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山口周『人生の経営戦略』覚書き

山口周の『人生の経営戦略』読了。面白かった。ビジネスの手法を応用した人生戦略立案系の本というと、例えば『スタンフォード式人生デザイン講座』や、ドラッカースクールの山脇秀樹教授の『15歳からの人生戦略』が思い起こされる。後者の二つが大学での講義をもとにしていることもあり、途中でワークを挟んだりとステップを踏みながら明確なテイクアウェイを提供することを目指すのに対し、山口氏の本書は全二十章からなる読み切り型なので、色々と物思いにふけりながら読むのに適している。それから、冒頭で人生の目的をウェルビーイング、と定めている点にも共感できる。以下、覚書き。

資本主義社会においては、時間資本をまずは個人の人的資本(スキル・知識・経験)に投資すること。人的資本が社会資本(社会的な信頼やネットワークなど)を生み出し、社会資本が金融資本(経済的な利益)を生み出す。その総体がウェル・ビーイングにつながっていく、というこの構図は大切。個人の技能がダイレクトに経済的な利益を生み出すことはない。その際に、人的資本の価値はその社会における希少性と関連するので、流行りの資格を追っていくのは得策ではない。まずはここまで。

では、逆張りを前提に将来価値が出そうな技能を習得しようとしても、そうはうまくはいかない。少なくとも私の場合は、すぐに飽きてしまう。そのなかで、個人の希少性を高めるには、ささやかかもしれないがユニークな特色を掛け算していくのが得策。独自の強みを見つけるには、自分が長く続けてきたものを思い起こしてみるといい。

また、臆病者の方が成功する、という指摘も秀逸。オプション・バリューを確保しリスクヘッジをはかること。「成功=失敗を恐れず突き進むこと」という思い込みが幅を利かせているが、実際にはいつでも戻れる居場所、あるいは失敗してもすぐに退避できる安定した状況をキープしたままチャレンジをした方が成功する。退路を経って挑戦したものの多くが、退路がないままに潰されていく。

さて、それでは自分の場合はどうなのか、ということになっていく。オプション・バリューを確保する、というアドバイスに従うのであれば、例えばすぐに会社を辞めるなど、いまの状況を拙速に変えよう、という試みは得策とは言えない。ただでさえ子供が生まれて変革とチャレンジの日々なので、ここで無理してみずから動く必要はない。一方で、自分自身に対する人的投資の枯渇はひしひしと感じている。ここに対しては何らかの手を打った方が良い。仕事もルーティーン化してしまった。知的な刺激がない。

これまでの半生を振り返ると、二十歳くらいの頃から二十年以上にわたってインターネットに文章を書き続けてきた。二十代を通してずっと英語とフランス語を学び続けてきた。いまでも仕事で英語は使っている。フランス語もフランスのラジオを聞いたりと、触れ続けている。人文系の学問について、そもそも文学の研究者を目指して大学を変え、パリにまで行ったくらいなのでライフワーク。学生の頃は文学がメインだったが、いまでは哲学の方に惹かれる。人文学の古典を読み、覚書きを書くと言うことはいまでもやっている。学生時代はHTMLを駆使して自分のサイトを作っていた。いまもPythonを、まったく上達しないがかじっている。中学校時代の柔道部にはじまった運動については、いまも定期的にジムに通う程度だが続けている。

ひとりで考え、行動するのが好きというのが根本にあるのだろう。そのうえで、小さくて親密な共同体を大切にするというのがくる。また、世界を広げるという意味で自分から遠い人と会って話す、というのも嫌いではない。それは例えばビジネス、特にB to Bにおける新たな出会いなど。いちばん苦手なのが、中途半端に人間関係が構築された中距離の相手とやり取りをすること。面倒くさくてしょうがない。感情を殺して処理をしていくしかない。

ここからの自己投資について。Pythonの流れの中で学んでみたいと思った統計学については、一通りマスターしてしまおう。『統計学が最強の学問である』を読んだが、これがめっぽう面白かった。この本を読んだだけで、仕事に対するアプローチが少しだが変わった。統計学的な思考パターンはインストールしといた方が良い。

あとは、noteでの発信に工夫をこらすことだろうか。いまさら英語を英語として、あるいはフランス語をフランス語として学ぶことにはあまり惹かれない。それよりも、英語やフランス語でインプットし、それを日本語でアウトプットしていく、という方が面白いような気もする。この辺りに関しては色々と実験をしてみることにする。

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