
ちょっと話逸れちゃうんですけど、韓国っていう国は、実は日本と教育課題が、とても、似ていて、いじめも、不登校もそうですね。それから先生の成り手がいない、また、保護者が、子供たちが、とても叩かれていて、メンタルになってしまうような教員も多い。とても日本と似ている教育課題を持っています。ですから、 調査結果も実は日本と韓国、結構あの相関があるんですね。じゃあ話戻しますね。
自分は責任がある社会の一員だと思いますか。ひどいですよね。将来の夢もそうです。
4つ目がもっとひどいですね。自分で国や社会を変えられると思いますか。質問ですけど、まさに当事者意識ですが、全くないって言ったらまあれですけど、ひどいもんですよね。1番低い韓国と比べても、韓国の半分にもなる。
最後の2つは、自分の国に課題がありますか。例えば、皆さんだったら、多賀町に課題がありますかって聞いた時に、多賀町の課題はこれですよ。 それを高校生レベルがどうすればいいって、議論をするわけですよ、 日本の高校生たちに。自分の地域について議論をする姿、例えば友達として集まった時に、うちの地域こうしたいよねとかですね。そういった会話が見られるかってことですけど、今の日本社会にそういう姿見られるでしょうかね。
でも、これは高校3年生の姿というよりは、我々大人の姿じゃないかっていう風に僕は思うんですね。
日本の現状は、とても当事者意識がないと。
これは自己肯定感です。自分に満足しています、これも世界最低ですね。
ユニセフ報告書「レポートカード16」から2020.9
子どもの幸福度総合順位 日本 20位・精神的幸福度 37位・身体的健康 1位・スキル27位
これは、ユニセフが行った幸福度調査です、世界38カ国を対象にいろんな項目で調査しました。
38カ国中。総合順位は20位ですね。でも、目立つ2つがあります。体の発育、健康は世界第一って。望ましいですね。でも残念ながら心の幸福度は下から2番目っていう結果ですね。
いつの間にか、この30年間日本は、なんか頑張っているつもりだったんですけど、日本の教育は一番大事なものを失った。
なんでそんな状態になったのかっていうとですね、やっぱり欧米と比べて教育の仕方が全く違うんですね。
手をかければかけるほど生徒は自立できなくなり
自分が上手くいかないことを誰かのせいにするようになる
主体性も失い 自分も他人も嫌いになる 不幸な気持ちになる
横浜創英が4年前までやっていた姿と言ったらいいでしょうか。
とにかく手をかけます。サービスします。手をかけて、手をかけて、あれをしろ、これをしろ、とにかくこれをやれば大丈夫。
とにかく指示をしますね。この教育、いつから始まるかって言うと幼児教育からです。
保育園、幼稚園からこの教育が徹底的に始まります。
特に近年、強調されるようになったと思いますね。少しでもいい環境、少しでも早期から、子供に良い教育を与えたい。親はそう思いますし、学校の先生たちも同じように思います。
これがどうも欧米の本質とちょっとずれているんです。
手かけていく子供たちは、だんだん、だんだん、自分で物事考えるのが苦手になります。
親の言うこと、先生の言うことを聞くことが、なんか正しいことのように思っています。
そうしなければいけないって思う子供たちは、逆に不満だらけですね。イライラ、イライラしますね。自分で物事考えられなくなっていた子供たちの特徴があります。うまくいかないことがあると、必ず人のせいにします。
勉強がわかんないと、先生の教え方が悪いからだって言いますね。クラスがうまくいかないと、担任が外れだよなっています。これ、親の立場で行くと、お母さんがよかれと思って勉強した、宿題やったって聞くと、うるせーよって言いますね。
朝起きられなくて、遅刻しそうな子供が心配でお母さんが起こしに行く。毎日毎日起こしていく。それが当たり前になっていくわけですね。
起こしてもらっているのに、起こし方が悪いって不満を言う、うるさい、お母さんほっといてくれって。みたいなことですね。サービスっていうのは
与え続ける教育
・・・当事者意識のなさ・幸福度の低さ・主体性を失う・自己肯定感の低さ
だんだん慣れていくんですね。与えてもらうことに慣れた人間は、もっといいサービスをくれって言います。
今は情報化社会なので、いろんな自治体と比べることも、いろんな国と比べることもできます。さて、多賀町の皆さんはどうでしょうか。多賀町に行政サービスだけをひたすら求めてうまくいかないと、他の自治体に比べて叩いていたりしないでしょうか。みたいなことですね。ちょっと厳しい言葉を言えば、そういうことなんだってことです。
日本の教育っていうのは、サービスを与え続けて大事なものを失っている。それが世界との懸け離れた教育になっているってことですね。
その最大の原因はどこにあるかっていうと、いつの間にか本当の目的を見失うってことです。
目的
自立した生徒を育成する 生きる力
→ 手段 基礎学力を身につけさせる
[徳育]豊かな人間性 [知育]確かな学力 [体育]体力・健康
多賀町の教育委員会の方がもし今日いれば、多賀町の教育委員会のトップの目標が何になっているか。これ、日本全国ほとんど今のところ同じですけど、知と体なんですね。
知育徳育、体育。勉強ばかりじゃダメだよね。人間性も大事、体力、健康も大事。とても素敵ですよね。僕もそう思います。
これ、明治から続く日本の教育文化と言われているんですけど、暗黙の了解で実は上があったんですよ。知と体は上位目標ではないんですね。
(その2に続きます。4まであります)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?