登場人物になりたかった
わりと小さい頃から「物語」を書いていたわたしが、本気で「小説」というものを書こうと思ったきっかけは、今思えばこの本との出会いだったのじゃないかと思います
昭和63年…そう、まさに平成に切り替わろうとしていた時期に出版された詩集です。当時のわたしは女子高に通っていて、時代が変わるとかそんなことにはまったく頓着せず自分のことに精一杯だった頃・・・・なにに夢中になるでもなく、将来の夢もなければ目の前の進路すらはっきりとしておらずに鬱々とした日々を送っておりましたね
銀色夏生さんの本は教室内でもわりと目にしており、当時のクラスメイトの間ではあまあまな「詩」を書くことが流行っていた。そんな中、教室内でそれほど目立つこともなかったわたしに、ただ書くことが得意だということを理由に、ラブレターの代筆や切ない恋心を綴る詩を「書いてくれ」と頼んでくる友人がいた
わたしのクラスの選択教科は「書道」だったこともあり、筆で書くこともしばしば…わざわざ文房具屋さんでキレイな和紙や色紙を買って持ってくるクラスメイトもいました。一発書きですから、結構緊張しました。だってそういうものを頼んでくるクラスメイトは、決して仲良しなわけではなくわたしが委縮してしまうような相手でしたから・・・・「愛羅武勇」でもないけれど、それこそ学ランの裏地に印字されるような漢字たっぷりの詩や、好きなバンドの曲の歌詞を書いたりしたこともありました
今となってはいい思い出ですが、多分みんな捨てられちゃってるんだろうな
女子高の分類って単純で、彼氏が「いるひと」「いないひと」とか、勉強が「できるひと」「できないひと」なんて感じで、極端に女っぷりも二分されてたように思います。そんな中でわたしがこの本と出会い、この詩集の中の登場人物たちに憧れ「この中のひとりになりたい!」と思ったのは、わたしが「いるひと」「できるひと」ではなかったからだと言える。まだまだうぶだった…といえば聞こえはいいけれど、完全に出遅れてたんだよね
CDこそありましたが、まだまだカセットテープで音楽を聴いていた時代のころです。カッティングシートでステッカー作ったり、転写シールを駆使してアドレス帳をデコったりというのが当時のわたしたちの最善だった
あろうことかわたしは、この本の登場人物になりたいがために、手持ちの本に自分の名前を書き込みそれらを施した
こちらの詩集・・・・詩集といってもこの本だけは、それまでの彼女の詩集とはちょっと違った趣向で、会話文がちょいちょい出てくるちょっとお洒落でスクラップブックのような本です。写真の彼らと登場人物が合致しているわけではないのだけれど、写真からくる雰囲気をそのまま言葉にしている感じ…なのかな。うまくいえない、ごめんなさい。でも、とにかく! わたしはこの世界に憧れた
恋に恋する乙女、夢みる少女、いろんな表現があるけれど、わたしはどれにも追いついてはおらず、行動も伴わない引きこもりで、本の中に逃げることが精一杯だった
小さい字…自分に自信がない証拠だね~「いない」「できない」わたしの、あの頃のささやかな夢がこの本に込められているといっていい
こちら黒地に赤線を引いてあるのがわたしの当時の文字と言葉・・・・色鉛筆で書かれているのは銀色夏生さんの直筆でしょうね…とにかく、ここに混ざりたかったんです。この本の中の世界の住人になりたかったんですわたし
だれか迎えに来るひとがいたんでしょうかね? いや、ないな。多分そんなことを「彼」に向かって言ってみたかったんでしょうねぇ…不毛だなぁ
本に落書き…なんてどうなんでしょう? でも自分の本だからいいよね
ってことで、転写シールですよ、これ。空のカセットテープについてくる転写シールです。よくやったなぁ…でもきっと、当時はほくほくしながらやっていたんでしょうね
思ってることも言えないで
うわべだけ取り繕って
後悔するなら
言わなきゃよかった
もう遅いけど…
告白…はないか、でもなんかやらかしたんでしょうね、きっと
ちょっと恥ずかしいですね
あ~これは完ぺきに、負け組発言・・・・今もあんまり変わらないかもな
も~これは酔ってるとしか言えない。精一杯の言葉です
「ほっとけない」とか「目が離せない」なんて、だれかに言われたのかしら?・・・・いや、言われたかったんだろうなぁ。むなしいな。今となってはイタイ人。でも。こんな時もあったんです、わたしにも(笑)せめて笑ってやってください
この当時のわたしが、今のわたしを見たらなんていうんだろう?
ん~やっぱり、がっかりするのかなぁ…
ごめんね、期待通りのわたしじゃなくて。でもわたしは、それでも、それなりに今のわたしに満足してるんだ。ただ、やっぱりデブになっちゃったよ、それだけはごめん。絶対ここは許してくれないと思う
カバーをかけて保存していてもシミついちゃってるね
しばらく開いてなかったけれど、じっくり読み返してみようと思う。また違う感情が湧くかもしれないし、また書き込みたくなるかもしれないから
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